仮差押命令かりさしおさえめいれい
仮差押命令とは、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに、債務者の特定の財産を仮に差し押さえる保全命令です(20条1項・21条)。
仮差押命令は、お金を払ってもらう権利(金銭債権)を守るための保全命令です。判決を得る前に債務者が財産を売ったり隠したりすると、勝っても強制執行ができなくなるので、債務者の財産を仮に差し押さえて処分を止めます。

民事保全法 第20条第1項仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
仮差押命令は、金銭債権の強制執行ができなくなるおそれか、著しい困難を生ずるおそれがあるときに発します
20条1項は、仮差押命令の被保全権利を金銭の支払を目的とする債権に限り、保全の必要性を強制執行をすることができなくなるおそれ又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれとしています。「仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる」という肢(R5 午後 問6 ア)は正しい記述です。登記や物の引渡しを求める権利は金銭債権ではないので、仮差押えではなく係争物に関する仮処分で守ります。
被保全債権が条件付・期限付でも、仮差押命令を発することができます
20条2項は、被保全債権が条件付又は期限付である場合にも仮差押命令を発することができるとしています。「仮差押命令は,被保全権利である金銭の支払を目的とする債権が条件付又は期限付である場合においても,これを発することができる」という肢(R2 午後 問6 エ)は正しい記述です。弁済前の保証人の求償権のような将来の債権も、この規定により被保全権利にできます(H25 午後 問6 ア)。仮処分命令にも20条2項が準用されます(23条3項)。
仮差押命令は特定の物について発しますが、動産は目的物を特定しないで発することができます
21条は、仮差押命令は特定の物について発しなければならないとし、ただし書で動産の仮差押命令は目的物を特定しないで発することができるとしています。「債権の仮差押命令は、特定の債権について発しなければならない」という肢(R7 午後 問6 イ)は正しい記述です。動産に対する仮差押えの執行は執行官が目的物を占有する方法で行うので(49条1項)、申立ての趣旨には動産である旨を記載すれば足ります(民事保全規則19条1項ただし書)。動産も特定しなければならないとした肢(H25 午後 問6 イ)は誤りでした。
民事保全法 第21条第1項仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる。
仮差押命令は、仮の地位を定める仮処分と違い、債務者の審尋を経ないで発することができます
債務者が立ち会うことができる審尋の期日を原則として経なければならないのは、仮の地位を定める仮処分命令だけです(23条4項)。仮差押命令は、債務者に知られる前に財産を押さえる必要があるので、口頭弁論も審尋も経ないで発することができます(3条)。「仮差押命令は、債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、発することができない」という肢(R8 午後 問6 ア)は誤りです。裁判所の手続案内も、金銭債権又は不動産の仮差押え事件は審尋の必要がない事件として扱っています。

債権の仮差押命令の申立書には第三債務者を記載し、債権を特定するに足りる事項を明らかにします
債権に対する仮差押命令の申立書には、第三債務者の氏名又は名称及び住所などを記載しなければなりません(民事保全規則18条1項)。仮に差し押さえるべき債権の記載は、債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項を明らかにしてします(民事保全規則19条2項1号)。仮に差し押さえるべき債権は第三債務者の普通裁判籍の所在地にあるものとされるので(12条4項)、第三債務者の住所地を管轄する地方裁判所にも申し立てられます。
試験ではこう問われる
- 仮差押命令は、金銭債権の強制執行ができなくなるおそれ又は著しい困難を生ずるおそれがあるときに発する(20条1項。R5 午後 問6 ア ○)
- 被保全債権が条件付・期限付でも仮差押命令を発することができる(20条2項。R2 午後 問6 エ ○)
- 債権の仮差押命令は特定の債権について発しなければならない(21条本文。R7 午後 問6 イ ○)
- 動産の仮差押命令は目的物を特定しないで発することができる(21条ただし書)
- 仮差押命令は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なくても発することができる(3条・23条4項。R8 午後 問6 ア ×)
この用語が問われた肢
仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
仮差押命令は,被保全権利である金銭の支払を目的とする債権が条件付又は期限付である場合においても,これを発することができる。
債権の仮差押命令は、特定の債権について発しなければならない。
仮差押命令は、債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、発することができない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

