登記の実行と完了とうきのじっこうとかんりょう
受付の順に登記官が登記記録に記録し、完了すると登記完了証と登記識別情報を通知する一連の流れです。完了までにできること、完了したら誰に何が通知されるか、完了した登記をどう正すかが肢で突かれます。
登記の実行は、受け付けた申請を登記官が審査し、登記記録に登記事項を記録することで、不動産登記法20条により同一の不動産の申請は受付番号の順に処理されます。登記の完了はその記録が済んだ時点で、規則181条により登記官が申請人に登記完了証を交付して完了を通知し、申請人自らが登記名義人になる場合は21条の登記識別情報も通知します。完了までの間は申請の取下げや受領証の請求ができ、完了後は取下げができず、誤りは更正や抹消の申請で正します。登記識別情報が通知されるかどうかは、誰が申請人で誰が名義人になるかで決まる論点で、代位や判決、回復や変更の場面で繰り返し問われる定番です。肢で突かれるのは、完了の前後で変わることと、通知の相手です。
不動産登記規則 第181条(登記完了証)
登記官は、登記の申請に基づいて登記を完了したときは、申請人に対し、登記完了証を交付することにより、登記が完了した旨を通知しなければならない。この場合において、申請人が二人以上あるときは、その一人(登記権利者及び登記義務者が申請人であるときは、登記権利者及び登記義務者の各一人)に通知すれば足りる。
前項の登記完了証は、別記第六号様式により、次の各号に掲げる事項を記録して作成するものとする。
一 申請の受付の年月日及び受付番号
二 第百四十七条第二項の符号
三 不動産番号
四 法第三十四条第一項各号及び第四十四条第一項各号(第六号及び第九号を除く。)に掲げる事項
五 共同担保目録の記号及び目録番号(新たに共同担保目録を作成したとき及び共同担保目録に記録された事項を変更若しくは更正し、又は抹消する記号を記録したときに限る。)
六 法第二十七条第二号の登記の年月日
七 申請情報(電子申請の場合にあっては、第三十四条第一項第一号に規定する情報及び第三十六条第四項に規定する住民票コードを除き、書面申請の場合にあっては、登記の目的に限る。)

受付番号の順に実行され、完了までは取下げと受領証の請求ができます
同一の不動産について権利に関する登記の申請が二つ以上あれば登記官は受付番号の順序に従って登記し、同時にされた申請には同一の受付番号が付きます。書面申請をした申請人は「申請に係る登記が完了するまでの間,申請書及びその添付書面の受領証の交付を請求することができる」という肢のとおりです。申請の取下げは完了前に限られ、取下書に「A及びBの印鑑に関する証明書を添付することを要する」という肢は誤りです。代表者が申請した後に完了前にその代表者が破産しても「当該申請は却下される」という肢は誤りで、申請はそのまま実行される扱いです。
完了すると登記完了証が申請人に交付されます
登記完了証は規則181条により申請人に交付され、申請人が二人以上あればその一人、権利者と義務者が申請人なら各一人に通知すれば足ります。交付は規則182条により電子申請では原則として電子情報処理組織で、書面申請では登記所での交付か送付の方法によるものです。代位による登記では規則183条により被代位者にも完了が通知され、債権者Cが相続人Bに代位した相続の登記について「登記官は,B及びCに対して登記が完了した旨を通知しなければならない」という肢は正しい肢に当たります。県が代位して嘱託した相続の登記でも、「被代位者である当該相続人に対し,当該登記が完了した旨を通知しなければならない」という肢のとおり完了通知がされます。
登記識別情報は申請人自らが登記名義人になる場合だけ通知されます
21条の要件は、申請人であることと、その登記で自分が登記名義人になることの両方です。買戻権の行使で元の売主が所有権の登記名義人に戻るときは通知され、「当該登記の申請人であるAに対して登記識別情報は通知されない」という肢は誤りになります。抹消された移転の登記の回復では新たに名義人になるわけではないので、「当該回復の申請人であるAに対して登記識別情報が通知される」という肢は誤りです。判決で売主が単独申請したときの買主は申請人でないので、「Bに対して登記識別情報は通知されない」という肢は正しい肢です。極度額の増額の変更の登記では根抵当権者は既に名義人なので、「Bに対して登記識別情報は通知されない」という肢のとおりで、代位者Cについて「Cに対して登記識別情報が通知される」という肢は誤りです。法定相続分での相続の登記を権利者が単独で更正したときは、「登記識別情報は通知されません」という解答は誤りで、持分を増やした権利者に通知されます。
通知の相手は法定代理人や代表者、特別の委任を受けた代理人です
規則62条により、法定代理人が申請していればその法定代理人に、法人が申請人なら代表者に通知されます。成年後見人が法定代理人として申請し完了したときは「登記識別情報は当該成年後見人に通知される」という肢が正しい肢です。司法書士などの代理人が受け取るには特別の委任が要り、特別の委任がなければ「Aに対して登記識別情報は通知されない」という肢のとおりです。特別の委任を受けた司法書士は送付先を自分の住所にでき、書面で受け取るときは完了から3か月以内に受領しなければ廃棄の対象になります。
完了した登記は申請で正し、通知された情報は次に使います
完了した登記について審査請求ができるのは、登記官が職権で抹消できる管轄違いなどの場合に限られ、「申請の権限を有しない者の申請によりされたものであると判明した場合には,そのことを理由として審査請求をすることができる」という肢は誤りです。所有権を取得した抵当権者が権利者と義務者を兼ねて混同で消えた抵当権を抹消するときは、完了時に通知された登記識別情報を提供します。仮登記名義人が単独で仮登記を抹消するときも同じで、「提供することを要しない」という肢はどちらも誤りです。再使用証明を受けた印紙で納めた登録免許税が多すぎたときは、「当該登記の完了後にその差額について還付を受けることができる」という肢のとおりです。完了した登記の誤りは、更正や抹消の申請で正す流れになります。
不動産登記法 第21条(登記識別情報の通知)
登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 完了までにできることは何か(取下げ、受領証の請求。代表者の破産でも却下されない)
- 登記完了証は誰に交付されるか(申請人。二人以上なら一人、権利者と義務者なら各一人。代位では被代位者にも完了通知)
- 登記識別情報が通知される条件は何か(申請人自らが登記名義人になること。代位者・判決の相手方・回復・変更では通知されない)
- 通知の相手は誰か(法定代理人、法人の代表者、特別の委任を受けた代理人。なければ本人)
- 完了した登記に審査請求できるか(職権抹消できる事由に限る。申請の権限がない者の申請は理由にならない)
この用語が問われた肢
書面申請をした申請人は,申請に係る登記が完了するまでの間,申請書及びその添付書面の受領証の交付を請求することができる。
Aが所有権の登記名義人である甲土地について、AからBへの所有権の移転の登記が申請されている場合において、当該登記が完了する前に当事者の登記申請意思の撤回を理由として当該申請を取り下げるときは、当該申請を取り下げる旨の情報を記載した書面にA及びBの印鑑に関する証明書を添付することを要する。
Aが所有権の登記名義人である甲不動産について、Aが死亡し、その相続人がBである場合において、Bの債権者であるCが、Bに代位して相続を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請し、当該登記が完了したときは、登記官は、B及びCに対して登記が完了した旨を通知しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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