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無権代理・権限外行為と登記むけんだいり・けんげんがいこういととうき

不動産登記 第1章 登記の仕組みと申請の骨格 過去問で4肢

代理権のない者がした行為は本人が追認しなければ効力を生じないという民法113条の原則と、それが登記手続にどう現れるかをまとめた論点です。代理権のない申請の扱い、双方代理や利益相反の可否、財産管理人の権限外の行為に家庭裁判所の許可が要るかが肢で突かれます。

無権代理は、代理権を有しない者が他人の代理人としてした行為で、民法113条により本人が追認しなければ本人に効力を生じません。権限外行為は、代理権はあるがその範囲を超えた行為です。不在者の財産管理人や相続財産の清算人が民法103条の保存・利用・改良の範囲を超える処分をするには、民法28条の家庭裁判所の許可が要ります。登記手続では、代理権限を証する情報で代理権を確かめ、申請の権限のない者の申請は不動産登記法25条4号で却下され、許可が要る行為には許可があったことを証する情報を添えます。登記官は書面に現れた代理権と24条の本人確認で判断するので、肢で突かれるのは許可が要る行為の線引きと、登記の申請そのものが代理の制限に当たるかどうかです。

民法 第113条

(無権代理)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

家の持ち主の椅子は空席で、代理人を名乗る男性が契約書を差し出し、相手方の女性が委任状を確かめるように手を出す。奥に家庭裁判所
代理権のない申請は却下され、財産管理人の権限外の行為には家庭裁判所の許可が要ります
無権代理は追認がなければ効力なし登記申請の双方代理は可権限外の賃貸には家裁の許可

代理権のない申請は却下され、本人の追認で有効になります

登記の申請を代理人がするときは、不動産登記令7条1項2号により委任状や審判書などの代理権限を証する情報を添付します。代理権が実際にない申請は申請の権限を有しない者の申請として25条4号で却下され、代理権限証明情報の提供漏れにとどまるなら25条9号の不備として期間内の補正ができます。登記官は疑いがあれば24条の本人確認で代理権の有無を調べる仕組みです。無権代理人がした売買契約も、本人が追認すれば契約の時にさかのぼって有効になり、追認を示す書面を登記原因証明情報に含めて申請できます。追認の相手は無権代理の相手方で、相手方が追認を知るまでは対抗できないという113条2項の定めも、追認の時期を問う肢の材料です。

登記の申請は双方代理でき、法定代理人の利益相反にも当たりません

民法108条は自己契約と双方代理を無権代理とみなしますが、債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は除かれます。売主と買主の双方から委任を受けた司法書士が移転の登記を申請するのは、既に成立した売買の履行として債務の履行に当たり、双方代理の禁止に触れないというのが判例です。親権者と子の利益が相反する法律行為は家庭裁判所が選任した特別代理人がしますが、その行為に基づく登記の申請は利益相反行為ではありません。特別代理人が契約をした後でも、「Cは,Aを代理して当該法律行為に基づく登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。

財産管理人の権限外の行為には家庭裁判所の許可が要ります

不在者の財産管理人や相続財産の清算人は民法103条の範囲で保存・利用・改良ができ、それを超える処分には民法28条の家庭裁判所の許可が要ります。民法602条の短期賃貸借の期間を超える賃貸は処分に当たり、許される期間は樹木の栽植や伐採を目的とする山林で10年、それ以外の土地で5年です。建物以外の工作物の所有を目的として土地を10年賃貸する賃借権の設定で「相続財産管理人Bの権限外の行為に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報の提供を要しない」という解答は誤りで、許可書を添えます。令和5年4月1日以降は相続財産管理人ではなく相続財産の清算人という名称で、不在者の財産管理人の規定が準用される仕組みです。不在者の財産管理人が賃貸人になる賃借権の設定では、「管理人Bの設定した賃借権」を申請情報の内容としなければならないという肢のとおり、処分の権限のない者が設定した旨を示す決まりです。

表見代理は実体法の救済で、登記官は書面で代理権を判断します

代理権を与えた旨の表示、権限外の行為、代理権消滅後の行為について、民法109条・110条・112条は正当な理由のある相手方を守ります。登記官は表見代理の成否を判断できず、申請の権限を疑うときは24条の調査をするにとどまります。委任状の偽造や代理権の消滅が後から判明したときは、本人が共同申請や判決で抹消を求め、登記を信じた第三者は民法94条2項の類推などで争う形です。完了した登記について「申請の権限を有しない者の申請によりされたものであると判明した場合には,そのことを理由として審査請求をすることができる」という肢は誤りで、審査請求は職権抹消できる事由に限られます。無権代理の問題は登記の前では代理権限証明情報の有無、登記の後では抹消の申請と第三者の保護という二つの場面に分かれて現れます。

民法 第28条

(管理人の権限)
管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

試験ではこう問われる

  1. 代理権のない者の申請はどうなるか(25条4号で却下。本人の追認があれば有効な行為として申請できる)
  2. 司法書士が売主と買主の双方を代理して申請できるか(できる。債務の履行に当たる)
  3. 財産管理人や相続財産の清算人が602条の期間を超えて賃貸するのに何が要るか(家庭裁判所の許可を証する情報。山林は10年、他の土地は5年)
  4. 表見代理が成立するかを登記官は判断するか(しない。書面で代理権の有無を見る)

この用語が問われた肢

R6 問26 オ誤り

所有権の移転の登記が完了したが、当該登記が申請の権限を有しない者の申請によりされたものであると判明した場合には、そのことを理由として審査請求をすることができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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