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立法裁量と審査密度りっぽうさいりょう

憲法 第13章 憲法訴訟・憲法保障 過去問で18肢

立法裁量とは、憲法の規定を具体化する立法について、立法府に認められる判断の幅です。審査密度とは、裁判所がその立法の合憲性をどこまで踏み込んで審査するかの度合いで、社会権・選挙制度・租税の分野では広い裁量が認められ、審査密度はその分だけ下がります。

学校の予算をどの部活にいくら配るかは、生徒会の判断に委ねるほかなく、先生が細かく口を出すことは少ないでしょう。ただ、特定の部だけを理由なく締め出せば、さすがに見過ごされません。国の年金制度や選挙制度、税制も同じで、憲法は方向だけを示して具体的な設計を国会に委ねているので、裁判所は国会の判断を尊重して緩やかに審査します。それでも、裁量にも限界があり、逸脱や濫用があれば違憲になります。

国会議事堂と裁判所が向かい合う場面。国会側に先生が国会議員役(札「国会:立法裁量」)が「年金制度」「選挙制度」「税制」の三つの設計図を広げている。裁判所側に裁判官の男性(札「裁判所:審査密度」)が虫眼鏡を持つが、虫眼鏡の倍率は低く「著しく合

社会権の具体化には、広い立法裁量が認められます

社会保障の制度設計は、財源の配分という政策判断を伴います。もっとも、裁量が広いことは平等原則の審査を免れることを意味しません。立法裁量の枠組みは最大判昭和57年7月7日(堀木訴訟)が確立したものですが、最判平成19年9月28日(学生無年金障害者訴訟)は、25条の趣旨にこたえて制定された法令が受給権者の範囲や支給要件について何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いをするときは、別に14条違反の問題を生じうるとしています。もっとも堀木訴訟自体は併給調整の規定を14条に違反しないとしており、「障害福祉年金の受給者は児童扶養手当の受給資格を欠く旨の規定は、これにより障害福祉年金受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関し合理的理由のない不当な差別が生じることから、違憲である」という肢(R4 問2 ア)は誤りです。在留外国人の処遇についても同じで、最判平成元年3月2日(塩見訴訟)は、社会保障上の施策において在留外国人をどう処遇するかは立法府の広い裁量に委ねられ、国は特別の条約の存しない限りその政治的判断で決定できるとしました。「障害福祉年金支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する」という肢(R5 問1 ア)は正しいです。

  • 社会権の具体化25条の趣旨にこたえてどのような立法措置を講ずるかは立法府の広い裁量。著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるをえない場合に限り違憲
  • 選挙制度の仕組み47条が法律に委ねており、国会の広い裁量。投票価値の平等は憲法上の要請だが、他の政策的考慮との調和が図られる
  • 租税立法課税要件の定めには専門技術的な判断と政策的な判断を要するため、著しく不合理でない限り合憲
  • 国家賠償・刑事補償17条・40条が「法律の定めるところにより」とするが、制度設計が全面的に裁量に委ねられるわけではない
先生が最高裁判所の裁判官役(札「最高裁判所」)で法壇に座り、左に年金を受け取れない学生の男性(札「学生無年金障害者」)が「年金制度の設計は不当だ」の紙を掲げる。先生の机に二枚の札。「25条:どのような立法措置を講ずるかは立法府の広い裁量→著

選挙制度の仕組みの決定にも、広い裁量が認められます

47条は選挙区や投票の方法を法律事項とし、国会に広い裁量を与えています。投票価値の平等も選挙権の平等に含まれますが、国会が定めた選挙制度における投票価値の不平等も、国会の裁量権の行使として合理的と認められれば14条に違反しません。政党を媒介とする制度設計についても同じで、最大判昭和58年4月27日は、憲法が政党の存在を当然に予定していることを踏まえ、名簿式比例代表制の採用を国会の裁量の範囲内としました。「政党は、憲法には直接規定されていないが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないから、憲法は政党の存在を当然に予定している」という肢(R7 問2 イ)は正しいです。選挙制度の分野では、投票価値の平等が唯一絶対の基準ではなく、他の政策的な考慮との調和が図られると理解されています。

裁量が広くても、限界を超えれば違憲になります

広い裁量が認められる分野でも、違憲になる余地がないわけではありません。極端な不平等を生じさせる場合に例外的に違憲となるという判示は、参議院議員選挙の定数不均衡に関する最大判昭和39年2月5日のものであり、衆議院議員選挙に関するものではありません。衆議院については、最大判昭和51年4月14日以来、合理的期間を経過してもなお是正されない場合に違憲となるという枠組みがとられています。「ある議員定数配分の下で施行された国会議員の選挙において投票価値の平等につき違憲状態が生じていたとしても、その選挙が実施されるまでにその定数配分の見直しが行われなかったことが国会の裁量権の限界を超えないと、憲法に違反しないと認められる場合がある」という肢(R4 問2 ウ)は正しいです。裁量の限界を超えたかの判断は慎重で、最大判平成11年11月10日は、政見放送を候補者届出政党に限ることが単なる程度の違いを超える差異を設けるものであることは認めつつ、導入の理由に全く根拠がないとはいえず、他の選挙運動は十分に行えることなどから、裁量の限界を超えないとしました。

先生が憲法の先生役(札「選挙制度と裁量の限界」)で黒板の前に立ち、黒板に二本の柱。左「参議院 最大判昭39.2.5:極端な不平等を生じさせる場合に例外的に違憲」、右は深紅の枠で「衆議院 最大判昭51.4.14以来:違憲状態+合理的期間を経過

租税立法には、政策的・技術的な裁量が認められます

最大判昭和60年3月27日(サラリーマン税金訴訟)は、租税法の定立について立法府の政策的・技術的な判断に委ねるほかなく、著しく不合理であることが明らかでない限り違憲とならないとしました。もっとも、法的安定に関わる場面では具体的な検討が行われます。最判平成23年9月22日は、暦年途中の租税法規の変更とその年初からの適用について、納税者の地位の性質、変更の程度、変更により保護される公益の性質などの諸事情を総合的に勘案して84条適合性を判断するとしました。裁量を広く認めながら、考慮すべき事情を列挙して個別に判断するという形になっています。

国家賠償の制度設計の裁量は、全面的なものではありません

17条は「法律の定めるところにより」と書いていますが、これは白紙委任ではありません。判例は、17条は公務員のどのような行為によりいかなる要件で賠償責任を負うかを立法府の政策判断に委ねたものであって、無制限の裁量権を付与するといった白紙委任を認めたものではないとしています。17条は、賠償責任を免除・制限する法律が立法裁量を逸脱するときはこれを違憲無効とする効力をもつ規定であり、最大判平成14年9月11日(郵便法違憲判決)は、書留郵便物について郵便業務従事者の故意または重過失による不法行為にまで免責を及ぼす規定を、立法裁量の範囲を逸脱するものとして違憲としました。

先生が最高裁判所の裁判官役(札「最高裁判所 大法廷」)で法壇に座り、机の上に「郵便法:書留郵便物の損害賠償責任を免除・制限」の条文。左に書留を紛失された男性(札「書留の差出人」)。先生の机に二枚の札。「17条『法律の定めるところにより』:要

裁量の広狭は、立法事実の審査の深さとして現れます

立法裁量が広いと述べることは、立法府が前提とした事実を裁判所が尊重するという意味をもちます。どの審査基準を用いるかという問題と、立法者の事実判断をどこまで尊重するかという問題は、表裏の関係にあります。裁量が広い分野だからといって事実の検討を省いてよいわけではなく、裁量の逸脱を主張する側が、制度の前提が崩れていることを示す資料を提出することになります。

最大判昭和57年7月7日(堀木訴訟)

憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 25条の具体化は立法府の広い裁量に委ねられる(最大判昭和57年7月7日・堀木訴訟)が、合理的理由のない差別的取扱いには14条違反の問題が生じ得る。併給調整の規定は14条に違反しない(R4 問2 ア ×)
  2. 在留外国人を障害福祉年金の支給対象から除外することは、立法府の裁量の範囲に属する(最判平成元年3月2日・塩見訴訟。R5 問1 ア ○)
  3. 憲法は政党の存在を当然に予定しており、名簿式比例代表制の採用は国会の裁量の範囲内である(最大判昭和58年4月27日。R7 問2 イ ○)
  4. 定数配分に違憲状態が生じていても、見直しをしなかったことが国会の裁量権の限界を超えなければ違憲とはされない(R4 問2 ウ ○)
  5. 租税立法は、著しく不合理であることが明らかでない限り違憲とならない(最大判昭和60年3月27日)
  6. 17条は立法府への白紙委任ではなく、裁量を逸脱した免責規定は違憲となる(最大判平成14年9月11日・郵便法違憲判決)

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