民法上の催告の一覧(確答がない場合の効果)みんぽうじょうのさいこくのいちらん
民法上の催告とは、相手方に一定の行為や確答を促す意思の通知のことで、催告に対して期間内に確答や行為がない場合の効果(追認擬制・取消し擬制・追認拒絶擬制・権利の消滅・承認擬制など)は、制度ごとに条文で定められています。
相手が権利を行使するのかしないのかわからないまま待たされる立場は不安定です。民法は、そのような立場の人が「期間内にはっきりさせてください」と催告できる場面を各所に用意し、返事がないときにどちらに確定させるかを制度ごとに決めています。追認したことになる場合、取り消したことになる場合、権利が消える場合などさまざまで、決め方には理由があります。保護すべき側に不利にならない方向に確定させる、というのが基本の考え方です。

取り消しうる行為と無権代理では、催告への確答がないとき、保護される側に不利にならない方向に効果が定まります
制限行為能力者の相手方が、行為能力者となった本人や法定代理人・保佐人・補助人に追認するかどうかの確答を求め、確答がなければ追認したものとみなされます(20条1項・2項)。被保佐人・被補助人に保護者の追認を得るよう催告して通知がなければ取り消したものとみなされます(同条4項)。保佐人に催告して確答がなければ、追認したものとみなされます(詳しくは制限行為能力者の相手方の保護の語で扱います)。無権代理の相手方が本人に追認するかどうかの確答を求め、確答がなければ追認を拒絶したものとみなされます(114条)。本人は何もしていないので、黙っていて責任を負わされるのは不当だからです。「Cは、Bに対し、相当の期間を定めて、その期間内に本件売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、Bがその期間内に確答しないときは、追認したものとみなされる」という肢(R5 問6 ア)は誤りで、相手方は本人に契約の履行を請求することもできません(無権代理行為の追認の語で扱います)。
詐欺・強迫による意思表示には、相手方が追認するかどうかを催告する規定がありません
20条のような催告権は、制限行為能力者の相手方と無権代理の相手方について定められているだけで、詐欺や強迫をした相手方には認められていません。だました側を不安定な立場から救う必要はなく、被害者である表意者を守るべきだからです。詐欺や強迫をした相手方が、表意者に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることはできず、表意者が黙っていても追認したものとみなされることはありません。表意者の取消権は、追認できる時から5年、行為の時から20年で時効によって消滅するだけです(126条)。

解除権や予約完結権は、期間を定めた催告に確答がなければ消滅し、選択権は相手方に移ります
解除権の行使について期間の定めがないとき、相手方は相当の期間を定めて解除するかどうかの確答を催告でき、期間内に解除の通知を受けないときは解除権は消滅します(547条)。消滅するのは解除権だけで、本来の契約上の債権や損害賠償請求権は残ります。売買の一方の予約の完結の意思表示について期間を定めなかったときも、予約者が確答を催告し、期間内に確答がなければ予約は効力を失い(556条2項)、予約者は売買契約の履行を請求できなくなります。選択債権では、弁済期にある場合に相手方が相当の期間を定めて催告しても選択権者が選択しないときは、選択権は相手方に移転します(408条)。
遺贈の承認・放棄の催告に意思表示がなければ承認とみなされ、遺言執行者への催告に確答がなければ就職を承諾したものとみなされます
遺贈義務者その他の利害関係人は、受遺者に相当の期間を定めて遺贈の承認又は放棄を催告でき、受遺者が期間内に意思を表示しないときは遺贈を承認したものとみなされます(987条)。受遺者に利益を与える遺言者の意思に沿うからで、放棄したものとみなされるのではありません。相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に相当の期間を定めて就職を承諾するかどうかの確答を催告でき、期間内に確答しないときは就職を承諾したものとみなされます(1008条)。負担付遺贈の受遺者が負担を履行しないときは、相続人は相当の期間を定めて履行を催告でき、期間内に履行がなければ遺言の取消しを家庭裁判所に請求できます(1027条)。「負担付遺贈を受けた者が、相続人から相当の期間を定めてその負担した義務の履行の催告をされたにもかかわらず、その期間内に履行をしないときは、当該相続人は、当該負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる」という肢(R8 問23 ウ)は正しく、「その相続人は,受遺者に対する意思表示によって負担付遺贈に係る遺言を取り消すことができる」という肢(R2 問23 オ)は誤りです。期間が経過しただけで負担付遺贈が効力を失うのでもありません。
- 制限行為能力者の相手方(20条)能力者となった本人・保護者に催告→追認擬制。被保佐人・被補助人に保護者の追認を求める→取消し擬制
- 無権代理の相手方(114条)本人に催告→追認拒絶擬制
- 詐欺・強迫の相手方催告権なし
- 解除権(547条)確答がなければ解除権が消滅。損害賠償請求権は残る
- 売買の一方の予約(556条2項)確答がなければ予約が効力を失う
- 選択債権(408条)選択しなければ選択権が相手方に移転
- 受領の催告(493条ただし書)受領拒絶の債権者には弁済の準備の通知と受領の催告で弁済の提供となり、債務不履行責任を免れる(492条)
- 遺贈の承認・放棄(987条)意思表示がなければ承認擬制
- 遺言執行者の就職(1008条)確答がなければ承諾擬制
- 負担付遺贈(1027条)履行がなければ家庭裁判所に遺言の取消しを請求
- 時効(150条)催告の時から6か月は時効が完成しない
催告は、効果を確定させる場面のほか、弁済の提供・解除・時効の完成猶予の要件としても使われます
債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいるときは、債務者は弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば弁済の提供となり(493条ただし書)、その時から債務不履行の責任を免れます(492条。弁済の提供の語で扱います)。債務不履行による解除は、原則として相当の期間を定めた履行の催告をしてからします(541条)。時効では、催告があった時から6か月を経過するまで時効は完成せず、その間の再度の催告には完成猶予の効力がありません(150条)。「催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度の催告があった場合には、再度の催告があった時から 6 か月を経過するまでの間は、時効は完成しない」という肢(R4 問6 エ)は誤りです。どれも「催告」という同じ言葉ですが、確答を求めるものか、履行や受領を求めるものかで性質が違うので、条文ごとに効果を確かめます。
試験ではこう問われる
- 制限行為能力者の相手方が保護者に催告して確答がなければ追認擬制、被保佐人に保佐人の追認を得るよう催告して通知がなければ取消し擬制となる(20条)
- 無権代理の相手方が本人に催告して確答がなければ、追認したものではなく追認を拒絶したものとみなされる(114条。R5 問6 ア ×)
- 詐欺・強迫による意思表示について、相手方が追認するかどうかを催告する権利はない
- 期間の定めのない解除権は、催告に対して期間内に解除の通知がなければ消滅するが、損害賠償請求権は失われない(547条)
- 遺贈の承認・放棄の催告に受遺者が意思を表示しなければ承認擬制、遺言執行者が就職の催告に確答しなければ承諾擬制となる(987条・1008条)
- 負担付遺贈の負担の履行の催告に応じないときは、相続人は家庭裁判所に遺言の取消しを請求する。受遺者への意思表示では取り消せない(1027条。R8 問23 ウ ○ / R2 問23 オ ×)
- 催告による時効の完成猶予の間にした再度の催告には、完成猶予の効力がない(150条2項。R4 問6 エ ×)

