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保全異議ほぜんいぎ

民事保全法 第2章 保全命令に対する不服申立て 過去問で7肢

保全異議とは、保全命令に不服のある債務者が、その命令を発した裁判所に対し、保全命令の取消し又は変更を求めて申し立てる不服申立てで(26条)、裁判所は口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経て、保全命令を認可し、変更し、又は取り消す決定をします(29条・32条1項)。

保全異議は、保全命令を受けた債務者が「その命令は出すべきでなかった」と争うための手続です。保全命令は債務者の言い分を聞かないまま発せられることが多いので、同じ裁判所でもう一度、今度は債務者も立ち会える形で審理し直します。上級の裁判所に持ち込む抗告ではなく、同じ審級での再審理です。

発令した裁判所の受付で、債務者が保全異議申立書を差し出す場面
保全異議は保全命令を発した裁判所に申し立て、本案の訴えが提起された後でも申し立てられます
発令した裁判所へ本案の提起後でも可申立期間の定めなし
民事保全法 第26条第1項

保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。

保全異議は、保全命令を発した裁判所に申し立て、保全抗告とは申立先も対象も違います

26条は、保全命令に対しては、債務者はその命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができるとしています。H27 午後 問6 ア はこのとおりの記述で、正しいとされました。保全抗告は、保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判に対する上級審への不服申立てで(41条1項)、保全命令そのものを対象にしません。「保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる」という肢(R2 午後 問6 ア)は誤りです。保全異議の申立ては書面でし(民事保全規則1条3号)、申立書には保全命令の取消し又は変更を求める事由を具体的に記載し、立証を要する事由ごとに証拠を記載します(民事保全規則24条3項)。

保全異議には申立期間の定めがなく、本案の訴えが提起された後でも申し立てられます

26条は保全異議の申立ての期間を定めていないので、保全命令が効力を持っている間は申し立てることができます。本案の訴えが提起されても、保全命令の当否を争う手続が別にあることに変わりはありません。「仮差押命令に対する保全異議の申立ては,本案の訴えが提起された後であってもすることができる」という肢(R3 午後 問6 オ)は正しい記述です。裁判所は、著しい遅滞を避け又は当事者間の衡平を図るため必要があるときは、申立てにより又は職権で、保全異議事件を保全命令事件の管轄権を有する他の裁判所に移送することができます(28条)。

保全異議の審理では、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければなりません

29条は、裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができないとしています。「裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない」という肢(R7 午後 問6 オ)は正しい記述です。期日を経ることを要しないとした肢(H27 午後 問6 ウ)は誤りでした。23条4項の期日が「債務者が立ち会うことができる」期日で、例外のただし書があるのに対し、29条は「当事者双方」の期日で、例外がありません。審理を終結するには、相当の猶予期間を置いて審理を終結する日を決定します。ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日では、直ちに審理を終結する旨を宣言できます(31条)。

裁判官役の先生をはさみ、債権者と債務者が向かい合って座る審尋室
保全異議の決定は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければできません
当事者双方の期日例外なし23条4項と区別
民事保全法 第29条第1項

裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。

決定では保全命令を認可し、変更し、又は取り消し、取消しの効力の発生を2週間を超えない範囲で遅らせることもできます

裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、保全命令を認可し、変更し、又は取り消さなければなりません(32条1項)。追加の担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とすることもでき(32条2項)、保全命令を取り消す決定について債務者が担保を立てることを条件とすることもできます(32条3項)。保全命令を取り消す決定では、送達を受けた日から2週間を超えない範囲内で相当と認める一定の期間を経過しなければ効力が生じない旨を宣言できます(34条本文)。債権者が保全抗告をするまでの間に執行が外れて目的物が処分されるのを防ぐためです。仮処分命令を取り消す決定では、債権者が仮処分命令に基づいて受けた物の返還などを命ずる原状回復の裁判もできます(33条)。保全異議の申立てについての裁判は、判事補が単独ですることができません(36条)。

保全異議の申立ての取下げには、債権者の同意が要りません

35条は、保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しないとしています。「保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない」という肢(R8 午後 問6 エ)は正しい記述です。債権者の同意が要るとした肢(H27 午後 問6 イ)は誤りでした。取り下げても保全命令が残るだけで、債権者は不利益を受けないからです。反対に、債権者が保全命令の申立てを取り下げるときも債務者の同意は要りません(18条)。

試験ではこう問われる

  1. 保全異議は、保全命令を発した裁判所に申し立てる(26条)
  2. 保全命令に対して債務者がするのは保全異議で、保全抗告ではない(26条・41条1項。R2 午後 問6 ア ×)
  3. 保全異議は本案の訴えが提起された後でも申し立てられる(26条。R3 午後 問6 オ ○)
  4. 保全異議の決定には、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日が要る(29条。R7 午後 問6 オ ○)
  5. 保全異議の申立ての取下げに債権者の同意は要らない(35条。R8 午後 問6 エ ○)
  6. 保全命令を取り消す決定は、送達から2週間を超えない範囲で効力の発生を遅らせることができる(34条)

この用語が問われた肢

R2 問6 ア誤り

保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる。

R3 問6 オ正しい

仮差押命令に対する保全異議の申立ては,本案の訴えが提起された後であってもすることができる。

R7 問6 オ正しい

裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。

R8 問6 エ正しい

保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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