金銭債権と利息債権(402条〜405条・外国通貨・重利)きんせんさいけんとりそくさいけん
金銭債権とは、一定額の金銭の支払を目的とする債権のことで、債務者は各種の通貨で弁済でき、外国の通貨で債権額を指定したときも日本の通貨で弁済できます(402条・403条)。利息債権とは、元本債権から一定の割合で生じる利息の支払を目的とする債権のことで、利息は特約がなければ生じず(589条1項)、弁済期の到来した利息債権は元本債権から独立した債権になります。
お金を貸した、代金を受け取る約束をした、という債権は、民法の中でいちばん多く登場する金銭債権です。お金はどの紙幣でも同じ価値なので、債務者はどの通貨で払ってもよく、ドルで約束した代金を円で払うこともできます。また、お金を貸せば利息が付くと思いがちですが、民法では利息は約束があるときだけ生じます。いったん支払日が来た利息は、元本とは別の独立した債権として扱われます。

債権は金銭に見積もることができない給付でも目的にでき、金銭債権の額は貨幣価値が変動しても額面どおりに定まります
399条は、債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができると定めています。夜はピアノを弾かない、無報酬で講演をするといった給付でも、当事者が法的な拘束力を持たせる意思で合意すれば債権になります。金銭債権の目的物が金銭であるときは、債務者はその選択に従い各種の通貨で弁済でき、特定の種類の通貨の給付を目的としたときだけは別です(402条1項)。金銭債権は一定額の価値の支払を約束するものなので、物価が上がって貨幣価値が下がっても、支払うべき額は額面のままです。
外国の通貨で債権額を指定したときも、債務者は日本の通貨で弁済でき、債権者も日本の通貨で請求できます
403条は、外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができると定めています。判例は、外国の通貨で債権額が指定された金銭債権はいわゆる任意債権であり、債権者は、債務者に対し、外国の通貨又は日本の通貨のいずれによって請求することもでき、403条は債権者が外国の通貨で請求した場合に債務者が日本の通貨で弁済できることを定めたにすぎないとしています(最判昭和50年7月15日)。条文が債務者の側からだけ書かれていても、債権者の請求を外国の通貨に限る趣旨ではないからです。

利息は特約があるときにだけ生じ、特約があれば借主は元本を受け取った日以後の利息を支払います
589条1項は、貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができないと定めています。民法上の消費貸借は無利息が原則で、法定利率は利息を生ずべき債権で利率の定めがないときに使う割合にすぎず、利息そのものを生じさせる根拠にはなりません。「消費貸借契約において利息に関する特約がなかった場合は,貸主は,借主に対して法定利率による利息を請求することができる」という肢(R2 問19 ウ)は、原則と例外を逆にしているので誤りです。ただし、商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は特約がなくても法定利息を請求できます(商法513条1項)。預金契約は消費寄託(666条)の性質を持ち、利息も特約によって生じるので、利息の特約がない預金について、金融機関は利息の支払義務を負いません。利息の特約があるときは、貸主は借主が金銭を受け取った日以後の利息を請求でき(589条2項)、受け取った当日から利息が付きます。利息の起算日と遅延損害金の起算日の違いは、履行遅滞の時期の語で並べています。
弁済期の到来した利息債権は元本債権から独立した債権になり、分離して譲渡でき、延滞が1年分以上になれば元本に組み入れることができます
利息債権は、元本がある限り一定の割合で利息を生じさせる基本権としての利息債権と、各期の弁済期が来て具体的な金額になった支分権としての利息債権に分けて考えます。基本権は元本と運命を共にしますが、支分権としての利息債権は、弁済期が到来すれば元本から独立した一個の金銭債権になります。そのため、元本債権から分離して譲渡することができます。元本債権が弁済などで消滅しても、すでに弁済期が来ていた利息債権は残り、当然には消滅しません。405条は、利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても債務者がその利息を支払わないときは、債権者はこれを元本に組み入れることができると定めています(重利)。組み入れた分にもさらに利息が付くので、延滞が長引いた債務者への圧力になります。
金銭債務は債権者を過失なく確知できなくても遅滞の責任を免れず、口座への払込みによる弁済は払戻しを請求する権利を取得した時に効力を生じます
金銭債務の不履行による損害賠償については、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができません(419条3項)。不可抗力でも免れない以上、債権者を過失なく確知できなかったという事情でも、損害賠償の責任を免れません。この場合の債務者は、債権者を確知できないことに過失がなければ、弁済供託をして債務を消滅させることができます(494条2項)。「賃貸人が死亡した場合において、その相続人の有無が戸籍により調査をしなければ賃借人に不明であるときは、賃借人は、当該調査をすることなく、賃料の全額につき債権者不確知を原因とする供託をすることができる」という肢(R7 午後 問9 ウ)は正しいです。また、債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に効力を生じます(477条)。入金記帳で預金債権が成立すれば給付は済んでいるからで、弁済の効力が生じる時点を問われて「債権者が払込みがあった口座から金銭の払戻しを現実に受けた時点です」と答える肢(R3 問16 イ)は誤りです。金銭債務の損害賠償の額と法定利率は、法定利率と金銭債務の特則の語で扱います。
民法 第399条(債権の目的)
債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
民法 第403条外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
民法 第405条(利息の元本への組入れ)
利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。
民法 第589条第1項貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
試験ではこう問われる
- 債権は金銭に見積もることができない給付でも目的にできる(399条)
- 外国の通貨で指定した債権は、債務者が日本の通貨で弁済でき、債権者も日本の通貨で請求できる(403条。最判昭和50年7月15日)
- 消費貸借は特約がなければ無利息で、法定利率による利息も請求できない(589条1項。R2 問19 ウ ×)
- 弁済期の到来した利息債権は元本から分離して譲渡でき、元本が消滅しても当然には消滅しない
- 1年分以上延滞した利息は、催告しても支払われなければ元本に組み入れられる(405条)
- 口座への払込みによる弁済は、債権者が払戻しを請求する権利を取得した時に効力を生じる(477条。R3 問16 イ ×)
- 金銭債務は債権者を過失なく確知できなくても損害賠償の責任を免れないが、債権者不確知を原因として弁済供託ができる(419条3項・494条2項。R7 午後 問9 ウ ○)

