売買の付随規定と買戻し(573条〜581条)ばいばいのふずいきていとかいもどし
売買の付随規定とは、代金の支払期限・支払場所、果実と代金の利息の帰属、代金の支払拒絶といった売買に付随する事項を定めた規定のことで(573条〜578条)、買戻しとは、不動産の売主が売買契約と同時にした特約により代金と契約の費用を返還して売買を解除することです(579条〜581条)。
売買では、代金をどこで払うのか、引渡しまでに実った果物や家賃は誰のものか、代金の利息はいつから付くのか、といった細かい問題が必ず出てきます。民法はこれを573条以下でまとめて決め、争いにならないようにしています。また、土地を売ってお金を借り、後で代金を返して土地を取り戻すという使い方ができるように、売主が売買を解除して不動産を取り戻せる買戻しの制度も置いています。

代金の支払場所は、引渡しと同時に払うときに限り引渡しの場所になります
574条は、売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所で支払わなければならないと定めています。これは引渡しと代金の支払が同時に行われる関係があるときの規定なので、買主が先に引渡しを受けてしまった後の代金は、弁済の場所の一般原則(484条1項)により、売主の現在の住所で支払います(大判昭和2年12月27日)。引渡しに期限があるときは、代金の支払にも同じ期限を付けたものと推定されます(573条)。「売買の目的物の引渡しについて期限がある場合には、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定される」という肢(R8 問18 イ)は正しく、「売買の目的物の引渡しについて期限があるときは,代金の支払についても同一の期限を付したものとみなされる」という肢(R3 問18 ア)は誤りです。
引渡し前の果実は売主のものですが、買主は引渡しの日から代金の利息を払います
575条1項は、まだ引き渡されていない目的物が生じた果実は売主に帰属すると定め、同条2項は、買主は引渡しの日から代金の利息を支払う義務を負い、代金の支払に期限があるときは期限まで利息を払わなくてよいと定めています。引渡しまでの保管費用と果実、代金の利息を大づかみに対応させて、細かい清算をしないで済ませる趣旨です。この趣旨から、売主が引渡しを遅らせていても、代金を受け取っていない限り果実を取得できますが(大連判大正13年9月24日)、代金の支払を受けた後は、売主は代金の利用と果実の両方を得ることになるので果実を取得できません(大判昭和7年3月3日)。「売主が売買の目的物の引渡しを遅滞しているときは,買主に対して現実に目的物の引渡しがされていなくとも,売買の目的物から生じた果実は買主に帰属する」という肢(R3 問18 ウ)は誤りです。代金の支払期日を過ぎていても、引渡しを受けるまでの利息は払わなくてよく、逆に引渡しが先にされても、代金の支払に期限があれば期限までの利息は払わなくてよいので、「買主は、売買の目的物の引渡しが先履行とされた場合において、代金の支払について期限があるときは、売買の目的物の引渡しの日から代金の支払期限が到来するまで、代金の利息を支払う義務を負う」という肢(R8 問18 オ)は誤りです。
権利を失うおそれや抵当権等の登記があるとき、買主は代金の支払を拒めます
売買の目的について権利を主張する者がいるなどで、買主が権利を取得できず又は失うおそれがあるときは、買主は危険の程度に応じて代金の支払を拒めます(576条。売主が相当の担保を供したときを除きます)。この規定は559条で賃貸借などの有償契約に準用され、判例は、賃貸権限のない者から不動産を借りた者が所有者から明渡しを求められたときは、それ以後の賃料の支払を拒絶できるとしています(最判昭和50年4月25日)。また、買い受けた不動産に契約の内容に適合しない抵当権・先取特権・質権の登記があるときは、買主は消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒めます(577条)。平成29年改正後の577条は「契約の内容に適合しない」登記に限っているので、抵当権の負担を代金に織り込んで買った場合は拒めません。
借地上の建物を売った売主は、敷地の賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得る義務を負います
判例は、賃借地上にある建物の売買では、特別の事情のない限り、売主は建物とともに敷地の賃借権も譲渡したものと解すべきで、売主はその賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得る義務を負うとしています(最判昭和47年3月9日)。建物は敷地を使う権利がなければ価値を保てないからです。
買戻しは、売買と同時にした特約で、10年以内に代金と契約費用を返して売買を解除する制度です
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合はその金額)と契約の費用を返還して、売買を解除できます(579条前段)。合意した金額は買戻しの特約の登記の申請情報にもなるので、「甲建物の所有権を目的として買戻しの特約が付された売買契約が締結され、買主が実際に支払った代金に代えて別途合意により定めた金額により買い戻せるものとした場合において、当該買戻しの特約の登記を申請するときは、その合意により定めた金額を申請情報の内容とすることはできない」という肢(R5 午後 問20 ア)は誤りです。別段の意思表示がなければ、不動産の果実と代金の利息は相殺したものとみなされるので(同条後段)、買主は買戻しまでに取得した果実を売主に返還する必要はありません。買戻しの期間は10年を超えることができず、長い期間を定めても10年になり(580条1項)、期間を定めたときは後で伸長できず(同条2項)、定めなかったときは5年以内に買い戻さなければなりません(同条3項)。不動産の帰属を長く不安定にしないためです。もっとも、登記の申請では、10年を超える期間を登記官が10年に引き直して登記するわけではないので、「買戻しの期間を 15 年と合意する旨を記載した登記原因を証する情報を添付し、買戻しの期間を 15 年として申請情報を提供してした買戻しの特約の登記の申請をしても、買戻期間を 10 年と引き直して買戻しの特約の登記がされる」という肢(R5 午後 問20 エ)は誤りです。売買契約と同時に買戻しの特約を登記すれば、買戻しを第三者に対抗できます(581条1項)。「買戻しの特約の登記は、付記登記によってされる」という肢(R4 午後 問12 イ)は正しいです。
- 特約の時期売買契約と同時にしなければなりません(579条)
- 返還する金額買主が支払った代金(別段の合意があればその額)と契約の費用です(579条前段)
- 果実と利息別段の意思表示がなければ相殺したものとみなします(579条後段)
- 期間10年を超えられず、伸長もできません。定めがなければ5年以内です(580条)
- 対抗要件売買契約と同時の買戻特約の登記です(581条1項)

民法 第575条第1項まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
民法 第575条第2項買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
民法 第577条第1項買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
民法 第579条(買戻しの特約)
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第五百八十三条第一項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
民法 第580条第1項買戻しの期間は、十年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
試験ではこう問われる
- 引渡しに期限があるときは、代金の支払にも同一の期限を付したものと「推定」される(573条。R8 問18 イ ○、「みなされる」とした R3 問18 ア ×)
- 引渡し前の果実は売主に帰属し、売主が引渡しを遅滞していても買主に帰属しない(575条1項。R3 問18 ウ ×)
- 買主は引渡しの日から代金の利息を払うが、代金の支払に期限があれば期限までは払わなくてよい(575条2項。R8 問18 オ ×)
- 契約の内容に適合しない抵当権等の登記があれば、買主は消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒める(577条)
- 買戻しで返還するのは代金(別段の合意があればその金額)と契約の費用で、合意した金額は買戻しの特約の登記の申請情報になる(579条。R5 午後 問20 ア ×)
- 買戻しの期間は10年を超えられず、10年を超える期間で申請しても10年に引き直して登記されるわけではない(580条1項。R5 午後 問20 エ ×)
- 買戻しの特約の登記は付記登記でされ、登記をすれば買戻しを第三者に対抗できる(581条1項。R4 午後 問12 イ ○)

