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受託者の変更と信託の登記じゅたくしゃのへんこう

不動産登記 第12章 信託・その他の登記 過去問で17肢

受託者の任務が終わって新しい受託者が選ばれたときにする、信託財産に属する不動産の権利の移転の登記です。任務終了の事由によって新受託者の単独申請か共同申請かが分かれる点が肢で突かれます。

受託者の変更は、受託者の任務が死亡・辞任・解任などで終わり、新しい受託者が選ばれたときに、信託財産に属する不動産の登記名義を新受託者に移す場面です。信託法75条により信託財産は新受託者に当然に承継されるので、登記は承継を公示するための権利の移転の登記です。不動産登記法100条1項は、死亡・後見開始または保佐開始の審判・破産手続開始の決定・法人の合併以外の理由による解散・解任命令による任務終了に限って、新受託者の単独申請を認めます。他の事由なら共同申請で、受託者が複数いるときの任務終了による変更の登記も同じ線で分かれるのが特徴です。

不動産登記法 第100条第1項

受託者の任務が死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散又は裁判所若しくは主務官庁(その権限の委任を受けた国に所属する行政庁及びその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関を含む。第百二条第二項において同じ。)の解任命令により終了し、新たに受託者が選任されたときは、信託財産に属する不動産についてする受託者の変更による権利の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、新たに選任された当該受託者が単独で申請することができる。

倒れた旧受託者の手から新受託者が一人で箱を受け取り、窓口に差し出している
死亡や後見開始などで任務が終了したときは、新受託者が単独で権利の移転の登記を申請します
死亡・後見開始・破産・解任命令は単独申請辞任は共同申請登録免許税は非課税

死亡・後見開始・破産・解任命令なら新受託者の単独申請です

不動産登記法100条1項の事由で任務が終了したときは、旧受託者やその相続人・後見人の協力を得なくても、新たに選任された受託者が単独で権利の移転の登記を申請できます。「Aが後見開始の審判を受けて受託者の任務が終了し,新たに受託者Bが選任された場合には,Aの成年後見人とBとが共同してAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない」という肢は誤りです。旧受託者が協力できない事情で任務が終わっているのに共同申請を求めては、信託財産が動かなくなるからです。登記原因は「受託者○○任務終了」などとし、新受託者の選任を証する情報を提供します。

辞任や合意による解任なら、新旧の受託者の共同申請です

受託者の辞任や、委託者と受益者の合意による解任は100条1項の事由に入らないので、新受託者を登記権利者、旧受託者を登記義務者とする共同申請になります。受託者が複数いて一人の任務が終わったときの権利の変更の登記も、100条2項により他の受託者が単独で申請できるのは1項の事由による終了に限られます。「Aの任務が辞任により終了したことによる権利の変更の登記は,Bが単独で申請することができる」という肢は誤りで、「Bが受託者を辞任し,その任務が終了した場合には,Cは,単独で,Bの任務の終了による権利の変更の登記を申請することができる」という肢も誤りです。裁判所の解任の裁判は解任命令に当たるので、「Bを解任する裁判があったことによる受託者の変更の登記は,BとCが共同して申請しなければならない」という肢は誤りです。

法人の合併は任務終了ではなく、合併を原因とする移転登記です

受託者である法人が合併で消滅したときは、信託法56条1項の任務終了事由に当たらず、合併後の法人が受託者の地位を承継します。登記は「合併」を登記原因とする所有権の移転の登記で、存続法人が単独で申請します。「B株式会社がA株式会社を合併してその任務を引き継いだ場合,「受託者A株式会社任務終了」を登記原因として,A株式会社からB株式会社への所有権の移転の登記の申請をすることができる」という肢は誤りです。合併以外の理由による解散は任務終了事由で、新受託者が単独で申請する側に入ります。

受託者の変更による移転登記には登録免許税がかかりません

受託者の変更に伴って信託財産に属する不動産を旧受託者から新受託者に移す登記は、登録免許税法7条1項3号により非課税です。信託財産の実質的な帰属は変わらず、名義人の入れ替えにすぎないからです。「受託者であった者から新たな受託者への所有権の移転の登記については、登録免許税が課されない」という肢は正しい肢で、「受託者の変更による所有権の移転の登記の登録免許税の額は,不動産の価額に 1000 分の 4 を乗じた額である」という肢は誤りです。任務終了による受託者の変更なら、信託目録は登記官が101条1号により職権で変更するので、申請人が目録の変更を別に申請する必要はありません。法人の合併による移転のときは、受託者が103条により信託の変更の登記を別に申請します。

受益者・委託者の変更は受託者が単独で申請します

受益権の譲渡による受益者の変更や、委託者の地位の移転による委託者の変更は、信託目録の記録を改める信託の変更の登記で、不動産登記法103条により受託者が単独で申請します。「売買を登記原因とする受益者の変更の登記は,Aが単独で申請することができる」という肢は正しい肢で、委託者の変更をAとCの共同申請とする肢は誤りです。新受益者が受託者に代位して受益者の変更の登記をしても、受益者は登記名義人ではないので登記識別情報は通知されません。「CがBに代位して受益者の変更の登記を完了した場合には,当該登記の申請人であるCに対して登記識別情報が通知される」という肢は誤りです。

不動産登記法 第100条第2項

受託者が二人以上ある場合において、そのうち少なくとも一人の受託者の任務が前項に規定する事由により終了したときは、信託財産に属する不動産についてする当該受託者の任務の終了による権利の変更の登記は、第六十条の規定にかかわらず、他の受託者が単独で申請することができる。

試験ではこう問われる

  1. 死亡・後見開始・破産・解任命令で任務が終了したとき移転登記は誰が申請するか(新受託者の単独申請)
  2. 辞任で任務が終了したとき移転登記や変更登記は単独でできるか(できない。共同申請)
  3. 受託者である法人が合併したとき登記原因は何か(合併。任務終了ではない)
  4. 受託者の変更による移転登記に登録免許税はかかるか(かからない)
  5. 受益者の変更の登記は誰が申請し、代位した新受益者に登記識別情報は通知されるか(受託者の単独申請。通知されない)

この用語が問われた肢

R6 問13 エ誤り

Aを委託者とし、B及びCを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Bが受託者を辞任し、その任務が終了した場合には、Cは、単独で、Bの任務の終了による権利の変更の登記を申請することができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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