保全命令の審理と決定ほぜんめいれいのしんりとけってい
保全命令の申立ての審理は口頭弁論を経ないですることができ(3条)、裁判はすべて決定でされます。決定には理由を付さなければなりませんが、口頭弁論を経ないで決定をするときは理由の要旨を示せば足り(16条)、保全命令は当事者の双方に送達しなければなりません(17条)。
保全命令の審理と決定は、早く判断することを優先して組み立てられています。裁判所は書面と疎明資料だけで判断することもでき、債権者だけに会って事情を聞く面接で発令することもあります。どの場合も裁判は決定の形式でされます。

民事保全法 第3条第1項民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経た場合でも決定でされます
3条は、民事保全の手続に関する裁判は口頭弁論を経ないですることができるとしています。民事保全法は、保全命令の申立てについての裁判を「決定」として定めており(16条)、口頭弁論を経たかどうかで判決に変わることはありません。「仮の地位を定める仮処分命令の申立てについて口頭弁論を経た場合には,その申立てについての裁判は,判決をもってしなければならない」という肢(R3 午後 問6 ア)は誤りです。
決定には理由を付しますが、口頭弁論を経ないで決定するときは理由の要旨で足ります
16条本文は、保全命令の申立てについての決定には理由を付さなければならないとし、ただし書は、口頭弁論を経ないで決定をする場合には理由の要旨を示せば足りるとしています。「保全命令の申立てについて、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる」という肢(R5 午後 問6 エ)は正しい記述です。逆に、口頭弁論を経て決定をするときは理由を付さなければなりません(H25 午後 問6 ウ)。決定は原則として決定書を作成してし、理由では主要な争点とこれに対する判断を示します(民事保全規則9条1項・3項)。
民事保全法 第16条第1項保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
保全命令は、債務者だけでなく債権者にも送達しなければなりません
17条は、保全命令は当事者に送達しなければならないとしています。当事者には債権者も含まれるので、「保全命令は、債権者にも送達しなければならない」という肢(R5 午後 問6 オ)は正しい記述です。債権者への送達は、保全執行の期間(43条2項の2週間)の起算点にもなります。これに対し、保全命令の申立てを却下する決定は、口頭弁論又は審尋の期日の呼出しがされた場合を除き、債務者に告知することを要しません(民事保全規則16条1項)。

急迫の事情があるときに限り、裁判長が単独で保全命令を発することができます
15条は、保全命令は急迫の事情があるときに限り裁判長が発することができるとしています。合議体で審理している事件でも、合議を待てないほど急ぐときは裁判長が保全命令を発せます。保全異議の申立てについての裁判は、判事補が単独ですることができません(36条)。
決定は決定書でするのが原則ですが、期日で言い渡して調書に記載させる方法もあります
保全命令の申立てについての決定は、決定書を作成してします(民事保全規則9条1項)。決定書には、担保額及び担保提供方法、主文、理由又は理由の要旨などを記載します(民事保全規則9条2項)。口頭弁論又は債務者の審尋を経た場合には、理由の中で申立書その他の主張書面を引用することができます(民事保全規則9条4項)。口頭弁論又は審尋の期日において主文などを言い渡し、これを調書に記載させて決定をすることもできます(民事保全規則10条1項)。期日の呼出しは、相当と認める方法によることができます(民事保全規則3条1項)。
試験ではこう問われる
- 保全命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ても判決ではなく決定でする(3条・16条。R3 午後 問6 ア ×)
- 口頭弁論を経ないで決定をするときは、理由の要旨を示せば足りる(16条ただし書。R5 午後 問6 エ ○)
- 保全命令は、債権者にも送達しなければならない(17条。R5 午後 問6 オ ○)
- 保全命令の申立てを却下する決定は、期日の呼出しがされた場合を除き債務者に告知しなくてよい(民事保全規則16条1項)
- 急迫の事情があるときに限り、裁判長が保全命令を発することができる(15条)
この用語が問われた肢
仮の地位を定める仮処分命令の申立てについて口頭弁論を経た場合には,その申立てについての裁判は,判決をもってしなければならない。
保全命令の申立てについて、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
保全命令は、債権者にも送達しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

