敷地権付き区分建物の所有権保存しきちけんつきくぶんたてもののしょゆうけんほぞん
敷地権の登記がある区分建物では、専有部分の登記が敷地にも及ぶので、保存の登記にも一体の処分を前提にした特則があります。誰の申請なら原因が要るか、建物だけや土地だけの登記がいつ許されるかが肢で突かれます。
敷地権付き区分建物の所有権保存は、表題部に敷地権の登記がある区分建物についてする所有権の保存の登記で、敷地の土地の登記記録には敷地権である旨の登記がされています。敷地権付きの区分建物では専有部分と敷地の持分を分けて処分できず、建物についてした所有権の登記は敷地権についてされた登記としての効力を持つ仕組みです。表題部所有者が74条1項で保存するときは普通の保存と同じで原因を書きませんが、転得者が74条2項で保存するときは敷地権の登記名義人の承諾と登記原因の記載が要ります。肢は、申請人によって原因の要否が変わること、建物だけや土地だけを目的とする登記の線引き、信託と一緒にする申請を突いてきます。
不動産登記法 第76条第1項所有権の保存の登記においては、第五十九条第三号の規定にかかわらず、登記原因及びその日付を登記することを要しない。ただし、敷地権付き区分建物について第七十四条第二項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、この限りでない。

表題部所有者の保存には原因が要らず、転得者の保存には要ります
敷地権付き区分建物でも、表題部所有者が自分の名義で保存の登記をするときは登記原因とその日付を要しません。「敷地権付き区分建物について、表題部所有者が申請人として所有権の保存の登記を申請する場合には、当該登記の申請情報に登記原因及びその日付を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。表題部所有者から取得した者が74条2項で保存するときだけ、不動産登記法76条1項ただし書で原因と日付を登記し、原因を「保存」とすることはできません。承諾するのは敷地権の登記名義人で、敷地権が賃借権なら賃借権の登記名義人であって土地の所有者ではありません。
信託の登記と一つの申請情報で保存できます
表題部所有者が区分建物と敷地を信託したときは、受託者が自分を所有者とする保存の登記と信託の登記を一の申請情報で申請できます。「Aを委託者とし、Bを受託者とする信託契約が締結された場合には、Bは、一の申請情報により、自らを所有者とする所有権の保存の登記及び信託の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。受託者は表題部所有者から所有権を取得した者として74条2項の申請人に当たり、信託の登記は保存の登記と同時に申請しなければならないので、二つを一つの申請情報にまとめます。
敷地権が生じる前の原因なら建物だけの登記ができます
敷地権付き区分建物では建物だけを目的とする所有権の移転や担保権の設定の登記は原則として受け付けられません。ただし、登記原因が敷地権の生じた日より前なら、建物だけを目的とする所有権の仮登記と質権や抵当権の登記ができ、建物だけの所有権の移転の本登記は含まれません。「当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じた当該建物のみを目的とする質権の設定の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。建物のみに関する旨の付記がされるのはこの例外に当たる登記で、賃借権の登記には付記がされず、「賃借権に関する登記には、建物のみに関する旨の付記登記がされる」という肢は誤りです。
土地だけを目的にできる登記も一部あります
敷地権である旨の登記がされた土地だけを目的とする登記も、権利の性質上一体の処分を害しないものは受け付けられます。不動産工事の先取特権の保存の登記は土地だけを目的にでき、「その登記原因の日付が当該敷地権が生じた日の前後いずれであるかを問わず,することができる」という肢は正しい肢です。処分禁止の仮処分の登記も敷地権が生じた後であっても土地だけを目的にでき、できるとする肢は正しい肢です。敷地権の登記の前に建物と土地の持分にそれぞれ抵当権が設定されていた場合も扱いが決まっています。登記の目的と受付の年月日・受付番号、登記原因とその日付が同一なら、土地の持分の抵当権の登記は登記官が職権で抹消します。
申請情報に共用部分の表示は要らず、敷地権の表示は要ります
敷地権付き区分建物について所有権や一般の先取特権、質権、抵当権の登記を申請するときは、敷地権の目的である土地の表示と敷地権の種類と割合を申請情報の内容にします。「当該区分建物の不動産番号を申請情報の内容としたときは、敷地権の目的となる土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地番、地目、地積、敷地権の種類及び割合を申請情報の内容とすることを要しない」という肢は誤りです。一棟の建物に共用部分である旨の登記がされた建物があっても、その種類や構造を申請情報にする必要はなく、しなければならないとする肢は誤りです。敷地権が賃借権で、賃借権の譲渡を許す旨の定めが無いときは、売買による所有権の移転に賃貸人の承諾を証する情報が要ります。
不動産登記法 第74条第2項区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
試験ではこう問われる
- 表題部所有者が保存するとき原因日付は要るか(要らない。74条2項の転得者の保存だけ要る)
- 受託者は保存と信託の登記を一の申請情報でできるか(できる)
- 敷地権が生じる前の原因で建物だけの質権設定はできるか(できる。所有権は仮登記まで。賃借権には建物のみの付記はされない)
- 土地だけを目的にできる登記は何か(工事の先取特権の保存、処分禁止の仮処分など)
- 不動産番号を書けば敷地権の表示を省略できるか(できない。共用部分の表示はもともと不要)
この用語が問われた肢
敷地権付き区分建物について、表題部所有者が申請人として所有権の保存の登記を申請する場合には、当該登記の申請情報に登記原因及びその日付を提供することを要しない。
敷地権付き区分建物について、敷地権の登記名義人の承諾を得て表題部所有者から所有権を取得した者が所有権の保存の登記を申請する場合には、その登記の原因を「保存」とすることができる。
Aが表題部所有者として記録されている所有権の登記がない敷地権付き区分建物について、当該区分建物及びその敷地権を目的として、Aを委託者とし、Bを受託者とする信託契約が締結された場合には、Bは、一の申請情報により、自らを所有者とする所有権の保存の登記及び信託の登記を申請することができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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