更改(513条〜518条)こうかい
更改とは、当事者が従前の債務に代えて、給付の内容について重要な変更をするもの、債務者が第三者と交替するもの、又は債権者が第三者と交替するものである新たな債務を発生させる契約をすることで、従前の債務は消滅します(513条)。
100万円を支払う約束を、品物を引き渡す約束に切り替えたり、借主を別の人に入れ替えたりして、古い債務を消して新しい債務を作ることがあります。これが更改です。古い債務と新しい債務は別物になるので、古い債務についていた担保や抗弁は、原則として新しい債務には引き継がれません。債権譲渡や債務引受は債務の同一性を保ったまま当事者を替える制度で、更改とはここが違います。今では債権譲渡や債務引受が使えるので、更改が使われる場面は限られています。

更改は、給付の内容の重要な変更、債務者の交替、債権者の交替のいずれかをする新たな債務を発生させる契約で、従前の債務は消滅します
513条は、当事者が従前の債務に代えて、従前の給付の内容について重要な変更をするもの(1号)、従前の債務者が第三者と交替するもの(2号)、従前の債権者が第三者と交替するもの(3号)のいずれかの新たな債務を発生させる契約をしたときは、従前の債務は更改によって消滅すると定めています。金銭債務に代えて肖像画を描く債務を発生させる更改について、「債権者Aに対して金銭債務を負っている画家Bが、Aとの間で、当該金銭債務に代えてAの肖像画を描く債務を発生させる旨の更改をしたときは、当該金銭債務及びこれを主たる債務とする保証債務は、いずれも消滅する」という肢(R7 問18 ア)は正しいです。旧債務を残したまま第三者が借主と連帯して責任を負うことは、旧債務に代えて新債務を作るものではないので更改ではなく(併存的債務引受にあたります)。新債務は旧債務と同一性がないので、旧債務に付いていた抗弁は新債務者に引き継がれません。連帯債務者の一人と債権者の間で更改があれば、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します(438条)。「A、B及びCがDに対して連帯して900万円の貸金返還債務を負っている場合において、AがDとの間で、900万円の貸金返還債務に代えて甲土地の所有権を移転する債務を発生させる旨の更改をしたときであっても、B及びCは、Dに対して引き続き900万円の貸金返還債務を負う」という肢(R7 問18 イ)は誤りです。
債務者の交替による更改は、債権者と新しい債務者の契約ででき、更改前の債務者の意思に反してもよく、債権者が旧債務者に通知した時に効力を生じます
514条1項は、債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができ、更改は債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生ずると定めています。旧債務者は契約の当事者ではなく、三者の契約も要らず、更改前の債務者の意思に反してもできます。平成29年改正前の514条ただし書は、更改前の債務者の意思に反するときはできないとしていましたが、この制限は現在はありません。2項は、更改後の債務者は更改前の債務者に対して求償権を取得しないとしています。新しい債務者は自分の債務を負って弁済するのであって、他人の債務を弁済するのではないからです。「債務者の交替による更改がされた場合において、更改後の債務者がその債務を弁済したときは、更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得する」という肢(R7 問18 ウ)は誤りです。
債権者の交替による更改は三者の契約でし、確定日付のある証書によらなければ第三者に対抗できません
515条1項は、債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができると定めています。誰に弁済するかが変わるので、債務者も契約の当事者になり、「債権者の交替による更改は、更改前の債権者と更改後に債権者となる者との間の契約によってすることができる」という肢(R7 問18 エ)は誤りです。2項は、債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ第三者に対抗することができないとしています。経済的には債権譲渡と同じ働きをするので、債権譲渡の第三者対抗要件(467条2項)とそろえたものです。

旧債務の質権や抵当権は、更改前の債務の目的の限度で、債権者が更改後の債務に移すことができ、第三者が設定したものはその承諾が要ります
518条1項は、債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができ、ただし第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならないと定めています。2項は、この移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対する意思表示によってしなければならないとしています。物上保証人が設定した抵当権は、その承諾がなければ移せません。給付の内容を変更する更改のように債務者が更改の当事者であれば、債務者自身が設定した質権を移すのに債務者の別の承諾は要りません(改正前の518条は「更改の当事者は」移せるとしていました)。これに対し、債務者の交替による更改では、更改前の債務者は契約の当事者ではなく第三者の立場になるので、「債務者の交替による更改がされた場合において、更改前の債務者が更改前の債務を担保するために抵当権を設定していたときは、債権者は、更改前の債務者の承諾がある場合に限り、当該抵当権を更改後の債務に移すことができる」という肢(R7 問18 オ)は正しいです。債権者の交替による更改で担保を移せるのは更改前の債権者Bであって、新しい債権者Cではありません。物上保証人Cが自ら新しい債務者になる更改では、Cは契約の当事者として関与しているので、別に承諾を得る必要はありません。
民法 第513条(更改)
当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
二 従前の債務者が第三者と交替するもの
三 従前の債権者が第三者と交替するもの
民法 第514条(債務者の交替による更改)
債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。
民法 第515条(債権者の交替による更改)
債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる。
債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
民法 第518条(更改後の債務への担保の移転)
債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。
試験ではこう問われる
- 給付の内容を変更する更改で、従前の金銭債務もこれを主たる債務とする保証債務も消滅する(513条1号。R7 問18 ア ○)
- 連帯債務者の一人と債権者の更改で、他の連帯債務者の債務も消滅する(438条。R7 問18 イ ×)
- 債務者の交替による更改で、更改後の債務者は更改前の債務者に求償権を取得しない(514条2項。R7 問18 ウ ×)
- 債権者の交替による更改は、更改前の債権者・更改後の債権者・債務者の三者の契約でする(515条1項。R7 問18 エ ×)
- 債務者の交替による更改で、更改前の債務者が設定した抵当権を移すにはその承諾が要る(518条1項。R7 問18 オ ○)
- 債務者の交替による更改で抵当権を移したときは、「債務者更改による新債務担保」を原因として抵当権の変更の登記をすることができる(R4 午後 問15 オ ○)
- 債務者の交替による更改は債権者と新債務者の契約ででき、旧債務者の意思に反してもよい。債権者の交替による更改は確定日付のある証書がなければ第三者に対抗できない(514条1項・515条2項)

