契約類型別の終了・任意解除・報酬の比較(貸借型・役務提供型の横断)けいやくるいけいべつのしゅうりょうにんいかいじょほうしゅうのひかく
任意解除とは、債務不履行がなくても当事者の一方がいつでも契約を終わらせることができることで、委任の各当事者(651条)や請負の注文者(641条)に認められます。契約類型別の比較とは、使用貸借・賃貸借・消費貸借・雇用・請負・委任・寄託・組合について、当事者の死亡による終了、期間の定めのない場合の終了、任意解除、報酬の支払時期と中途終了の報酬を並べて整理するものです。
物を貸す、仕事を頼む、物を預けるといった契約は、どれも一定の期間続くので、どんなときに終わるのか、途中でやめられるのか、報酬はいつ払うのかを決めておく必要があります。民法は契約ごとに条文を置いていますが、答えは契約の性質から説明できます。相手が誰かを重視する契約は当事者の死亡で終わり、頼んだ側の都合で不要になった仕事は損害を賠償して打ち切れ、報酬は仕事の後に払うのが原則です。この語では、各契約の語から要点を集めて並べます。

当事者の死亡で契約が終わるかは、相手方の個性を重んじる契約かどうかで決まります
使用貸借は、借主個人への好意で無償で貸す契約なので、借主の死亡によって終了しますが(597条3項)、貸主の死亡では終了しません。「借主が死亡したときは、使用貸借は終了する」という肢(R4 問18 エ)は正しいです。定期の給付を目的とする贈与も、贈与者又は受贈者の死亡によって効力を失います(552条)。「AがBに対して一定の財産を定期的に贈与する旨を約した場合において、Aが死亡したときは、当該贈与は、その効力を失う」という肢(R6 問18 ウ)は正しいです。賃貸借には死亡を終了原因とする規定がなく、597条3項も準用されていないので(622条)、賃貸人の死亡でも賃借人の死亡でも当然には終了しません。委任は信頼関係に基づくので、委任者又は受任者の死亡、委任者又は受任者の破産手続開始の決定、受任者の後見開始の審判によって終了します(653条)。もっとも、登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては消滅しません(不動産登記法17条1号)。この規定は委任による代理人についてのもので、親権者が法定代理人として登記を申請する前に本人が死亡したときは、親権者の代理権は消滅します(R7 午後 問12 ア ×)。請負は仕事の完成が目的で注文者の個性は重要でないので、注文者が死亡しても終了せず、相続人が地位を引き継ぎます。組合員は死亡によって当然に脱退し(679条1号)、相続人が組合員の地位を引き継ぐことはありません。
期間の定めのない契約はいつでも終わらせることができますが、解約の申入れから終了までの期間は契約ごとに違います
期間の定めのない賃貸借では、各当事者はいつでも解約の申入れができ、土地は1年、建物は3か月、動産と貸席は1日を経過して終了します(617条1項)。解約の申入れで直ちに終了するわけではありません。使用貸借では、期間も使用及び収益の目的も定めなかったときは、貸主はいつでも解除でき(598条2項)、借主もいつでも解除できます(同条3項)。「期間及び使用収益の目的の定めのない使用貸借は、貸主がいつでも解除することができる」という肢(R4 問18 オ)は正しいです。消費貸借の借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還できます(591条2項)。「借主は,消費貸借契約において返還の時期が定められていた場合であっても,いつでも返還をすることができる」という肢(R2 問19 イ)は正しいです。寄託で返還の時期を定めなかったときは、受寄者はいつでも返還できます(663条1項)。
任意解除は、委任では各当事者に、請負では注文者だけに認められ、無報酬の受寄者は書面によらない寄託に限り受取り前に解除できます
請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(641条)。仕事は注文者のためにするものなので、不要になった仕事を続けさせる意味がないからです。請負人の側にはこの権利がありません。仕事を完成した後は、目的物の引渡し前でも、注文者はこの解除ができません。「目的物の引渡しを要する請負契約においては、請負人が仕事を完成した後であっても、その目的物の引渡しが完了するまでは、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる」という肢(R5 問18 イ)は誤りです。注文者が破産手続開始の決定を受けたときも、請負人による解除は仕事を完成した後はできません(642条1項ただし書)。「注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人は、仕事を完成した後であっても、報酬の支払がされるまでは、注文者の破産手続開始を理由として請負契約を解除することができる」という肢(R5 問18 ウ)は誤りです。委任は、各当事者がいつでも解除できます(651条1項)。相手方に不利な時期に解除したときや、受任者の利益をも目的とする委任を委任者が解除したときは損害を賠償しなければなりませんが、受任者の利益が専ら報酬を得ることによるものであるときは除かれます(同条2項)。「受任者の利益をも目的とする委任については、その利益が専ら受任者が報酬を得ることによるものであるときであっても、これを解除した委任者は、受任者の損害を賠償する義務を負う」という肢(R5 問19 エ)は誤りです。寄託では、無報酬の受寄者は寄託物を受け取るまで解除できますが、書面による寄託については解除できません(657条の2第2項)。

賃貸借・雇用・委任・組合の解除は、将来に向かってのみ効力を生じます
継続してきた契約を遡って清算するのは不合理なので、賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生じ(620条)、雇用・委任・組合にも準用されます(630条・652条・684条)。「委任の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる」という肢(R8 問19 イ)は正しいです。解除の効果の詳しい内容は、解除の効果の語で扱います。
報酬は後払いが原則で、請負は目的物の引渡しと同時に支払い、委任・寄託・組合の業務執行者は特約がなければ報酬を請求できません
雇用では、労働者は約した労働を終わった後でなければ報酬を請求できず(624条1項)、期間によって定めた報酬はその期間を経過した後に請求できます(同条2項)。後払いは原則にすぎず、前払の特約もできます。労働者は雇用関係から生じた債権について使用者の総財産の上に先取特権を持ちます(306条2号・308条)。請負の報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払い、物の引渡しを要しないときは仕事の完成後の後払いです(633条)。「目的物の引渡しを要する請負契約においては、報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない」という肢(R5 問18 ア)は正しいです。具体的な報酬額の定めがなくても請負は成立し、報酬を請求できます。委任は特約がなければ報酬を請求できず(648条1項)、報酬は委任事務を履行した後でなければ請求できませんが(同条2項)、この後払いの規定は特約で変えられます。委任事務の処理に費用を要するときは、委任者は受任者の請求により前払をしなければならず(649条)、報酬の合意の有無は関係しません。「委任事務を処理するについて費用を要する場合には、報酬を支払う旨の合意がないときであっても、委任者は、受任者の請求により、その費用の前払をしなければならない」という肢(R8 問19 ウ)は正しいです。寄託にも648条が準用され(665条)、業務を執行する組合員にも準用されるので(671条)、受寄者や業務執行組合員は特約がなければ報酬を請求できません。なお、商人がその営業の範囲内で寄託を受けたときは、報酬を受けなくても善良な管理者の注意で保管しなければなりません(商法595条)。
途中で終わった場合、雇用・委任・寄託は既にした履行の割合で報酬を請求でき、請負は注文者が受ける利益の割合で請求できます
雇用では、使用者の責めに帰することができない事由で労働に従事できなくなったときや雇用が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます(624条の2)。委任も、委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや委任が履行の中途で終了したときは同じで(648条3項)、寄託にも準用されます(665条)。請負は仕事の完成に対して報酬を払う契約なので、634条は、注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなったときや完成前に解除されたときに、可分な部分の給付によって注文者が利益を受ける場合に限り、その部分を完成とみなし、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できるとしています。「請負契約が仕事の完成前に解除された場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる」という肢(R5 問18 オ)は正しいです。請負では、既にした履行の割合で無条件に報酬を請求できるわけではありません。注文者の責めに帰すべき事由で仕事を完成できなくなったときは、注文者は536条2項により反対給付を拒めず、報酬の支払を拒むことができません。
契約類型別の終了・任意解除・報酬
- 使用貸借: 借主の死亡で終了・貸主の死亡では終了しない/期間も目的も定めなければ貸主はいつでも解除/借主はいつでも解除
- 賃貸借: 当事者の死亡では終了しない/期間の定めがなければ解約申入れから土地1年・建物3か月・動産1日で終了/解除は将来効
- 消費貸借: 借主は返還時期の定めの有無にかかわらずいつでも返還できる
- 雇用: 報酬は後払い(期間で定めたら期間経過後)/中途終了は履行の割合で報酬/解除は将来効
- 請負: 注文者の死亡で終了しない/注文者だけが完成前に損害を賠償して解除できる/報酬は引渡しと同時/中途終了は注文者が受ける利益の割合で報酬
- 委任: 双方の死亡・破産・受任者の後見開始で終了/各当事者がいつでも解除/特約がなければ無報酬・後払い/中途終了は履行の割合で報酬/解除は将来効
- 寄託: 返還時期の定めがなければ受寄者はいつでも返還/無報酬の受寄者は書面によらなければ受取り前に解除できる/特約がなければ無報酬
- 組合: 組合員の死亡は脱退事由で相続人は組合員にならない/業務執行組合員は特約がなければ無報酬/解除は将来効
民法 第653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
民法 第641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
民法 第633条(報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
試験ではこう問われる
- 使用貸借は借主の死亡で終了し(597条3項。R4 問18 エ ○)、定期贈与は贈与者又は受贈者の死亡で効力を失う(552条。R6 問18 ウ ○)
- 委任は委任者・受任者の死亡などで終了する(653条)が、登記の申請の委任による代理人の権限は本人の死亡で消滅しない(不動産登記法17条1号)。法定代理人の代理権は本人の死亡で消滅する(R7 午後 問12 ア ×)
- 期間も目的も定めない使用貸借は貸主がいつでも解除でき(598条2項。R4 問18 オ ○)、消費貸借の借主は返還時期の定めがあってもいつでも返還できる(591条2項。R2 問19 イ ○)
- 請負の任意解除は注文者が仕事の完成前にだけでき(641条。R5 問18 イ ×)、注文者の破産による請負人の解除も仕事の完成後はできない(642条1項ただし書。R5 問18 ウ ×)
- 委任は各当事者がいつでも解除でき、受任者の利益が専ら報酬を得ることによるときは、解除した委任者は損害を賠償しなくてよい(651条。R5 問19 エ ×)
- 請負の報酬は目的物の引渡しと同時に支払い(633条。R5 問18 ア ○)、委任者は報酬の合意がなくても費用を前払する(649条。R8 問19 ウ ○)
- 中途終了の報酬は、雇用・委任・寄託は履行の割合、請負は注文者が受ける利益の割合による(624条の2・648条3項・634条。R5 問18 オ ○)

