選挙制度(小選挙区比例代表並立制・名簿式)せんきょせいど
選挙制度とは、議員の定数や選挙区、投票の方法など、選挙人の投票をどのように議席に結びつけるかを定めた仕組みで、憲法47条により法律で定めるものとされています。現行法では、衆議院は小選挙区と拘束名簿式比例代表を組み合わせた小選挙区比例代表並立制、参議院は選挙区と非拘束名簿式比例代表で構成されます。
衆議院の選挙では、投票所で二枚の投票用紙を渡されます。一枚には候補者の名前を、もう一枚には政党の名前を書きます。候補者で一人を選ぶ小選挙区と、政党の得票に比例して議席を配る比例代表を組み合わせているからです。憲法47条は選挙の仕組みを法律に任せ、どの制度にするかを国会に委ねました。そのため、政党を中心にした仕組みが立候補や選挙運動の自由とぶつかるとき、国会の裁量の範囲に収まっているかが争われます。

選挙制度の具体的な仕組みは、法律で定めるものとして国会の広い裁量に委ねられています
選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定めるものとされています(憲法47条)。憲法43条2項も両議院の議員の定数を法律で定めるとしており、最大判平成11年11月10日(衆議院小選挙区比例代表並立制の合憲性)は、国会はその裁量により、公正かつ効果的な代表を選出するという目標を実現するために適切な選挙制度の仕組みを決定することができ、その定めが憲法上の要請に反して裁量の限界を超える場合に初めて違憲になるとしました。現在、衆議院は小選挙区289と比例代表176の小選挙区比例代表並立制、参議院は都道府県等を単位とする選挙区と全国を単位とする比例代表で構成されます。衆議院の比例代表は政党の届け出た順位に従う拘束名簿式、参議院の比例代表は候補者個人への投票も政党の得票に算入する非拘束名簿式です。
- 小選挙区制1区1人。二大政党化と政権の安定につながる一方、死票が多く少数者の意思が反映されにくい
- 比例代表制得票に比例して議席を配分する。死票が少ない一方、小党分立を招き政権が不安定になりやすい
- 重複立候補小選挙区と比例代表の両方に立候補できる。小選挙区で落選しても惜敗率により復活当選しうる
- 非拘束名簿式有権者は政党名でも候補者名でも投票でき、候補者名の得票数で名簿の順位が決まる
小選挙区制と比例代表制には、政権の安定と民意の反映という長所短所があります
小選挙区制は一つの選挙区から一人を選ぶ多数代表法です。有力な二つの政党以外の候補者は当選の見込みが乏しく、有権者も当選の可能性のある候補者に票を集めるため、二大政党化が進んで一方の政党が単独で過半数を占めやすくなります。その反面、一議席しかないため次点以下の票はすべて議席に結びつかず、死票が多くなります。比例代表制は各政党の得票数に比例して議席を配分するため、得票率と議席率がほぼ一致し、死票は最小限にとどまります。その反面、少数政党も議席を得るので一つの政党が過半数を占めにくくなります。これに対し中選挙区制は一つの選挙区から3人から5人程度を選び、選挙人は候補者一名だけを書いて投票する少数代表法です。選挙区で2割から3割の票を得れば当選できるため少数派にも議席が回り、一つの政党が過半数を占めて政権が安定する効果は働きません。複数名が当選する分だけ議席に結びつく票が増えるので、死票は小選挙区制より少なくなります。死票の多寡と政権の安定は、どの制度でも裏表の関係にあります。

名簿式比例代表制は直接選挙の原則に反しません
有権者が政党名を書く仕組みは、選挙人が直接に当選人を選ぶといえるかが問題になります。「政党その他の政治団体にあらかじめ候補者の氏名及び当選人となるべき順位を定めた名簿を届け出させた上、選挙人が政党その他の政治団体を選択して投票し、その得票数の多寡に応じて当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式も、直接選挙に当たる」という肢(R7 問2 オ)は正しいです。最大判平成11年11月10日は、衆議院の拘束名簿式比例代表制について、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはなく、同一順位の重複立候補者の順位が小選挙区選挙の結果を待って確定することも、結局は投票の結果で決まるのだから直接選挙に当たらないとはいえないとして、憲法43条1項・15条1項・3項に違反しないとしました。最大判平成16年1月14日(参議院非拘束名簿式比例代表制の合憲性)も、非拘束名簿式について同じ枠組みで合憲としました。「政党は、憲法には直接規定されていないが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないから、憲法は政党の存在を当然に予定している」という肢(R7 問2 イ)は正しく、国会が政党の国政上の重要な役割を踏まえて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、国会の裁量の範囲内です。政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体ですから、政党を通して国民の意思を国政に映す仕組みを選ぶことは、国会が正当に考慮できる目的だからです。
候補者届出政党にだけ選挙運動を認めることも立法裁量の範囲です
最大判平成11年11月10日は、選挙運動をいかなる者にいかなる態様で認めるかも選挙制度の仕組みの一部として国会が裁量で決められるとし、候補者届出政党に所属する候補者とそれ以外の候補者との間に選挙運動の差異が生じることは避け難いから、その差異が一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達している場合に初めて裁量の逸脱になるとしました。自動車、拡声機、文書図画、新聞広告、演説会の差異は、無所属の候補者も自ら行えるので違憲とはいえません。政見放送を候補者届出政党にだけ認めることは単なる程度の違いを超える差異だと疑問を示しつつ、政見放送は選挙運動の一部にすぎず、その余の選挙運動は無所属の候補者も十分に行えるとして、裁量の限界を超えていないとしました。政見放送そのものの扱いについては、最判平成2年4月17日(政見放送削除事件)は、他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する等の政見放送の品位を損なう言動を禁じた公職選挙法150条の2に違反する言動がそのまま放送される利益は法的に保護された利益とはいえないとして、削除しても不法行為法上の法的利益の侵害はないとしました。テレビの政見放送は直接かつ即時に全国の視聴者に届き強い影響力をもつため、そのような言動が流れる弊害を防ぐ趣旨の規定だからです。

重複立候補できる政治団体には要件があり、惜敗率による復活当選も合憲です
立候補の自由が選挙権の自由な行使と表裏の関係にある重要な基本的人権であることは最大判昭和43年12月4日が説くところで、国会の裁量に限界があることも否定されませんが、重複立候補には法律上の限定があります。衆議院で重複立候補できるのは、候補者届出政党の届け出た候補者であって、かつ衆議院名簿届出政党等の名簿に登載された者に限られ、これらの届出をできる政治団体は、所属国会議員が5人以上であること、直近の国政選挙の得票率が2パーセント以上であること、又はその選挙で一定数以上の候補者を立てることのいずれかを満たす必要があります(公職選挙法86条・86条の2)。最大判平成11年11月10日は、重複立候補できる者を両方の要件を満たす政党等に所属する者に限ることには相応の合理性があるとしました。惜敗率による復活当選についても、小選挙区で落選した者が比例代表で当選するのは不合理だという批判がありますが、同判決は、小選挙区選挙と比例代表選挙を組み合わせた一つの選挙制度として見れば不合理とはいえず、同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるかどうかは国会が裁量で決められる事項だとしました。

名簿からの除名の審査は形式的事項にとどまります
最判平成7年5月25日(日本新党繰上補充事件)は、政党その他の政治団体は結社の自由(21条1項)に基づいて結成され、議会制民主主義を支える存在として高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をすることのできる自由を保障されなければならないとし、除名が有効に存在するかまで選挙長や選挙会が審査すれば、政党等の意思に反して行政権が介入することになって相当でないと述べました。公職選挙法が審査の対象を形式的事項にとどめているのは、政党等の内部的自律権をできるだけ尊重したものです。その結果、除名が無効であっても、繰上補充による当選人の決定は有効とされます。投票価値の平等の問題は議員定数不均衡で扱います。
最大判平成11年11月10日(衆議院小選挙区比例代表並立制の合憲性)選挙制度の仕組みの具体的決定は、国会の広い裁量にゆだねられているところ、重複立候補制は、政策本位、政党本位の選挙制度をめざすという国会の裁量の範囲内のものである。
試験ではこう問われる
- 選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定め(47条)、選挙制度の仕組みの決定は国会の広い裁量に委ねられる(最大判平成11年11月10日)
- 小選挙区制は政権の安定と死票の多さ、比例代表制は死票の少なさと小党分立が裏表の関係にある
- 政党の届け出た名簿の順位に従って当選人を決める比例代表の方式も、選挙人の総意で当選人が決まるので直接選挙に当たる(最大判平成11年11月10日。R7 問2 オ ○)
- 憲法は政党の存在を当然に予定しており、政党を媒体とする名簿式比例代表制の採用は国会の裁量の範囲内である(R7 問2 イ ○)
- 候補者届出政党にだけ政見放送などの選挙運動を認めることも、立法裁量の限界を超えない(最大判平成11年11月10日)
- 名簿登載者の除名について選挙長・選挙会の審査は形式的事項に限られ、除名が無効でも繰上補充による当選人の決定は有効である(最判平成7年5月25日)

