司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

危険の移転(567条)と売買の受領遅滞きけんのいてん

民法 第13章 契約各論 過去問で5肢

危険の移転とは、売買の目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷した場合の損失が、目的物の引渡し(又は契約に適合する物の提供に対する受領拒絶)の時から売主から買主に移ることで、その後は買主は代金の支払を拒めません(567条)。

買った中古自転車が受け取った翌日に落雷で壊れても、買主は代金を払わなければなりません。物を受け取った買主は、自分の手元で物を管理できるので、その後の偶然の事故の損失は買主が負うのが公平です。民法は、引渡しを境に滅失・損傷の危険が売主から買主へ移ると定め、買主が正当な理由なく受け取りを拒んだ場合も同じに扱っています。

自転車店の前の場面。男性(札「売主」)が中古自転車を女性(札「買主」)に手渡している。その右に、翌日の場面として、女性の家の前で雷に打たれて壊れた自転車と、困った顔の女性。先生が相談員役(札「相談員」)で二つの場面の間に立つ。先生の吹き出し

目的物を引き渡した後に双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷すれば、買主は代金の支払を拒めません

567条1項は、売主が買主に特定した目的物を引き渡した場合、その引渡し以後に当事者双方の責めに帰することができない事由で目的物が滅失・損傷したときは、買主はそれを理由に追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除ができず、代金の支払も拒めないと定めています。危険の移転の基準は引渡しで、所有権がいつ移るかとは関係がなく、所有権は代金完済時に移転する旨の特約があっても、引渡し後の滅失を理由に買主が代金の支払を拒むことはできません。引渡し前の損傷でも、過分の費用をかけずに契約に適合した状態に修復して引き渡せるなら、売主の債務は履行不能ではないので、買主は危険負担を理由に代金の一部の支払を拒めません。

契約に適合する目的物の提供を買主が拒んだ後の滅失・損傷も、買主の負担になります

567条2項は、売主が契約の内容に適合する目的物で引渡しの債務の履行を提供したのに、買主が受領を拒み又は受領できない場合、提供の時以後の双方無責の滅失・損傷も同じく買主の負担とします。受領遅滞中の双方無責の履行不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる(413条の2第2項)ので、買主は解除できず(543条)、代金の支払も拒めません(536条2項)。持参債務の目的物を買主の住所に持参して受領を拒まれた後に第三者の放火で滅失した場合も、特定した物が滅失したので売主は引渡債務を免れます。他方、品質が契約に適合しない物の提供は567条2項の提供に当たらず、危険は移らないので、その受領を拒んだ買主は、その後の滅失を理由に代金の支払を拒むことができます。受領遅滞中でも、売主は自己の財産に対するのと同一の注意をもって保存しなければならない(413条1項)ので、売主の重過失で滅失したときは売主の責めに帰すべき不能で、買主は損害賠償請求や解除ができ、代金の支払を拒めます。

買主の家の玄関先の場面。配達員姿の男性(札「売主」)がワインの箱を差し出し、玄関の女性(札「買主」)が手のひらを向けて受け取りを断っている。その後ろの倉庫の絵に炎の印と「第三者の放火」の札。先生が相談員役(札「相談員」)で手前に立つ。先生の

引渡し前の滅失は、誰の責めに帰すべき事由によるかで代金の扱いが分かれます

引渡し前に目的物が滅失すれば、売主の引渡債務は誰に帰責事由があるかを問わず履行不能となり、買主は引渡しを請求できません(412条の2第1項)。売主の責めに帰すべき事由による滅失なら、買主は無催告で解除して既払代金の返還を求められ(542条1項1号・545条1項)、損害賠償も請求できます。買主の責めに帰すべき事由による滅失なら、買主は代金の支払を拒めず(536条2項)、解除もできないので、既に払った代金も取り戻せません。受領を拒んだ後に買主の過失で目的物が滅失した場合も、買主は代金債務を免れません。双方無責の滅失なら、買主は代金の支払を拒めますが(536条1項)、代金債務は当然には消滅せず、消滅させるには解除が要ります。契約が契約時にさかのぼって無効になるわけでもありません。

  • 引渡し前・売主の帰責買主は解除と損害賠償ができます
  • 引渡し前・双方無責買主は代金の支払を拒めます(536条1項)。代金債務を消すには解除が要ります
  • 引渡し前・買主の帰責買主は代金の支払を拒めず、解除もできません(536条2項・543条)
  • 引渡し後・双方無責買主は追完・減額・損害賠償・解除ができず、代金も払います(567条1項)
  • 適合物の提供を拒んだ後・双方無責引渡し後と同じく買主の負担です(567条2項・413条の2第2項)
民法 第567条第1項

売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

民法 第567条第2項

売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。

民法 第413条の2第2項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

試験ではこう問われる

  1. 引渡し後に双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷すれば、買主は追完・減額・損害賠償・解除ができず、代金の支払も拒めない(567条1項)
  2. 危険の移転の基準は引渡しで、所有権の移転時期の特約とは関係がない
  3. 契約に適合する物の提供を買主が拒んだ後の双方無責の滅失は買主の負担で、買主は解除できない(567条2項・413条の2第2項・543条)
  4. 品質が不適合な物の受領を拒んだ場合は危険は移らない
  5. 引渡し前に買主の責めに帰すべき事由で滅失すれば、買主は代金の支払を拒めない(536条2項)
  6. 引渡し前に双方無責で滅失すれば、買主は代金の支払を拒めるが、代金債務は当然には消滅せず、消滅させるには解除が要る(536条1項・542条1項1号)

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

債権の目的と効力

種類債権の特定と選択債権(401条・406条〜411条)

種類債権とは、ビール1ダース・米1トンのように、目的物を種類と数量だけで指定した債権のことで、債務者が物の給付をす...
契約各論

契約不適合責任の救済手段(562条〜564条・追完・代金減額・損害賠償・解除)

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときに売主が負う責任で、買...
契約総論

危険負担(536条・履行拒絶権としての構成)

危険負担とは、双務契約の一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行できなくなった場合に、そ...
契約総論

解除の要件(催告解除・無催告解除・軽微な不履行・帰責事由不要)

解除の要件とは、債務不履行を理由に契約を解除するために満たすべき条件で、催告による解除(541条)は相当の期間を定...
債権の目的と効力

受領遅滞(413条)と受領義務

受領遅滞とは、債務者が債務の本旨に従った履行の提供をしたのに、債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けること...
担保物権

所有権留保(仮登記担保・代理受領を含む)

所有権留保とは、売買で目的物を買主に引き渡した後も、代金が完済されるまで目的物の所有権を売主に留めておき、代金債権...