寄託(657条〜666条・保管義務・返還・混合寄託・消費寄託)きたく
寄託とは、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる諾成契約です(657条)。無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意で保管し(659条)、寄託者は返還時期の定めがあってもいつでも返還を請求できます(662条1項)。
旅行中に友人に荷物を預かってもらうのが寄託です。預かる約束をした時点で契約は成立しますが、ただで預かる人は、書面で約束していなければ、荷物を受け取るまではやめられます。ただで預かる人は自分の物と同じ程度に注意すれば足り、お金をもらう人はより高い注意を払います。預けた人はいつでも返してもらえますが、預かった人は、期限があれば、やむを得ない事情がない限り早めに返すことはできません。

寄託は有償でも無償でも合意だけで成立し、受け取る前の解除は寄託者からはいつでも、無報酬の受寄者からは書面によらない場合に限りできます
寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる諾成契約です(657条)。出題当時の旧657条は物の受取りで成立する要物契約としていましたが、平成29年改正で諾成契約になりました。報酬の定めも要件ではなく、無償の寄託も合意だけで効力を生じます。受寄者は特約がなければ報酬を請求できません(665条・648条1項)。諾成契約になったので、受け取る前の離脱を657条の2が定めています。寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで解除でき、受寄者に損害があれば賠償します(同条1項)。無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで解除できますが、書面による寄託ではできません(同条2項)。有償の受寄者にはこの解除権がないので、書面によらない有償寄託でも、受寄者は受け取り前に解除できません。
無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意で足り、有償の受寄者と営業の範囲内で寄託を受けた商人は善良な管理者の注意を負います
無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負います(659条)。好意で預かる人に重い責任を負わせないためです。有償の受寄者は、特定物の保存の原則どおり善良な管理者の注意を負います(400条)。注意の程度は報酬の有無で分かれ、無報酬の受寄者に善良な管理者の注意が求められるわけではありません。商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合は、報酬を受けないときでも善良な管理者の注意を負います(商法595条)。注意義務の規定は任意規定なので、有償でも自己の財産に対するのと同一の注意で足りるとする合意は有効です。委任の受任者が無償でも善良な管理者の注意を負う(644条)のと対比されます。
受寄者は承諾なく寄託物を使用できず、第三者に保管させるには承諾かやむを得ない事由が要り、権利を主張する第三者の訴えは寄託者に通知します
受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができません(658条1項)。報酬の有無で区別はありません。受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができません(同条2項)。出題当時の旧658条1項は第三者の保管にも寄託者の承諾だけを求めていましたが、現行法ではやむを得ない事由があれば承諾がなくても第三者に保管させられます。適法な再受寄者は、寄託者に対して受寄者と同一の権利を有し義務を負うので(同条3項)、保管費用の償還を寄託者に請求できます。寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に訴えを提起したときなどは、受寄者は、寄託者が既に知っている場合を除き、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければなりません(660条1項)。複数の者が寄託した同じ種類・品質の物を混合して保管するには、各寄託者の承諾が要ります(665条の2第1項)。
寄託者は物の性質や瑕疵による損害を賠償し、受寄者は必要な費用・債務について委任の規定で償還や代弁済を求められます
寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければなりません。ただし、寄託者が過失なくその性質若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは免れます(661条)。有償・無償で区別はありません。委任の646条から648条まで、649条、650条1項・2項は寄託に準用されます(665条)。受寄者は、保管に必要と認められる債務を負担したときは、報酬の有無にかかわらず、寄託者に代弁済を請求し、弁済期前なら担保を供させることができます。有償寄託で中途で終わったときは、648条3項により既にした履行の割合に応じて報酬を請求でき、受寄者の責めに帰することができない事由で返還できなくなった後の期間の報酬は請求できません。有償寄託の報酬の支払と寄託物の返還は同時履行の関係に立ちます(大判明治36年10月31日)。

寄託者はいつでも返還を請求でき、受寄者は期限があればやむを得ない事由がない限り期限前に返還できず、消費寄託も原則は同じです
当事者が返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができます(662条1項)。寄託は寄託者の利益のための契約だからです。期限前の請求で受寄者に損害が生じれば、寄託者が賠償します(同条2項)。受寄者は、返還の時期を定めなかったときはいつでも返還できますが(663条1項)、時期の定めがあるときは、やむを得ない事由がなければ期限前に返還できません(同条2項)。保管料を返還したことや、通知後相当の期間が経過したこと、寄託者が死亡したことは、期限前に返還できる理由になりません。受寄者が寄託物を消費できる消費寄託にも、現行法では寄託の規定が適用され、消費貸借の規定は590条・592条(666条2項)と、預貯金についての591条2項・3項(同条3項)だけが準用されます。そのため、返還時期の定めのない消費寄託の寄託者は、相当の期間を定めた催告なしに、いつでも返還を請求できます。返還時期の定めのある消費寄託でも、出題当時の旧666条は消費貸借の591条を準用していましたが、現行法では662条1項により寄託者はいつでも返還を請求できます。預金契約による金銭の受寄者は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還できます(666条3項・591条2項)。

- 成立(657条)有償・無償とも諾成。報酬の定めは要りません
- 受取り前の解除(657条の2)寄託者はいつでも(損害賠償)。無報酬の受寄者は書面によらない場合のみ
- 注意義務無報酬は自己の財産に対するのと同一の注意(659条)、有償・商人は善良な管理者の注意
- 使用・第三者の保管(658条)使用は承諾が必要。第三者の保管は承諾かやむを得ない事由
- 混合寄託(665条の2)各寄託者の承諾が要ります
- 寄託者の損害賠償(661条)性質・瑕疵による損害。過失なく知らないか受寄者が知っていれば免責
- 返還(662条・663条)寄託者はいつでも請求。受寄者は期限があればやむを得ない事由が必要
- 消費寄託(666条)寄託の規定が原則。預貯金は受寄者がいつでも返還できます
民法 第657条(寄託)
寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法 第657条の2第2項無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
民法 第658条第2項受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
民法 第659条(無報酬の受寄者の注意義務)
無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
民法 第662条第1項当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
民法 第663条第2項返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
試験ではこう問われる
- 寄託は有償・無償とも諾成契約で、報酬の定めは要らない(657条)
- 無報酬の受寄者は受け取り前に解除できるが、書面による寄託ではできず、有償の受寄者にはこの解除権がない(657条の2第2項)
- 無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意で足り、有償の受寄者は善良な管理者の注意を負う(659条・400条)
- 受寄者は承諾なく寄託物を使用できず、第三者に保管させるには承諾かやむを得ない事由が要る(658条)
- 寄託者は返還時期の定めがあってもいつでも返還を請求でき、受寄者は期限があればやむを得ない事由がなければ期限前に返還できない(662条1項・663条2項)
- 寄託を受けて動産を保管している受寄者は178条の第三者に当たらず、引渡しを受けていない譲受人も受寄者に所有権の取得を主張できる(178条。R8 問7 ア ○、R3 問8 ウ ○)

