所有権一部移転・持分移転しょゆうけんいちぶいてん・もちぶんいてん
所有権の一部や共有持分が動くときの登記で、登記の目的の書き方が誰から誰に何が動いたかで変わります。目的の文言、一の申請情報の可否、登記識別情報の範囲が肢で突かれます。
所有権一部移転・持分移転は、所有権の全部ではなく一部や持分が移転するときの登記です。単独所有者が所有権の一部を譲れば「所有権一部移転」、共有者Aが持分の全部を譲れば「A持分全部移転」、持分の一部なら「A持分一部移転」、共有者全員が全部を譲れば「共有者全員持分全部移転」と、登記の目的の文言が動いた範囲の表現です。登記名義人が二人以上になるときは各人の持分が登記事項なので、目的と合わせて権利者欄に持分を記載します。肢は目的の文言そのものより、持分を別々の順位で取得していたときに申請を一つにできるか、登記識別情報はどの順位の分が要るかという周辺を突いてきます。
不動産登記法 第59条第1項第4号登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分

目的の文言は誰の何が動いたかで決まります
単独所有のAが所有権の2分の1をBに売れば登記の目的は「所有権一部移転」で、権利者欄に「持分2分の1 B」と書きます。共有者Aが自分の持分を全部Bに売れば「A持分全部移転」、持分の一部なら「A持分一部移転」です。共有者全員がまとめてEに譲れば「共有者全員持分全部移転」で、「A及びBがEに対して甲土地を代物弁済したことによりEを登記権利者とする共有者全員持分全部移転の登記をした」という肢の前提がこの型です。登記の目的は移転した権利の範囲を正確に写すものなので、「所有権移転」と書いた申請で持分だけを動かすことはできません。
持分放棄による移転は一つの申請情報でなくてもよいです
共有者の一人が持分を放棄すると、他の共有者に持分の割合で帰属します。帰属する相手が二人いるとき、放棄者から各人への持分の移転の登記は、一つの申請情報でまとめることも、相手ごとに分けることもできます。「Aがその持分を放棄した場合,AからBへの持分の移転の登記及びAからCへの持分の移転の登記は,B及びCを登記権利者,Aを登記義務者として,一の申請情報によって申請しなければならない」という肢は誤りです。他の共有者の一人が申請を拒んでいても、応じる共有者に帰属した持分だけを先に移転できます。
別順位で取得した持分の相続は一つの申請情報でします
同じ人が甲区3番と4番で持分を2分の1ずつ取得し、一方の持分だけに抵当権が付いている場合、その人が死亡して相続で持分の全部が移転するときは、一の申請情報で申請しなければなりません。「甲区3番で登記された持分のみを目的とする抵当権の設定の登記がされている場合において,Aが死亡したことにより相続を登記原因とするAの持分の全部の移転の登記を申請するときは,一の申請情報でしなければならない」という肢は正しい肢です。相続は一回の事実で持分の全部が一度に移るので、順位ごとに分けて申請する理由がないからです。Aは二つの持分を合わせて単独所有者になっているので、登記の目的は「所有権移転」で、抵当権が付いている持分とそうでない持分の区別は、申請情報と登記記録の順位で表します。
登記識別情報は処分する持分の順位の分だけ要ります
持分を別々の順位で取得していると、登記識別情報も順位ごとに通知されています。一方の順位の持分だけを目的とする抵当権を設定するときは、その順位で通知された登記識別情報だけを提供すれば足ります。「甲区2番で登記された持分のみを目的とする抵当権の設定の登記を申請するときは,甲区3番の持分を取得したときに通知された登記識別情報を提供することを要しない」という肢は正しい肢です。逆に、Aの保存の登記の後に更正の登記でA・Bの共有名義になった場合を考えます。A及びBを設定者として所有権の全部に抵当権を設定するときは、保存と更正のそれぞれで通知された登記識別情報が要り、両方を提供しなければならないとする肢は正しい肢です。Aの持分だけなら保存のとき、Bの持分だけなら更正のときの登記識別情報で足ります。
敷地権の土地の持分だけを動かす登記はできません
敷地権である旨の登記がされた土地では、専有部分と敷地権になっている持分が一体で処分されます。敷地権になっている持分だけを目的とする移転の登記や仮登記は、敷地権が生じた後の原因では受け付けられず、敷地権が生じる前の原因によるものだけが例外です。「乙土地のB株式会社の持分のみを目的として,平成28年3月15日売買を登記原因及びその日付とする当該持分の移転の仮登記をすることができる」という肢は誤りです。他方、判決を登記原因とする持分の移転の登記も敷地権が生じた後のものはできず、できないとする肢は正しい肢です。
民法 第255条(持分の放棄及び共有者の死亡)
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
試験ではこう問われる
- 単独所有者が一部を譲る場合と共有者が持分を譲る場合の登記の目的はどう違うか(所有権一部移転とA持分全部移転)
- 持分放棄で二人に帰属する持分の移転は一の申請情報でしなければならないか(しなくてよい)
- 別順位で取得した持分の相続による移転は一の申請情報でするか(する)
- 一方の順位の持分だけに抵当権を設定するとき他方の順位の登記識別情報は要るか(要らない)
- 敷地権になっている土地の持分だけの移転の登記や仮登記ができるか(敷地権が生じた後の原因ではできない)
この用語が問われた肢
【問】先の事例で,Cが当該意思表示に基づくAの持分の移転の登記の申請を拒んでいるときは,A及びBは共同して,当該意思表示に基づきBに帰属した持分についてのみ当該移転の登記の申請をすることができますか。 いいえ,できません。
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