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保全執行の要件と執行期間ほぜんしっこうのようけんとしっこうきかん

民事保全法 第3章 保全執行と仮差押え・仮処分の効力 過去問で1肢

保全執行とは、保全命令の内容を実現する手続で、申立てにより裁判所又は執行官が行い(2条2項)、保全命令の正本に基づいて実施します(43条1項)。債権者に保全命令が送達された日から2週間を経過すると保全執行をしてはならず(同条2項)、保全命令が債務者に送達される前でも保全執行をすることができます(同条3項)。

保全執行は、出された保全命令を実際に効かせる手続です。保全命令は債務者に財産を隠される前に押さえるためのものなので、強制執行と違い、執行文を原則として要せず、債務者に命令が届く前でも執行できます。その代わり、債権者が長く放置した保全命令は使えないように、執行できる期間が短く区切られています。

債権者への送達から2週間の帯が伸び、その先が通行止めになった時間軸の黒板
債権者に保全命令が送達された日から2週間を経過すると、保全執行をしてはなりません
債権者への送達から2週間申立てによる
民事保全法 第43条

(保全執行の要件)
保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。
保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から二週間を経過したときは、これをしてはならない。
保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。

保全執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行います

2条2項は、保全執行は申立てにより裁判所又は執行官が行うとしています。職権で始まることはないので、保全執行は申立てにより又は職権で裁判所又は執行官が行うとした肢(H30 午後 問6 エ)は誤りでした。保全執行の申立ては書面でします(民事保全規則1条6号)。ただし、登記をする方法や第三債務者に保全命令を送達する方法による保全執行では、強制執行の申立書に関する民事執行規則21条は準用されず(民事保全規則31条ただし書)、保全命令を発した裁判所が保全執行裁判所として執行します(47条2項・50条2項)。執行官が行う保全執行では、その執行官の所属する地方裁判所が保全執行裁判所です(2条3項)。

保全命令の正本に基づいて実施し、当事者以外の者に対するときだけ執行文が要ります

保全執行は保全命令の正本に基づいて実施します(43条1項本文)。強制執行では債務名義に執行文を付すのが原則ですが(民事執行法25条)、保全執行では、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする場合に限って、執行文の付された保全命令の正本が必要です(43条1項ただし書)。たとえば、保全命令の発令後に債権者が死亡し、相続人が保全執行をするときに執行文が要ります。

債権者に保全命令が送達された日から2週間を経過すると、保全執行をしてはなりません

43条2項は、保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から2週間を経過したときはしてはならないとしています。起算点は債権者への送達で、債務者への送達ではありません。H25 午後 問6 オ はこのとおりの記述で、正しいとされました。発令から時間がたつと、保全命令を発した時の事情が変わっているおそれがあるからです。保全命令は債権者にも送達しなければならないのは(17条)、この期間の起算点を明らかにする意味もあります。

保全命令が債務者に送達される前でも、保全執行をすることができます

43条3項は、保全執行は保全命令が債務者に送達される前であってもすることができるとしています。強制執行は債務名義を債務者に送達した後でなければ開始できませんが(民事執行法29条)、保全執行で先に送達すると、債務者に財産を処分する時間を与えてしまいます。「仮差押えの執行は、仮差押命令が債務者に送達される前であっても、することができる」という肢(R4 午後 問6 エ)は正しい記述です。保全執行一般について同じ趣旨を述べた肢(H30 午後 問6 オ)も、正しいとされました。

銀行の窓口に仮差押命令の封筒が届き、離れた家の債務者の郵便受けはまだ空
保全命令が債務者に送達される前でも、保全執行をすることができます
債務者への送達前でも可財産隠しを防ぐ強制執行と違う
民事保全法 第43条第3項

保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。

保全執行に対しても、執行抗告・執行異議・第三者異議の訴えで争うことができます

46条は、民事執行法5条から14条までや38条などを保全執行に準用しています。保全執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り執行抗告ができ(民事執行法10条1項)、執行抗告ができない執行処分や執行官の執行処分に対しては執行異議を申し立てられます(民事執行法11条1項)。目的物について所有権などを有する第三者は、第三者異議の訴えを提起できます(民事執行法38条1項)。保全命令そのものの当否は、保全異議や保全取消しで争います。

試験ではこう問われる

  1. 保全執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う(2条2項。H30 午後 問6 エ ×・出題当時)
  2. 保全執行は保全命令の正本に基づいて実施し、当事者以外の者に対する執行には執行文が要る(43条1項)
  3. 債権者に保全命令が送達された日から2週間を経過すると、保全執行をしてはならない(43条2項。H25 午後 問6 オ ○・出題当時)
  4. 仮差押えの執行は、仮差押命令が債務者に送達される前でもすることができる(43条3項。R4 午後 問6 エ ○)
  5. 保全執行には、民事執行法の総則的な規定の多くが準用される(46条)

この用語が問われた肢

R4 問6 エ正しい

仮差押えの執行は、仮差押命令が債務者に送達される前であっても、することができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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