地方公共団体の組織(長・議会・直接請求)ちほうこうきょうだんたいのそしき
地方公共団体の組織とは、議事機関としての議会を置き(93条1項)、長と議会の議員および法律の定めるその他の吏員を住民が直接選挙する(93条2項)という憲法上の仕組みと、条例の制定改廃請求や解職請求といった地方自治法上の直接請求の制度からなります。長と議会がともに住民から選ばれる二元代表制が、国の議院内閣制と異なる点です。
国では、国民が選ぶのは国会議員だけで、内閣総理大臣は国会が選びます。ところが市町村や都道府県では、市長や知事も議会の議員も、住民が別々の選挙で直接選びます。長と議会がともに住民の代表として向き合う二元代表制です。憲法はこの直接選挙と議会の設置を要求していますが、住民が長の解職を求めたり条例の制定を請求したりする直接請求の制度は、憲法ではなく地方自治法が定めたものです。どこまでが憲法の要請なのかが、この用語の中身です。

議事機関としての議会は憲法上の要請ですが、町村総会も許されます
93条1項は議事機関としての議会を置くことを求めます。もっとも、住民が直接に議事を行う総会であれば、住民自治をより徹底するものですから許容されます。小規模な普通地方公共団体で議会に代えて選挙権者全員による総会を設けても、93条1項に反しません。他方で、議会を単なる諮問機関に格下げすることは許されません。議事機関であることが憲法の要求ですから、議決権を奪うことは核心を侵します。
- 議会議事機関として設置される(93条1項)。条例の制定改廃、予算の議決、長の不信任決議などを行う
- 長住民の直接選挙で選ばれる。議会の解散権と再議に付す権限をもつ
- 直接請求条例の制定改廃請求、事務の監査請求、議会の解散請求、議員・長・主要公務員の解職請求。地方自治法が定める
- 住民監査請求・住民訴訟違法または不当な財務会計上の行為について、監査を求め、訴えを提起する
直接選挙が要求されるのは、長・議員・法律の定めるその他の吏員です
93条2項の「法律の定めるその他の吏員」をどう読むかが問われます。選挙管理委員会の委員を公選とすることは、93条2項の要請ではありません。この文言は、直接選挙とする対象を法律で追加できるという趣旨であって、特定の職について公選とすることを憲法が義務づけたものではありません。長と議員については憲法が直接に要求しています。選挙管理委員会の委員や教育委員会の委員を公選とするかどうかは、立法政策の問題です。

解職請求は法律上の制度で、93条2項の要請ではありません
地方自治法が定める直接請求の制度は、憲法が直接に要求するものではありません。解職請求があった場合にその可否を住民投票で決めることも、93条2項の要請ではありません。住民自治を具体化するためにどのような直接民主制的な制度を導入するかは、立法府の裁量に委ねられているからです。もっとも、これらの制度は住民自治の現れとして、地方自治の本旨に沿うものと評価されています。条例の制定改廃の直接請求は、団体自治ではなく住民自治の現れです。「地方自治の本旨のうち住民自治の原則とは、地方の政治は、国から独立した団体に委ねられ、その団体の意思と責任において行われるべきであるとするものである」という肢(R7 問3 ア)は、団体自治の内容を住民自治として述べており誤りです。

地方議会の議員に、免責特権は及びません
51条の免責特権は国会議員について定められたものです。最大判昭和42年5月24日は、国会に広範な議院自律権と免責特権が認められるからといって、その理をそのまま地方議会に当てはめ、地方議会議員の発言にも免責特権を憲法上保障していると解すべき根拠はないとしました。地方議会にも一定の自律権は認められますが、憲法が明文で保障した特権を、解釈によって地方議会議員に及ぼすことはできません。不逮捕特権についても同じで、地方議会の議員は会期中も通常どおり逮捕されます。国会議員については、「国会議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された国会議員は、当該国会議員の属する議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」という肢(R4 問3 ア)が正しいとおり、50条が不逮捕特権を定めています。なお、議員に対する懲罰については、最大判令和2年11月25日(岩沼市議会事件)が出席停止も司法審査の対象になるとしました。
長と議会は、抑制と均衡の関係に立ちます
長と議員がともに住民から直接選ばれる二元代表制のもとでは、両者の対立を調整する仕組みが必要になります。地方自治法は、議会による長の不信任決議と、これに対する長の議会解散権を定め、また議決に異議がある長が再議に付す制度を設けています。国の議院内閣制と似た仕組みですが、長の地位が議会の信任に由来しない点で性格が異なります。どちらも住民から直接の正統性を得ているため、対立の解決は最終的に住民の判断に委ねられる、という発想です。条例の制定改廃や予算の議決は議会の権限であり、長がこれを単独で行うことはできません。
定住外国人に地方選挙権を法律で与えることは、禁止されていません
93条2項の「住民」の意味も問われます。「参政権は、その性質上国民にのみ認められる権利であるから、その居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至った在留外国人について、当該地方公共団体の長に対する選挙権を付与することは、憲法上許されない」という肢(R7 問1 ア)は誤りです。最判平成7年2月28日(定住外国人地方選挙権訴訟)は、同項の「住民」は日本国民を意味するとして憲法上の権利を否定しつつ、永住者等で当該地方公共団体と特段に緊密な関係をもつに至った者について、法律で選挙権を付与することは憲法上禁止されていないとしました。憲法上の要請ではないが禁止もされていない、という位置づけです。地方公共団体の政治が住民の日常生活に密接に関わることが、この結論を支えています。

日本国憲法 第93条地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
試験ではこう問われる
- 議事機関としての議会の設置は憲法上の要請で(93条1項)、町村総会は許されるが、議会を諮問機関にすることは許されない
- 長と議員は住民が直接選挙するが(93条2項)、選挙管理委員会の委員の公選や解職請求の制度は憲法上の要請ではない
- 条例の制定改廃の直接請求は住民自治の現れで、国から独立した団体が自らの意思と責任で政治を行うのは団体自治の内容である(R7 問3 ア ×)
- 地方議会の議員には、国会議員の不逮捕特権(50条。R4 問3 ア ○)や免責特権は憲法上保障されていない(最大判昭和42年5月24日)
- 93条2項の「住民」は日本国民を意味するが、永住者等に法律で地方選挙権を付与することは憲法上禁止されていない(最判平成7年2月28日。R7 問1 ア ×)

