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保全命令の申立てと疎明ほぜんめいれいのもうしたてとそめい

民事保全法 第1章 保全命令の申立てと審理 過去問で8肢

保全命令の申立ては、その趣旨と、保全すべき権利又は権利関係(被保全権利)及び保全の必要性を明らかにしてしなければならず、被保全権利と保全の必要性は疎明しなければなりません(13条)。

保全命令の申立ては、申立ての趣旨と、守りたい権利(被保全権利)と、今すぐ守る必要があること(保全の必要性)を明らかにしてします。民事保全は判決を待てないときの仮の救済なので、この二つは、裁判官に一応確からしいと思わせる疎明で足ります。

裁判官役の先生の前の天秤に、守りたい権利と保全の必要性の二つの札が載る場面
被保全権利と保全の必要性は、どちらも疎明で足り、証明は要りません
権利も必要性も疎明証明は不要管轄は疎明で足りない
民事保全法 第13条

(申立て及び疎明)
保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。

被保全権利と保全の必要性は、どちらも疎明で足ります

13条2項は、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を「疎明しなければならない」と定めています。証明までは求められないので、「保全命令の申立ては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を証明して、これをしなければならない」という肢(R7 午後 問6 ア)は誤りです。被保全権利は証明、保全の必要性は疎明というように二つを分ける肢(H29 午後 問6 エ)も誤りでした。仮の地位を定める仮処分でも同じで、保全すべき権利関係と保全の必要性を疎明します(H26 午後 問6 イ)。疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければなりません(民事訴訟法188条を7条で準用)。

疎明で足りるのは被保全権利と保全の必要性だけで、管轄や当事者能力まで疎明で足りるのではありません

13条2項が疎明で足りるとしているのは、保全すべき権利又は権利関係と保全の必要性の二つです。管轄や当事者能力のような手続の要件について疎明で足りるとする規定はありません。「保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性のほか、管轄や当事者能力についても疎明することで足りる」という肢(R4 午後 問6 ア)は誤りです。

疎明がないときに、担保を立てさせて疎明に代えることはできません

民事保全法には、疎明に代えて担保を立てさせる規定がありません。14条の担保は、疎明があって保全命令を発するときに、債務者が受けるかもしれない損害に備えさせるものです。そのため、被保全権利又は保全の必要性の疎明がない場合でも担保を立てさせて保全命令を発することができるとした肢(H30 午後 問6 ウ)は誤りでした。

疎明なしの空のトレーの前で、債権者が現金の袋だけを差し出し、袋に×印
疎明がないときに、担保を立てさせて疎明に代えることはできません
担保で代えられない担保は損害への備え

申立書には、被保全権利と保全の必要性を具体的に書き、立証を要する事由ごとに証拠を記載します

保全命令の申立ての理由では、被保全権利と保全の必要性を具体的に記載し、立証を要する事由ごとに証拠を記載しなければなりません(民事保全規則13条2項)。民事保全規則1条1号により、保全命令の申立ては書面でしなければなりません。

疎明には、書証のほか、参考人や当事者本人の審尋を使います

保全命令の手続は決定で完結するので、裁判所は参考人又は当事者本人を審尋することができます(民事訴訟法187条1項を7条で準用)。参考人は当事者が申し出た者に限られ、相手方がある事件で審尋をするときは、当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日でしなければなりません(民事訴訟法187条1項ただし書・2項)。実際には、債権者が申立書に添える書証と陳述書が疎明の中心になり、裁判所の手続案内も、立証を要する事由ごとに対応する証拠を申立てに添えるよう求めています。

保全取消しの理由も疎明で足り、疎明の対象は手続ごとに条文で決まっています

疎明で足りるとする規定は13条2項だけではありません。事情の変更による保全取消しの事情の変更(38条2項)、特別の事情による保全取消しの特別の事情(39条2項)、保全執行の停止の裁判の要件(27条1項)も疎明で足ります。いずれも条文が「疎明」と定める事項に限られ、管轄のような手続の要件にまで広がるわけではない点は、13条2項と同じです。

試験ではこう問われる

  1. 被保全権利と保全の必要性は疎明すれば足り、証明は要らない(13条2項。R7 午後 問6 ア ×)
  2. 疎明で足りるのは被保全権利と保全の必要性で、管轄や当事者能力まで疎明で足りるのではない(13条2項。R4 午後 問6 ア ×)
  3. 疎明がないときに担保を立てさせて保全命令を発することはできない(13条2項・14条1項。H30 午後 問6 ウ ×・出題当時)
  4. 疎明は即時に取り調べることができる証拠によってする(民事訴訟法188条)

この用語が問われた肢

R7 問6 ア誤り

保全命令の申立ては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を証明して、これをしなければならない。

R4 問6 ア誤り

保全命令の申立てにおいては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性のほか、管轄や当事者能力についても疎明することで足りる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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