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保全命令事件の管轄ほぜんめいれいじけんのかんかつ

民事保全法 第1章 保全命令の申立てと審理 過去問で2肢

保全命令事件の管轄とは、保全命令の申立てをどの裁判所にするかの定めで、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し(12条1項)、この管轄は専属です(6条)。

保全命令事件の管轄は、12条が定めています。保全命令は本案の権利を守るための手続なので、本案を審理する裁判所に申し立てることができます。また、急いで目的物を押さえる必要があるので、目的物のある場所の地方裁判所にも申し立てることができます。

保全命令の申立てから本案の管轄裁判所と所在地の地方裁判所へ二本の矢印が伸びる黒板
保全命令事件は、本案の管轄裁判所と、目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄します
本案の管轄裁判所所在地の地方裁判所管轄は専属
民事保全法 第12条第1項

保全命令事件は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

保全命令事件は、本案の管轄裁判所と、目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄します

12条1項は、保全命令事件を、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所の管轄としています。「貸金債権を被保全債権とする仮差押命令は,本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する」という肢(H30 午後 問6 ア)は正しい記述でした。本案の管轄裁判所は第一審裁判所で、本案が控訴審に係属するときは控訴裁判所です(12条3項)。目的物が債権であるときは、その債権の債務者(第三債務者)の普通裁判籍の所在地にあるものとされます(12条4項本文)。

本案が簡易裁判所の管轄に属するときは、簡易裁判所も保全命令事件を管轄します

本案の管轄裁判所には簡易裁判所も含まれます。訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求は簡易裁判所が第一審の裁判権を持つので(裁判所法33条1項1号)、100万円の貸金返還請求権を本案とする仮差押命令は、本案の管轄裁判所である簡易裁判所に申し立てることができます。「100 万円の貸金返還請求権を被保全権利とする債権の仮差押命令の申立てについては,簡易裁判所に申し立てることができる」という肢(R3 午後 問6 イ)は正しい記述です。これに対し、目的物の所在地を基準とする管轄は地方裁判所に限られ、所在地の簡易裁判所は12条1項の管轄を持ちません。

簡易裁判所の受付で、100万円の貸金の仮差押命令申立書を出す債権者
本案が簡易裁判所の管轄に属するときは、本案の管轄裁判所である簡易裁判所にも保全命令を申し立てられます
本案の簡裁も管轄140万円以下は簡裁所在地基準は地裁だけ
民事保全法 第12条第3項

本案の管轄裁判所は、第一審裁判所とする。ただし、本案が控訴審に係属するときは、控訴裁判所とする。

保全命令事件の管轄は専属なので、合意や応訴で他の裁判所に移すことはできません

民事保全法に規定する裁判所の管轄は専属です(6条)。専属管轄の定めがあるときは、民事訴訟法の合意管轄と応訴管轄の規定は適用されません(民事訴訟法13条1項)。当事者が合意しても、12条の裁判所以外の裁判所に保全命令を申し立てることはできません。日本の裁判所に申し立てることができるのは、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限られます(11条)。

民事保全法 第6条第1項

この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。

特許権等に関する訴えが本案のときと、目的物がその他の財産権のときには、管轄の特則があります

本案の訴えが民事訴訟法6条1項に規定する特許権等に関する訴えである場合には、保全命令事件は本案の管轄裁判所が管轄します(民事保全法12条2項本文)。仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が民事訴訟法6条1項各号に定める裁判所であるときは、その裁判所も管轄します(民事保全法12条2項ただし書)。目的物が民事執行法167条1項のその他の財産権で第三債務者又はこれに準ずる者があるときは、債権と同じく第三債務者などの普通裁判籍の所在地にあるものとされます(民事保全法12条5項)。権利の移転に登記又は登録を要する財産権は、その登記又は登録の地にあるものとされます(12条6項)。

保全異議の段階では、管轄権を有する他の裁判所に事件を移送することもできます

保全命令を発した裁判所に申し立てられた保全異議事件について、裁判所は、当事者、尋問を受けるべき証人及び審尋を受けるべき参考人の住所その他の事情を考慮して、著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るために必要があるときは、申立てにより又は職権で、その保全命令事件につき管轄権を有する他の裁判所に移送することができます(28条)。移送先は12条で管轄権を有する裁判所に限られ、専属管轄の枠の中で調整する仕組みです。

試験ではこう問われる

  1. 保全命令事件は、本案の管轄裁判所又は目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する(12条1項。H30 午後 問6 ア ○・出題当時)
  2. 本案が140万円以下の請求なら、本案の管轄裁判所である簡易裁判所に仮差押命令を申し立てられる(12条1項、裁判所法33条1項1号。R3 午後 問6 イ ○)
  3. 本案の管轄裁判所は第一審裁判所で、本案が控訴審に係属するときは控訴裁判所である(12条3項)
  4. 仮に差し押さえるべき債権は、第三債務者の普通裁判籍の所在地にあるものとされる(12条4項)
  5. 民事保全法に規定する管轄は専属で、保全命令事件について合意や応訴による管轄は生じない(6条、民事訴訟法13条1項)

この用語が問われた肢

R3 問6 イ正しい

100 万円の貸金返還請求権を被保全権利とする債権の仮差押命令の申立てについては,簡易裁判所に申し立てることができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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