登記原因及びその日付とうきげんいんおよびそのひづけ
登記の原因となる事実や法律行為と、それが効力を生じた日を「令和○年○月○日売買」の型で申請情報に書くものです。原因の名前のすり替えと、効力発生日がいつかの取り違えが肢で突かれます。
登記原因及びその日付は、不動産登記令3条6号が申請情報の内容として求める記載で、登記の原因となる事実または法律行為と、その効力が生じた日を示すものです。不動産登記法5条2項が登記原因を「登記の原因となる事実又は法律行為」と定義し、売買・贈与・相続・設定・解除・持分放棄のように定まった名前で表します。日付は契約日とは限らず、相続なら死亡の日、停止条件や第三者の許可・承諾が効力要件なら条件成就や許可・承諾の日になります。所有権の保存の登記には原因がないので記載せず、敷地権付き区分建物を表題部所有者から取得した者が申請する場合だけが例外になります。肢で突かれるのは、原因の名前のすり替えと、効力が生じた日を契約日や援用日と取り違えさせる作りです。
不動産登記令 第3条第1項第6号登記原因及びその日付(所有権の保存の登記を申請する場合にあっては、法第七十四条第二項の規定により敷地権付き区分建物について申請するときに限る。)

原因は定まった名前で書き、似た名前にすり替えられます
共有者が持分を放棄したときの登記原因は「持分放棄」で、「登記原因は,「放棄」であり」とする解答は誤りです。養子縁組で氏が変わったときの氏名の変更の登記原因は「氏名変更」で、「縁組」とする肢は誤りです。譲渡担保を原因とする移転の登記を契約の解除で戻すときは「譲渡担保契約の解除」が原因で、売主の相続人と買主が売買を合意で解除したときは「合意解除」を原因とする抹消ができます。強制競売による売却でされた移転の登記は当事者の合意では解除できず、「合意解除を登記原因として,当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りになります。
日付は効力が生じた日で、時効取得は起算日です
時効取得を原因とする移転の登記の日付は、援用の日でも時効完成の日でもなく、占有を始めた起算日になります。相続人が占有を引き継いで時効が完成した場合も同じで、「Cが当該時効の起算日より後に出生したときであっても,Cは,時効取得を登記原因として,当該時効の起算日の日付を登記原因の日付とする所有権の移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。相続による移転は死亡の日、遺産分割で設定する配偶者居住権は分割の成立日で、「被相続人の死亡の日を登記原因の日付としなければならない」という肢は誤りです。
許可や承諾が効力要件なら、後からされた日が日付になります
農地の売買は農地法の許可があって初めて効力を生じるので、契約より許可が後なら許可が到達した日が日付になります。買戻しの意思表示が期間内でも許可が期間経過後に届いたときは、「農地法所定の許可が到達した日を登記原因の日付とする買戻しによる所有権の移転の登記を申請することができる」という肢のとおりになります。根抵当権の極度額の増額は利害関係人の承諾が効力要件なので、「唯一の利害関係人の承諾がその契約の後にされたときは,…登記原因の日付は,当該利害関係人の承諾の日である」という肢は正しい肢に当たります。抵当権の順位の変更も利害関係人の承諾が効力要件で、合意の後に承諾がされたときに合意の日を原因日付とする肢は誤りです。
保存の登記には原因がなく、判決は移転の原因になりません
所有権の保存の登記は登記原因がない登記なので、原因と日付を書かないのが原則です。表題部所有者が自分で申請する敷地権付き区分建物の保存について、「当該登記の申請情報に登記原因及びその日付を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。敷地権付き区分建物を表題部所有者から取得した者が74条2項で申請するときだけ、売買などの取得原因と日付が申請情報の内容になります。判決による移転の登記でも原因は判決ではなく実体上の売買や時効取得で、「判決を登記原因及びその日付とする当該持分の移転の登記をすることはできない」という肢は正しい肢です。
不動産登記法 第5条第2項他人のために登記を申請する義務を負う第三者は、その登記がないことを主張することができない。ただし、その登記の登記原因(登記の原因となる事実又は法律行為をいう。以下同じ。)が自己の登記の登記原因の後に生じたときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 持分放棄・氏名変更・合意解除・譲渡担保契約の解除など原因の名前は何か(定まった名前で書く)
- 時効取得の登記原因の日付はいつか(占有開始の起算日)
- 農地法の許可や利害関係人の承諾が契約より後にされたときの日付はいつか(許可到達日・承諾日)
- 所有権保存の登記に原因と日付は書くか(書かない。敷地権付き区分建物の74条2項の保存だけ書く)
- 判決による移転の登記の原因は判決か(判決ではなく実体上の原因)
この用語が問われた肢
【問】地目が畑であり,A,Aの兄B及び妹Cが所有権の登記名義人である甲土地があり,甲土地の登記記録上,甲区 1 番に「昭和 63 年 2 月 1 日贈与」を登記原因及びその日付として,A,B及びCの持分がそれぞれ 3 分の 1 ずつ登記され,その後,乙区 1 番に「平成 10 年 2 月 10 日設定」を登記原因及びその日付とするDの地上権の設定の登記がされているものとします。この事例で,Aが甲土地の持分の全部を放棄する旨の意思表示をした場合において,当該意思表示に基づいてAの持分の移転の登記を申請するときの登記の目的,登記原因及びその日付は,どのようになりますか。 登記の目的は,「A持分全部移転」となります。また,登記原因は,「放棄」であり,その日付は,Aが甲土地の持分の全部を放棄する旨の意思表示をした日になります。
縁組により氏が変更した場合に申請する登記名義人の氏名の変更の登記の登記原因は、「縁組」である。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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