保全抗告ほぜんこうこく
保全抗告とは、保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判に対し、その送達を受けた日から2週間の不変期間内に上級の裁判所にする不服申立てで(41条1項本文)、保全抗告についての裁判に対しては更に抗告をすることができません(同条3項)。
保全抗告は、保全異議や保全取消しで出た結論に不服のある当事者が、上級の裁判所に判断を求める手続です。保全命令を認可された債務者も、保全命令を取り消された債権者も申し立てられます。

民事保全法 第41条第1項保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(第三十三条(前条第一項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から二週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない。
保全抗告の対象は保全異議・保全取消しの裁判で、保全命令そのものではありません
41条1項は、保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(原状回復の裁判を含む。)に対して保全抗告をすることができるとしています。保全命令に不服のある債務者は、まず保全異議か保全取消しを申し立てなければならず、保全命令に直接保全抗告をすることはできません。「保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる」という肢(R2 午後 問6 ア)は誤りです。即時抗告も同じで、「保全命令に対しては、その命令につき不服のある債務者は、即時抗告をすることができる」という肢(R6 午後 問6 イ)は誤りです。抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判には、保全抗告ができません(41条1項ただし書)。
期間は送達を受けた日から2週間で、原裁判所は理由の有無を判断せずに事件を送ります
保全抗告の期間は、裁判の送達を受けた日から2週間の不変期間です(41条1項)。保全命令の申立てを却下する裁判に対する即時抗告が「告知を受けた日から」2週間であるのと起算点が違います(19条1項)。原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければなりません(41条2項)。民事訴訟法の抗告では原裁判所が自ら裁判を更正する再度の考案ができますが(民事訴訟法333条)、保全異議で双方の言い分を聞いて判断した後なので、保全抗告ではこれを認めていません。

民事保全法 第41条第2項原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。
保全抗告についての裁判に更に抗告はできず、審理には当事者双方が立ち会える期日が要ります
保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができません(41条3項)。保全抗告に関する裁判には29条が準用され、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければなりません(41条4項)。保全執行の停止の裁判(27条1項)と原状回復の裁判(33条)も準用されます(41条4項)。保全命令を取り消す決定に対して保全抗告があった場合には、抗告裁判所は、要件を満たせば取消決定の効力の停止を命ずることができます(42条1項)。
保全抗告の手続には保全異議の規定が多く準用され、確定した裁判には再審の規定も準用されます
保全抗告についての決定には理由を付し、当事者に送達します(41条4項・16条本文・17条)。担保を条件とする決定の規定(32条2項・3項)も準用されます。保全抗告をすることができる裁判が確定した場合には、即時抗告で争える決定についての再審を定めた民事訴訟法349条が準用されます(民事保全法41条4項)。保全抗告の手続の細目には、保全異議の手続についての民事保全規則の規定が準用されます(民事保全規則30条)。保全命令を取り消す決定に対して保全抗告ができないときは、34条の効力発生を遅らせる宣言はできません(34条ただし書)。
試験ではこう問われる
- 保全抗告の対象は保全異議・保全取消しの申立てについての裁判で、保全命令そのものではない(41条1項。R2 午後 問6 ア ×)
- 保全命令に対して債務者は即時抗告をすることができない(26条・41条1項。R6 午後 問6 イ ×)
- 保全抗告は送達を受けた日から2週間の不変期間内にする(41条1項)
- 原裁判所は保全抗告の理由の有無を判断せずに事件を抗告裁判所に送付する(41条2項)
- 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない(41条3項)
- 抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の裁判には、保全抗告ができない(41条1項ただし書)
この用語が問われた肢
保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる。
保全命令に対しては、その命令につき不服のある債務者は、即時抗告をすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

