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質権・先取特権の登記しちけん・さきどりとっけんのとうき

不動産登記 第7章 抵当権と根抵当権 過去問で21肢

抵当権と同じ担保権の登記でありながら、登記事項や申請人、添付情報に独自の定めがある質権と先取特権の登記です。建物新築の工事先取特権で印鑑証明書が要らない点と、質権だけに載る登記事項が肢の軸です。

質権・先取特権の登記は、先取特権の保存の登記と質権の設定の登記をまとめて呼んだものです。どちらも先取特権・質権・抵当権に共通する担保権の登記事項を土台にしますが、先取特権には保存の登記という独自の型があり、質権には抵当権にない登記事項があります。とくに建物を新築する場合の不動産工事の先取特権は、まだ建物が存在しない段階で登記するため、申請人と添付情報の扱いが大きく変わります。肢では、印鑑証明書や登記識別情報の要否、申請の時期、敷地権付き区分建物での可否、質権と抵当権の登記事項の違いが問われます。

不動産登記法 第86条

(建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記)
建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記については、当該建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなす。この場合においては、第二十二条本文の規定は、適用しない。
前項の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第三号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 新築する建物並びに当該建物の種類、構造及び床面積は設計書による旨
二 登記義務者の氏名又は名称及び住所
前項第一号の規定は、所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記について準用する。

建築中の家に木材を運ぶ職人と、家の鍵を預かる金貸し、両方を見比べて登記簿に書く職員
先取特権の保存の登記と質権の設定の登記には、抵当権と違う登記事項と添付情報の定めがあります
建物新築の工事先取特権は登記識別情報・印鑑証明書不要売買の先取特権は所有権移転と同時質権の登記事項に存続期間

建物新築の工事先取特権は登記識別情報も印鑑証明書も要りません

建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記では、建物の所有者となるべき者を登記義務者とみなし、登記識別情報の提供に関する規定は適用されません。建物の登記記録がまだ無いので登記識別情報は存在せず、所有権の登記名義人でもないので印鑑証明書も要りません。「建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記を申請するときは、登記義務者の印鑑に関する証明書を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。「登記義務者の印鑑に関する証明書を提供することを要する」とする肢は誤りです。債権額としては工事費用の予算額を登記し、新築する建物の種類・構造・床面積は設計書による旨を登記事項とするので、設計書の内容を証する情報を添付します。「附属建物の工事代金債権を担保するために不動産工事の先取特権の保存の登記を申請するときは、新築する附属建物の設計書の内容を証する情報を提供しなければならない」という肢も正しい肢です。

売買の先取特権は所有権移転と同時に申請します

不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に代価やその利息が未払である旨を登記しなければ効力を保存できません。「不動産売買の先取特権の保存の登記の申請は、売買を原因とする所有権の移転の登記の申請と同時にしなければならない」という肢は正しい肢です。雇用関係などから生じる一般の先取特権も保存の登記ができ、仮登記も認められます。「労働者Bは、BがAに対して有する給料債権を被担保債権とする一般の先取特権の保存の仮登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。ただし所有権の登記名義人である使用者が登記義務者になるので、印鑑証明書は通常どおり要ります。「退職金債権を被担保債権とする一般の先取特権の保存の登記を申請するときは、当該使用者の印鑑に関する証明書を添付することを要しない」という肢は誤りです。

敷地権付き区分建物では一般の先取特権を土地だけに登記できません

敷地権である旨の登記がされた土地には、敷地権を目的とする担保権の登記は原則としてできません。一般の先取特権は債務者の総財産にかかるものなので、土地だけを目的とする保存の登記は分離処分に当たり申請できません。「乙土地のみを目的として、給料債権の先取特権発生を登記原因とする一般の先取特権の保存の登記は、申請することができない」という肢は正しい肢です。一方、不動産工事の先取特権はその土地や建物の工事から生じる債権を担保するものなので、土地のみ、建物のみを目的とする登記が原因日付を問わずにできます。「敷地権である旨の登記がされた土地のみを目的とする不動産工事の先取特権の保存の登記の申請は、その登記原因の日付が当該敷地権が生じた日の前後いずれであるかを問わず、することができる」という肢と、「当該区分建物のみを目的とする不動産工事の先取特権の保存の登記を申請することができる」という肢は、どちらも正しい肢です。

質権の登記事項は抵当権より広く存続期間や別段の定めが載ります

質権の登記には、担保権に共通する債権額・利息・債務者などのほか、存続期間の定め、質物の使用収益をしない旨の定め、担保する範囲を狭める別段の定めなどが加わります。抵当権には存続期間がありませんから、「質権又は抵当権について存続期間の定めは登記事項になりますか」に「いずれについても登記事項にはなりません」と答える肢は誤りです。付加一体物に効力が及ばない旨の定めは質権でも抵当権でも登記事項なので、「質権の登記の登記事項にはなりませんが、抵当権の登記の登記事項になります」という答えも誤りです。弁済期の定めは質権では登記事項にならず、抵当権でも抵当証券を発行する定めがある場合を除いて登記事項になりません。「不動産質権者が、不動産の管理費用の支払、公租公課の負担を負わない旨を定めたときは、その定めを登記することができる」という肢と、「違約金についての定めを質権の設定の登記の申請情報の内容として登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢です。

質権の変更の登記では誰が得をするかで申請人が決まります

質物の保存の費用や隠れた瑕疵による損害の賠償を担保しない旨の定めを廃止すると、質権の担保する範囲が広がり質権者に有利になります。したがって質権者が登記権利者、所有権の登記名義人が登記義務者です。「当該定めの廃止に係る質権の変更の登記を申請するときは、当該申請は、Aを登記権利者、Bを登記義務者としてしなければならない」という肢は、所有者Aを権利者としている点で誤りです。免責的債務引受による質権の債務者の変更では、根質権を除く担保権の債務者に関する変更なので、所有者が登記義務者でも印鑑証明書は要りません。「CがAの債務を免責的に引き受けたことにより当該質権の債務者の変更の登記を申請するときは、Aの印鑑に関する証明書を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。賃借権を目的とする質権の設定では、譲渡や転貸を許す旨の定めが登記されていれば賃貸人の承諾を証する情報は要りません。

不動産登記法 第95条

(質権の登記等の登記事項)
質権又は転質の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 存続期間の定めがあるときは、その定め
二 利息に関する定めがあるときは、その定め
三 違約金又は賠償額の定めがあるときは、その定め
四 債権に付した条件があるときは、その条件
五 民法第三百四十六条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
六 民法第三百五十九条の規定によりその設定行為について別段の定め(同法第三百五十六条又は第三百五十七条に規定するものに限る。)があるときは、その定め
七 民法第三百六十一条において準用する同法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
第八十八条第二項及び第八十九条から第九十三条までの規定は、質権について準用する。この場合において、第九十条及び第九十一条第二項中「第八十八条」とあるのは、「第九十五条第一項又は同条第二項において準用する第八十八条第二項」と読み替えるものとする。

試験ではこう問われる

  1. 建物新築の工事先取特権で登記識別情報・印鑑証明書は要るか(どちらも要らない)
  2. 不動産売買の先取特権の保存登記はいつ申請するか(所有権移転と同時)
  3. 敷地権付き区分建物で土地だけを目的とする一般の先取特権は登記できるか(できない。工事の先取特権はできる)
  4. 存続期間や弁済期は質権・抵当権の登記事項になるか(存続期間は質権のみ、弁済期はどちらも不可)
  5. 質権の定めの廃止の変更登記で権利者は誰か(担保範囲が広がるなら質権者)

この用語が問われた肢

R8 問21 オ誤り

建物を新築する場合において、当該建物の工事代金債権を担保するために不動産工事の先取特権の保存の登記を申請するときは、登記義務者の印鑑に関する証明書を提供することを要する。

R8 問21 ウ正しい

所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合において、当該附属建物の工事代金債権を担保するために不動産工事の先取特権の保存の登記を申請するときは、添付情報として新築する附属建物の設計書の内容を証する情報を提供しなければならない。

R8 問21 ア正しい

不動産売買の先取特権の保存の登記の申請は、売買を原因とする所有権の移転の登記の申請と同時にしなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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