贈与の効力(551条〜554条・負担付贈与・定期贈与・死因贈与)ぞうよのこうりょく
贈与の効力とは、贈与者が負う引渡義務の内容と特殊な贈与の扱いのことで、贈与者は目的物を特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定され(551条1項)、負担付贈与・定期贈与・死因贈与にはそれぞれ特則があります(551条2項・552条〜554条)。
もらう側が何も払わない贈与では、あげる側に売主ほど重い責任を負わせるのは酷です。そこで民法は、贈与者は目的物を特定した時の状態で渡せば足りると推定しています。反対に、受贈者が介護や借金の肩代わりといった負担を引き受ける負担付贈与では、その限度で売買に近づけて扱います。死んだらあげるという死因贈与は、遺言による遺贈とよく似ているので、遺贈の規定を借りてきます。

贈与者は、目的物を特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定されます
551条1項は、贈与者は贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定すると定めています。無償で与える贈与者に、売主と同じ水準の品質を保証させるのは当事者の通常の意思に合わないからです。贈与者は、特定した時の状態で引き渡せば足り、売主と同様の担保責任は負いません。出題当時の551条1項は瑕疵を知りながら告げなかったときに限り責任を負うと定めており、現在も特定時の状態で引き渡せば足りるという推定から、知らなかった不具合について贈与者は責任を負いません。もっとも、引渡しまでは特定物の債務者として善良な管理者の注意をもって保存しなければならず(400条)、自己の財産に対するのと同一の注意で足りるわけではありません。
他人の物の贈与も契約の時から有効で、贈与者はその権利を取得して移転する義務を負います
549条は「ある財産」を無償で与えると定めており、平成29年改正前の「自己の財産」という文言のもとでも、判例は他人の財産権を贈与の目的とすることができ、贈与者はみずからその財産権を取得して受贈者に移転する義務を負うとしていました(最判昭和44年1月31日)。贈与は意思表示の合致で契約の時から効力を生じるので、「他人物を目的とする贈与は、贈与者がその物の所有権を取得した時からその効力を生ずる」という肢(R6 問18 ア)は誤りです。
負担付贈与には双務契約の規定が準用され、受贈者が負担を履行しなければ贈与者は解除できます
負担付贈与とは、受贈者も一定の給付をする債務を負う贈与です。負担は贈与の対価ではありませんが、負担の限度では双務・有償の契約に近いので、553条は、性質に反しない限り双務契約に関する規定(同時履行の抗弁権・危険負担・解除)を準用しています。判例も、受贈者が負担である義務の履行を怠るときは、541条・542条を準用して贈与者は解除できるとした原審の判断を是認しています(最判昭和53年2月17日)。負担付贈与も贈与なので諾成契約で、目的物の引渡しがなくても効力を生じます。受贈者は負担を負うので、負担付贈与の承諾は単に権利を得る行為ではなく、「未成年者は、その法定代理人の同意を得ないで、負担付贈与の申込みを承諾することができる」という肢(R6 問4 ウ)は誤りです。
負担付贈与の贈与者は、負担の限度でだけ売主と同じ担保の責任を負います
551条2項は、負担付贈与については、贈与者はその負担の限度において売主と同じく担保の責任を負うと定めています。受贈者が負担という出捐をしている限度でだけ有償契約に準じて保護する趣旨なので、目的物が契約の内容に適合しなくても、その価額がなお負担の価額を上回っているときは、受贈者は負担の減縮を求めることができません。「Aが、BがCに 10 年間にわたり毎年 200 万円を支払うという負担付きで、Bに対して 4000 万円に相当すると考えた甲建物を贈与した場合において、甲建物に不具合が存在していたために 3000 万円の価値しかないことが判明したときであっても、Bは、Aに対し、Cに支払うべき金銭の減額を請求することはできない」という肢(R6 問18 オ)は正しいです。

定期贈与は、贈与者と受贈者のどちらが死亡しても効力を失います
毎月一定額を与えるといった定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって効力を失います(552条)。当事者の個人的な関係にもとづく贈与なので、相続人に引き継がせない趣旨です。書面でしたかどうかは関係がありません。「AがBに対して一定の財産を定期的に贈与する旨を約した場合において、Aが死亡したときは、当該贈与は、その効力を失う」という肢(R6 問18 ウ)は正しいです。
死因贈与は契約なので遺言の方式は要りませんが、遺贈と同じく贈与者は生前いつでも撤回できます
死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与で、性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用されます(554条)。もっとも、死因贈与は贈与者と受贈者の合意で成立する契約であり、単独行為である遺贈とは違います。契約なので、未成年者が死因贈与をするには、15歳に達していても法定代理人の同意が要ります。「15 歳に達した者が死因贈与をするには、その法定代理人の同意を得ることを要しない」という肢(R6 問18 エ)は誤りです。判例は、554条は遺言の方式に関する規定まで準用するものではないとしているので(最判昭和32年5月21日)、死因贈与は書面によらず当事者の合意だけで成立します。他方、判例は、遺言の撤回に関する1022条が、その方式に関する部分を除いて死因贈与に準用されるとしています(最判昭和47年5月25日)。書面でした死因贈与も、贈与者は生前いつでも撤回でき、撤回に遺言の方式は要りません。遺贈も負担付きでできる(1002条)ので、死因贈与も負担付きでできます。負担の履行期を贈与者の生前と定めた負担付死因贈与で、受贈者が負担の全部又はそれに類する程度の履行をしたときは、特段の事情がない限り、1022条・1023条は準用されず撤回できません(最判昭和57年4月30日)。契約なので胎児を受贈者とすることはできず、この点は権利能力と胎児の語で扱います。
- 方式死因贈与は不要式の契約です。遺贈は遺言の方式に従う単独行為です
- 能力死因贈与は行為能力の問題になります。遺贈は15歳から遺言でできます(961条)
- 撤回どちらも生前いつでも撤回できます。死因贈与の撤回に遺言の方式は要りません
- 負担付きの場合受贈者が生前に負担の全部又はそれに類する程度を履行すれば、特段の事情がない限り死因贈与は撤回できません
民法 第551条第1項贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
民法 第551条第2項負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
民法 第552条(定期贈与)
定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
民法 第553条(負担付贈与)
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
民法 第554条(死因贈与)
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
試験ではこう問われる
- 他人物の贈与も契約の時から効力を生じ、贈与者が権利を取得した時から効力を生ずるのではない(549条、最判昭和44年1月31日。R6 問18 ア ×)
- 定期贈与は贈与者又は受贈者の死亡で効力を失う(552条。R6 問18 ウ ○)
- 死因贈与は契約なので、15歳に達した未成年者がするにも法定代理人の同意が要る(R6 問18 エ ×)
- 負担付贈与の贈与者は負担の限度で担保責任を負い、目的物の価値が負担を上回る限り受贈者は負担の減額を請求できない(551条2項。R6 問18 オ ○)
- 負担付贈与の承諾は単に権利を得る行為ではなく、未成年者は法定代理人の同意が要る(R6 問4 ウ ×)
- 死因贈与は書面でしても生前いつでも撤回でき、撤回に遺言の方式は要らない(554条・1022条、最判昭和47年5月25日)
- 死因贈与による所有権の移転の登記の登録免許税は1000分の20である(R2 午後 問27 オ ○、R7 午後 問27 イ ×)

