消費貸借と準消費貸借(587条〜592条)しょうひたいしゃくとじゅんしょうひたいしゃく
消費貸借とは、借主が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して貸主から金銭その他の物を受け取る契約で(587条。書面でするときは合意だけで成立します。587条の2)、準消費貸借とは、既存の金銭その他の物を給付する義務を消費貸借の目的とする契約です(588条)。
友人に1万円を借りて後で別の1万円札で返すように、借りた物そのものではなく同じ種類・量の物を返すのが消費貸借です。借主は受け取った物を使ってしまってよいので、所有権は借主に移ります。民法は、口約束の消費貸借はお金を受け取った時に成立するとしつつ、書面で約束した場合は受け取る前から契約が成立するとしています。すでにある売掛代金などの借金を、貸金の形に切り替える約束が準消費貸借です。

書面によらない消費貸借は物を受け取って初めて成立し、書面でする消費貸借は合意だけで成立します
587条は、消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して、相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生ずると定めています。目的物は金銭に限られません。借主は受け取った物を消費し、同種の物を返すので、所有権は借主に移ります。受け取りは貸主から借主に直接渡されなくてもよく、判例は、貸主が借主の指示する第三者に金銭を交付した場合も消費貸借が成立するとしています(大判昭和11年6月16日)。他方、書面(電磁的記録を含みます)でする消費貸借は、引き渡す約束と返還する約束の合意だけで効力を生じ(587条の2第1項・4項)、借主が金銭を受け取るまで効力を生じないわけではありません。無利息だからといって書面が要るわけでもありません。
書面でする消費貸借は、受け取るまで借主だけが解除でき、受け取る前の破産で効力を失います
書面でする消費貸借の借主は、金銭その他の物を受け取るまで契約を解除でき、貸主はそれで損害を受ければ賠償を請求できます(587条の2第2項)。借りる必要がなくなった借主に借入れを強いるのは不合理だからで、解除できるのは借主だけです。「書面でする消費貸借契約の貸主は,借主に対して目的物を交付するまでは,契約の解除をすることができる」という肢(R2 問19 ア)は誤りです。また、受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けると、書面でする消費貸借は効力を失います(同条3項)。出題当時は消費貸借の予約について同じ規定(旧589条)がありましたが、現在は予約の規定が削除され、587条の2第3項の書面でする消費貸借として同じ結論になります。
利息は特約がなければ請求できず、特約があれば元本を受け取った日から付きます
貸主は、特約がなければ借主に利息を請求できません(589条1項)。「消費貸借契約において利息に関する特約がなかった場合は,貸主は,借主に対して法定利率による利息を請求することができる」という肢(R2 問19 ウ)は誤りです。特約があるときは、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求できます(同条2項)。元本を受け取った日から利用できるからで、平成29年改正前の判例(最判昭和33年6月6日)を明文にしたものです。利息の支払時期は合意で自由に決められます。貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、借主はその物の価額を返還でき(590条2項)、利息付きの消費貸借は有償契約なので、借主は売買の規定(559条・562条)により不適合のない物との交換を求めることもできます。「貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは,借主は,その物の価額を返還することができる」という肢(R2 問19 オ)は正しいです。
借主はいつでも返還でき、返還時期の定めがなければ貸主は相当の期間を定めて催告します
当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができ(591条1項)、借主はその期間を過ぎるまで遅滞の責任を負いません。「返還時期の定めのない貸金の返還債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」という肢(R5 問16 エ)は誤りです。貸主が期間を明示せずに催告したときも、催告から相当の期間を経過すれば借主は遅滞の責任を負うので、「消費貸借契約において返還の時期が定められていなかった場合において,貸主が期間を明示せずに返還の催告をしたときであっても,借主が催告を受けた時から返還の準備をするのに相当な期間を経過したときは,借主は,返還義務について遅滞の責任を負う」という肢(R2 問19 エ)は正しいです。借主は、返還の時期の定めの有無や利息の有無にかかわらず、いつでも返還できます(同条2項)。「借主は,消費貸借契約において返還の時期が定められていた場合であっても,いつでも返還をすることができる」という肢(R2 問19 イ)は正しいです。期限前の返還で貸主が損害を受けたときは、貸主は賠償を請求できます(同条3項)。返還場所の合意がなければ、金銭の返還は貸主の現在の住所でします(484条1項)。

準消費貸借は既存の債務を貸金に切り替える契約で、物の引渡しは要りませんが、旧債務がなければ効力を生じません
金銭その他の物を給付する義務を負う者がいる場合に、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借が成立したものとみなされます(588条)。すでに債務があるので物の引渡しは要りません。旧債務は売買代金などに限られず、既存の消費貸借上の債務でもかまいません。判例は、将来発生する金銭債務を目的とする準消費貸借も認め(最判昭和40年10月7日)、旧債務が存在しなければ準消費貸借は効力を生じないとしています(最判昭和43年2月16日。旧債務の不存在は準消費貸借の効力を争う側が証明します)。旧債務に付いていた同時履行の抗弁権などが新債務に残るかは、当事者の意思によって決まります(大判昭和8年2月24日)。新債務の消滅時効は新債務の性質によって決まります。現在は短期消滅時効と商事消滅時効が廃止され、新債務も166条1項によります。
民法 第587条(消費貸借)
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
民法 第587条の2第1項前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
民法 第588条(準消費貸借)
金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
民法 第591条第2項借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
試験ではこう問われる
- 書面でする消費貸借を受取り前に解除できるのは借主だけで、貸主は解除できない(587条の2第2項。R2 問19 ア ×)
- 特約がなければ貸主は利息を請求できず、法定利率による利息も請求できない(589条1項。R2 問19 ウ ×)
- 引き渡された物が種類又は品質に関して不適合なら、借主はその物の価額を返還できる(590条2項。R2 問19 オ ○)
- 借主は返還時期の定めがあってもいつでも返還できる(591条2項。R2 問19 イ ○)
- 返還時期の定めがなければ、借主は催告を受けた時から相当の期間を経過して遅滞になり、期間を明示しない催告でも同じである(591条1項。R2 問19 エ ○、R5 問16 エ ×)
- 準消費貸借は物の引渡しが要らず、旧債務がなければ効力を生じない(588条、最判昭和43年2月16日)
- 別の貸付けによる債権のために既存の抵当権の債権額を増額する変更の登記はできない(R8 午後 問22 ウ ○)

