連帯債務の影響関係(絶対的効力と相対的効力、437条〜441条)れんたいさいむのえいきょうかんけい
連帯債務とは、性質上可分な給付について、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人の債務者が各自全部の履行をする義務を負い、一人が弁済すれば全員の債務が消滅する債務です(436条)。連帯債務者の一人に生じた事由は、更改・相殺・混同を除き、他の連帯債務者に効力を生じないのが原則です(441条)。
三人で300万円を連帯して借りると、貸主は誰に対しても300万円全部を請求できます。では、貸主が一人だけを訴えたり、一人だけの借金を免除したりしたときに、残りの二人の債務がどうなるかが問題になります。民法は、連帯債務者それぞれの債務は別々の債務だと考え、一人について起きたことは原則として他の人に影響しないと定めています。例外は、弁済のように債権者が満足を得る事由と、更改・相殺・混同だけです。

連帯債務者の一人に生じた事由は、更改・相殺・混同と弁済等を除き、他の連帯債務者に効力を生じないのが原則です
連帯債務者の一人について生じた事由は、438条(更改)・439条1項(相殺)・440条(混同)に規定する場合を除き、他の連帯債務者に対してその効力を生じません(441条本文)。ただし、債権者と他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、その連帯債務者に対する効力はその意思に従います(441条ただし書)。弁済その他の債権者を満足させる事由は、明文はありませんが全員の債務を消滅させます。各連帯債務者の債務は別個独立なので、一人の債務だけ弁済期を異ならせることもできます。連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられません(437条)。契約締結時に一人が意思無能力であった場合や、一人が成年被後見人であることを理由に契約を取り消した場合でも、他の連帯債務者は全額の債務を負います。意思無能力の者や取り消した者の負担部分について、他の連帯債務者が債務を免れることはありません。
- 絶対的効力(他の連帯債務者にも及ぶ)弁済・代物弁済・供託、更改(438条)、相殺の援用(439条1項)、混同(440条)
- 相殺しない間の履行拒絶(439条2項)反対債権を持つ連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者は履行を拒める
- 相対的効力(441条本文)履行の請求、免除、時効の完成、承認、確定判決による時効の更新、無効・取消しの原因(437条)
- 例外の合意(441条ただし書)債権者と他の連帯債務者が別段の意思を表示すれば、その意思に従う
更改と混同は全員の債務を消滅させ、混同のあった連帯債務者は弁済をしたものとみなされます
連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します(438条)。更改で生じた新しい債務は更改の当事者の間の債務なので、他の連帯債務者がその責任を負うことはありません。「A、B及びCがDに対して連帯して900万円の貸金返還債務を負っている場合において、AがDとの間で、900万円の貸金返還債務に代えて甲土地の所有権を移転する債務を発生させる旨の更改をしたときであっても、B及びCは、Dに対して引き続き900万円の貸金返還債務を負う」という肢(R7 問18 イ)は誤りです。連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は弁済をしたものとみなされます(440条)。連帯債務者の一人が債権者を単独で相続すれば、債務は全員について消滅し、相続した者が他の連帯債務者に負担部分を求償する関係だけが残ります。
反対債権を持つ連帯債務者が相殺を援用すれば全員の債務が消滅しますが、他の連帯債務者はその負担部分の限度で履行を拒めるだけで相殺はできません
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合に、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します(439条1項)。反対債権を持つ連帯債務者が相殺を援用しない間は、他の連帯債務者は、その連帯債務者の負担部分の限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(439条2項)。改正前は他の連帯債務者がその負担部分について相殺を援用できるとされていましたが、他人の債権を処分させるのは行き過ぎなので、現在は履行拒絶にとどめています。60万円の連帯債務で負担部分が均等なら、反対債権を持つCの負担部分は20万円なので、他の連帯債務者は20万円について支払を拒むことができます。負担部分50万円のAが80万円の反対債権を持つ場合も、Bにできるのは50万円の限度での履行拒絶で、相殺ではありません。「連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合には、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分について他の連帯債務者が相殺を援用することができる」という肢(R8 問16 ウ)は誤りで、同じ肢がR4 問16 ウにも出ています。

履行の請求・免除・時効の完成・承認は相対的効力しかなく、他の連帯債務者に全額を請求できます
改正前は、連帯債務者の一人に対する履行の請求(旧434条)、免除(旧437条)、時効の完成(旧439条)に絶対的効力が認められ、請求すれば他の連帯債務者の時効も中断し、免除や時効完成があればその者の負担部分について他の連帯債務者も債務を免れました。現在はいずれも441条本文の相対的効力になり、別段の意思表示がない限り他の連帯債務者に影響しません。DがAに支払請求訴訟を提起して認容判決が確定しても、Bの債務の時効は更新されません。Cに免除の意思表示をしても、Aの債務を免除する意思がなければAに全額を請求できます。承認による時効の更新も相対的効力で、この点は改正の前後で変わりません。
改正前の請求・免除・時効の絶対的効力で作られた肢は、現在の441条で読むと正誤が入れ替わります
BCDが負担部分の等しい300万円の連帯債務を負う事例で、債権者Aとの関係を改正の前後で比べます。AがBに対して履行の請求をしても、現在はC及びDについて時効の完成猶予・更新の効力を生じませんが、改正前は請求の絶対的効力によりC及びDの時効も中断しました。Bの債務を全額免除しても、現在はC及びDが300万円の連帯債務を負い続けますが、改正前はBの負担部分を除いた200万円になりました。Bのために消滅時効が完成した場合も、Cの債務を全額免除した場合も、現在は他の二人が300万円の連帯債務を負い続けます。免除を受けた者や時効が完成した者も、他の連帯債務者が弁済すれば求償を受けます(445条)。「連帯債務者の一人に対して債務の免除がされた後、他の連帯債務者が債務の全額を弁済したときは、債務の免除を受けた連帯債務者は、債務の免除を受けたことを理由に、求償を拒むことはできない」という肢(R4 問16 オ)は正しいです。
民法 第441条(相対的効力の原則)
第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
民法 第439条第2項前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
民法 第437条(連帯債務者の一人についての法律行為の無効等)
連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
試験ではこう問われる
- 連帯債務者の一人に生じた事由は、更改・相殺・混同を除き他に効力を生じない。別段の意思表示があればそれに従う(441条)
- 一人に無効・取消しの原因があっても他の連帯債務者の債務は影響を受けない(437条)
- 連帯債務者の一人と債権者との間で更改をすれば、他の連帯債務者も従来の債務を免れる(438条。R7 問18 イ ×)
- 一人が債権者を単独相続すれば混同で弁済とみなされ、全員の債務が消滅する(440条)
- 反対債権を持つ連帯債務者が相殺を援用しない間、他の連帯債務者はその負担部分について相殺を援用できず、履行を拒めるだけである(439条2項。R8 問16 ウ ×、R4 問16 ウ ×)
- 免除を受けた連帯債務者も、他の連帯債務者が全額を弁済すれば求償を拒めない(445条。R4 問16 オ ○)
- 一人に対する請求・判決確定・承認・免除・時効完成は他に及ばない。改正前の請求・免除・時効の絶対的効力とは結論が逆になる(441条本文)

