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遺贈と特定財産承継遺言(964条・986条〜1003条・1014条)いぞうととくていざいさんしょうけいいごん

民法 第15章 親族・相続 過去問で15肢

遺贈とは、遺言によって包括又は特定の名義で財産の全部又は一部を他人に無償で与えることで、特定財産承継遺言とは、遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(いわゆる相続させる遺言)です(964条・1014条2項)。

遺言で「この土地はAにあげる」と書くのが遺贈です。相続人以外の人にも、相続人にもできます。財産の全部や半分のように割合で与えるのが包括遺贈、特定の物を与えるのが特定遺贈です。包括受遺者は相続人と同じ立場になるので借金も引き継ぎます。また、相続人の一人に「相続させる」と書いた遺言は、遺贈ではなく遺産の分け方の指定と解され、遺産分割をしなくても、亡くなった時にその相続人のものになります。

遺言書に相続させる遺言と遺産の2分の1の包括遺贈が書かれ、先生が長男と友人に説明する場面
相続させる遺言は遺産分割の方法の指定で死亡の時に承継され、遺産の割合で遺贈を受けた包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つので相続債務も承継します
相続させる遺言は死亡時に承継包括受遺者は相続人と同じ割合的な包括遺贈でも借金を承継

遺贈は相続人にも胎児にもでき、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つので割合的な包括遺贈でも相続債務を承継します

遺言者は、包括又は特定の名義で財産の全部又は一部を処分でき(964条)、相続人に対する遺贈を禁じる規定はないので、相続人に対しても遺贈できます。遺贈は遺言でするので15歳に達していればでき(961条)、受遺者には886条と891条が準用されるので(965条)、胎児も受遺者になれます。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するので(990条)、「包括受遺者は,相続人と同一の権利義務を有する。」という肢(R2 問23 エ)は正しく、相続財産の一部の割合について包括遺贈を受けた者も相続債務を承継します。遺言に停止条件を付けた遺贈は、条件が遺言者の死亡後に成就したときは成就の時から効力を生じます(985条2項)。遺言で生命保険金の受取人を変更することは遺贈に当たらないので、「Aを被保険者とする生命保険契約において,保険金の受取人がBとされていた場合に,その後,Aのした遺言において保険金の受取人をBからCに変更することは,Cに対する遺贈に当たる。」という肢(R3 問22 イ)は誤りです。

特定遺贈は遺言者の死亡後いつでも放棄でき、催告に答えなければ承認とみなされ、承認と放棄は撤回できませんが取り消すことはできます

受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができ、放棄は死亡の時に遡って効力を生じます(986条)。放棄できるのは遺言者の死亡後なので、「受遺者は、遺言者の死亡前であっても、遺贈の放棄をすることができる。」という肢(R5 問23 ウ)は誤りです。特定遺贈の放棄には相続放棄のような家庭裁判所への申述の規定がないので、申述は要りません(包括遺贈の放棄は990条により相続放棄と同じく申述によります)。遺贈義務者その他の利害関係人が相当の期間を定めて承認か放棄かを催告し、受遺者が期間内に意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます(987条)。放棄したものとみなされるのではありません。受遺者が承認も放棄もせずに死亡したときは、その相続人は自己の相続権の範囲内で承認又は放棄ができ(988条)、共同相続人の全員が共同してする必要はありません。遺贈の承認及び放棄は撤回できませんが(989条1項)、919条2項・3項が準用されるので総則・親族編の規定による取消しはできます(989条2項)。遺贈義務者が履行に着手する前でも撤回はできず、錯誤による放棄は取り消すことができます。

受遺者が遺言者の死亡以前に死亡すれば遺贈は効力を生じず、目的物が死亡時に相続財産に属しない遺贈も原則として効力を生じません

遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは効力を生じません(994条1項)。遺言者の意思は通常その受遺者その人に向けられているからで、効力を生じない遺贈の目的は相続人に帰属します(995条)。受遺者の相続人が遺贈を受ける権利や受遺者の地位を承継することはありません。受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得します(992条)。遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時に相続財産に属しなかったときは原則として効力を生じません(996条)。基準は遺言者の死亡の時で、遺言書の作成時ではありません。

負担付遺贈の受遺者は目的の価額の限度で負担を履行し、受遺者が放棄すれば負担の利益を受ける者が受遺者になれ、不履行のときは家庭裁判所に遺言の取消しを請求します

負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ負担した義務を履行する責任を負います(1002条1項)。受遺者が遺贈を放棄したときは、負担の利益を受けるべき者が自ら受遺者となることができます(同条2項)。負担付遺贈を受けた者が義務を履行しないときは、相続人は相当の期間を定めて催告し、期間内に履行がなければ負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求できます(1027条)。「負担付遺贈を受けた者が、相続人から相当の期間を定めてその負担した義務の履行の催告をされたにもかかわらず、その期間内に履行をしないときは、当該相続人は、当該負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」という肢(R8 問23 ウ)は正しいです。取消しは受遺者への意思表示によるのではないので、相続人が受遺者に対する意思表示によって遺言を取り消すことができるとする肢(R2 問23 オ)は誤りです。期間の経過だけで負担付遺贈が効力を失うこともありません。

板書の図解の場面。黒板に時間の流れの矢印。左に「遺言作成」、中ほどに「受遺者B 死亡」、右に「遺言者A 死亡」。Bの下に「Bの子C」が点線でつながり、Cへの矢印に大きな×印。その横に「994条1項 遺贈は効力を生じない」。先生が指し棒で×印

特定の遺産を相続人に相続させる遺言は特段の事情がない限り遺産分割の方法の指定で、何らの行為を要せずに死亡の時にその相続人に承継されます

判例は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺贈であることが明らかであるか遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺産分割の方法を定めた遺言であり、相続による承継を相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに被相続人の死亡の時に直ちにその遺産がその相続人に承継されるとしています(最判平成3年4月19日)。平成30年改正でこの遺言は特定財産承継遺言と名付けられました(1014条2項)。遺産分割協議や遺産分割の手続を経なくても、受益相続人は被相続人の死亡の時にその財産を取得します。判例は、相続させる遺言で遺産を承継するとされた推定相続人が遺言者より先に死亡した場合は、遺言者がその代襲者などに遺産を承継させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、遺言は効力を生じないとしています(最判平成23年2月22日)。改正前の判例は、相続させる遺言で取得した不動産は登記なしに第三者に対抗できるとしていましたが(最判平成14年6月10日)、現在は899条の2第1項により法定相続分を超える部分は登記がなければ第三者に対抗できません。遺贈による取得も登記がなければ第三者に対抗できず、「被相続人が、生前、その所有する不動産を推定相続人の一人に贈与したが、その旨の登記が未了の間に、他の推定相続人に当該不動産の特定遺贈をし、その後相続の開始があった場合、当該贈与と遺贈による物権変動の優劣は、登記の具備の有無によって決まる。」という肢(R5 問23 ア)は正しいです。相続と登記の詳細は前半の相続と登記の語で扱います。

民法 第990条

(包括受遺者の権利義務)
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

民法 第994条第1項

遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。

民法 第1014条第2項

遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

試験ではこう問われる

  1. 包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持ち、割合的な包括遺贈でも相続債務を承継する(990条。R2 問23 エ ○)
  2. 遺贈の放棄は遺言者の死亡後にでき、死亡前にはできない(986条。R5 問23 ウ ×)
  3. 催告に期間内に答えなければ承認とみなされ、承認・放棄は撤回できないが取り消すことはできる(987条・989条)
  4. 受遺者が遺言者の死亡以前に死亡すれば遺贈は効力を生じず、受遺者の相続人は承継しない(994条1項)
  5. 負担の不履行があれば家庭裁判所に遺言の取消しを請求し、受遺者への意思表示では取り消せない(1027条。R8 問23 ウ ○、R2 問23 オ ×)
  6. 相続させる遺言は特段の事情がない限り特定財産承継遺言で、遺産分割を経ずに死亡の時に承継される(最判平成3年4月19日・1014条2項)
  7. 生前贈与と特定遺贈の優劣は登記の具備で決まる(177条。R5 問23 ア ○)

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