保全命令の不服申立ての体系ほぜんめいれいのふふくもうしたてのたいけい
保全命令の手続の不服申立ては、申立てを却下された債権者の即時抗告(19条)、保全命令を受けた債務者の保全異議(26条)と保全取消し(37条〜39条)、保全異議・保全取消しの裁判に対する保全抗告(41条)の四つで組み立てられています。
保全命令の不服申立ての体系は、誰が何に不服なのかで分かれます。申立てを退けられた債権者は上級の裁判所に即時抗告をし、保全命令を受けた債務者はまず同じ裁判所で保全異議か保全取消しを申し立て、その結論にさらに不服がある当事者が保全抗告をします。

- 即時抗告(19条)保全命令の申立てを却下する裁判に対し、債権者が、告知を受けた日から2週間の不変期間内にする
- 保全異議(26条)保全命令に対し、債務者が、保全命令を発した裁判所にする。期間の定めはない
- 保全取消し(37条〜39条)保全命令の発令後の事情を理由に、債務者が申し立てる。起訴命令による取消しは発した裁判所、事情の変更と特別の事情による取消しは発した裁判所又は本案の裁判所
- 保全抗告(41条)保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判に対し、債権者・債務者が、送達を受けた日から2週間の不変期間内にする
保全命令そのものに対して、債務者は即時抗告も保全抗告もできず、保全異議か保全取消しによります
保全命令に対する債務者の不服申立ては、同じ裁判所での保全異議(26条)と保全取消し(37条〜39条)です。保全命令は債務者の言い分を聞かずに発せられることが多いので、上級審に持ち込む前に、債務者が立ち会える形で同じ裁判所に審理させます。「保全命令に対しては、その命令につき不服のある債務者は、即時抗告をすることができる」という肢(R6 午後 問6 イ)は誤りです。「保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる」という肢(R2 午後 問6 ア)も誤りです。即時抗告は債権者が却下の裁判に対してするもので(19条1項)、保全抗告は保全異議・保全取消しの裁判に対してするものです(41条1項)。
保全異議は発令の当否を、保全取消しは発令後の事情などを理由に保全命令の取消しを求めます
保全異議の申立てがあると、裁判所は保全命令の申立てについて改めて審理し、保全命令を認可し、変更し、又は取り消します(32条1項)。保全取消しは、保全命令の存在を前提に、債権者が本案の訴えを起こさないこと(37条)、被保全権利や保全の必要性の消滅などの事情の変更(38条)、仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれなどの特別の事情(39条)を理由に取消しを求めます。保全異議の審理の規定(27条〜29条・31条・33条〜36条)は保全取消しにも準用されますが、起訴命令の裁判には一部が準用されません(40条1項)。
即時抗告と保全抗告は期間の起算点が違い、どちらも更に抗告することはできません
即時抗告の期間は「告知を受けた日から」2週間(19条1項)、保全抗告の期間は「送達を受けた日から」2週間(41条1項)です。民事訴訟法の即時抗告の期間が告知を受けた日から1週間である(民事訴訟法332条)のと比べて、どちらも長くなっています。即時抗告を却下する裁判にも、保全抗告についての裁判にも、更に抗告をすることはできません(19条2項・41条3項)。

保全命令を取り消す決定の効力は遅らせることができ、保全抗告の間は効力を止めることもできます
保全異議や保全取消しで保全命令が取り消されると、保全執行が外れ、債権者が保全抗告をしても間に合わないことがあります。そこで、保全命令を取り消す決定では、送達を受けた日から2週間を超えない範囲内で効力が生じない旨を宣言できます(34条本文・40条1項)。保全抗告ができないときは、この宣言はできません(34条ただし書)。保全抗告があったときは、抗告裁判所は、要件を満たせば取消決定の効力の停止を命ずることができます(42条1項)。即時抗告、保全異議、保全取消し、保全抗告の申立ては、いずれも書面でしなければなりません(民事保全規則1条2号〜5号)。
試験ではこう問われる
- 保全命令に対し、債務者は即時抗告をすることができない(26条・19条1項。R6 午後 問6 イ ×)
- 保全命令に対し、債務者は保全抗告をすることができない(26条・41条1項。R2 午後 問6 ア ×)
- 保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者が告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をする(19条1項)
- 保全抗告は、保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判の送達を受けた日から2週間以内にする(41条1項)
- 事情の変更・特別の事情による保全取消しは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所に申し立てる(38条1項・39条1項)
この用語が問われた肢
保全命令に対しては、その命令につき不服のある債務者は、即時抗告をすることができる。
保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

