併存的債務引受(470条・471条)へいぞんてきさいむひきうけ
併存的債務引受とは、引受人が債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者の債務もそのまま存続する債務の引受けです(470条1項)。債権者と引受人となる者の契約で債務者の意思に反してもでき、債務者と引受人となる者の契約なら債権者の承諾の時に効力を生じます。
子どもの事業の借金について、親が「自分も一緒に払う」と貸主に申し出ることがあります。子どもの借金はそのまま残り、親も同じ借金を負うので、貸主はどちらからでも回収できます。これが併存的債務引受です。保証と違って、親は保証人ではなく債務者と並ぶ連帯債務者になります。元の債務者は何も失わないので、元の債務者が反対していても、貸主と引受人の契約だけで引き受けることができます。

併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者の債務と同一の内容の債務を負担します
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担します(470条1項)。改正前も、判例は併存的債務引受の債務者と引受人の関係を特段の事情のない限り連帯債務としていました(最判昭和41年12月20日)。頭割りの分割債務になることはありません。借主の債務がそのまま残り、第三者が借主と並んで同じ債務を負うだけなので、従前の債務に代えて新しい債務を生じさせる更改(513条)にも当たりません。
債権者と引受人となる者との契約でき、債務者の意思に反してもかまいません。債務者と引受人となる者との契約なら債権者の承諾の時に効力を生じます
併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができます(470条2項)。債務者は債務を免れるわけでも重くなるわけでもないので、債務者の同意は要らず、債務者の意思に反してもできます。改正前の判例も同じでした(大判大正15年3月25日)。債務者と引受人となる者との契約によってもでき、その場合は債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生じ(470条3項)、第三者のためにする契約に関する規定に従います(同条4項)。第三者弁済で正当な利益を有しない第三者が債務者の意思に反して弁済できないこと(474条2項)とは違います。
- 債権者と引受人となる者の契約(470条2項)債務者の意思に反してもよい。契約の時に効力を生じる
- 債務者と引受人となる者の契約(470条3項・4項)債権者が引受人となる者に承諾をした時に効力を生じる。第三者のためにする契約の規定に従う
- 引受人の抗弁(471条)効力発生時に債務者が主張できた抗弁を対抗できる。取消権・解除権の限度で履行を拒める
- 債務者と引受人の関係(470条1項)連帯債務。相対的効力(441条)と求償(442条)

引受人は効力発生時に債務者が主張できた抗弁を対抗でき、債務者が取消権・解除権を持つときはその限度で履行を拒めます
引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗できます(471条1項)。引受けの時までに債務者の債務の消滅時効期間が満了していれば、引受人もその時効を援用して債権者に対抗できます。債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(471条2項)。取消権や解除権そのものは契約の当事者である債務者のものなので、引受人が行使することはできません。
債務者と引受人は連帯債務者なので、一人に生じた事由は更改・相殺・混同を除き相対的効力にとどまり、弁済した者は負担部分に応じて求償できます
債務者と引受人の関係には連帯債務の規定が適用されます。改正前は連帯債務者の一人の時効の完成に絶対的効力があり(旧439条)、債務者Bの債務が時効で消滅すれば、引受人CもBの負担部分について債務を免れました。現在は時効の完成も相対的効力なので(441条本文)、AはCに全額を請求できます。他方、更改は全ての連帯債務者の利益のために債権を消滅させるので(438条)、債権者Aと引受人Cの間に更改があれば債務者Bのα債務も消滅します。引受人が弁済すれば、債務者に対して負担部分に応じた額を求償できます(442条1項)。負担部分は債務者と引受人の内部の合意で決まり、債務者のために全部を引き受けたのなら引受人の負担部分が全部になることもあります。
民法 第470条第1項併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
民法 第470条第2項併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
民法 第471条第1項引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
試験ではこう問われる
- 引受人を連帯債務者に追加する抵当権の変更の登記の原因は「併存的債務引受」とすることができる(R4 午後 問15 イ ○)
- 引受人は債務者と連帯して同一内容の債務を負う。分割債務にはならず、更改にも当たらない(470条1項)
- 債権者と引受人となる者の契約で、債務者の意思に反してもできる(470条2項)
- 債務者と引受人となる者の契約では、債権者が引受人となる者に承諾をした時に効力を生じる(470条3項・4項)
- 引受人は効力発生時に債務者が主張できた抗弁を対抗でき、引受け前に満了した時効も援用できる(471条1項)
- 債務者の時効完成は引受人に及ばず全額を請求できる。引受人と債権者の更改で債務者の債務も消滅する(441条・438条)

