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農地法の許可書のうちほうのきょかしょ

不動産登記 第3章 添付情報と登記原因証明情報 過去問で24肢

農地の所有権を移転し、または使用収益を目的とする権利を設定・移転するときに要る農業委員会などの許可を証する情報です。どの登記原因なら許可が要り、どれなら要らないかが肢で突かれます。

農地法の許可書は、農地法3条または5条の許可があったことを証する情報です。農地の所有権を移転し、または地上権や賃借権などの使用収益を目的とする権利を設定・移転する法律行為に、この許可が要ります。許可は法律行為の効力要件なので、許可がなければ権利は動かず、登記原因について第三者の許可を要する場合として不動産登記令7条1項5号ハの添付情報になります。当事者の意思によらずに権利が動く相続や時効取得には許可が要らず、意思による移転でも許可が要らない類型が農地法と施行規則に列挙されています。肢で突かれるのは、この要る・要らないの線引きと、許可が遅れたときの登記の形です。

不動産登記令 第7条第1項第5号

登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報

畑の前で売主と買主の間に農業委員会の職員が許可の紙を掲げて立つ場面
農地の所有権移転や使用収益権の設定には農地法3条の許可書が要ります
相続・遺産分割・時効取得は不要共有物分割・買戻し・合意解除は要る条件付き判決には執行文

相続・遺産分割・時効取得には許可が要りません

相続や遺産分割、包括遺贈、相続人に対する特定遺贈、時効取得には農地法の許可が要りません。「Aが,相続人であるBへ甲土地を特定遺贈する旨の遺言をして死亡し,Bがこの遺言書を提供して所有権の移転の登記を申請するときは,農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要する」という肢は誤りで、「Aの遺言に基づくBへの遺贈は包括遺贈に当たるため,農地法所定の許可は不要です」という解答も正しい解答になります。時効取得についても「AからBへの時効取得を原因とする所有権の移転の登記を申請するときは,農地法所定の許可があったことを証する情報を提供しなければならない」という肢が誤りとされています。法定相続分の登記の後に遺産分割で持分を移す場合も同じで、「遺産分割を原因とするAからBへのA持分全部の移転の登記を申請する場合には,農地法所定の許可があったことを証する情報の提供を要する」という肢は誤りです。

共有物分割・買戻し・合意解除による移転や抹消には許可が要ります

共有者の間で持分を移す共有物分割は法律行為による移転なので許可が要り、「共有物分割を原因とするAからBへのA持分全部の移転の登記を申請する場合には,農地法所定の許可があったことを証する情報の提供を要する」という肢は正しい肢です。買戻しの行使による所有権の移転も同じで、「買戻しの期間中に買戻権が行使されたために買戻しによる所有権の移転の登記を申請するときは,農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しない」という肢は誤りです。売買を合意解除して所有権の移転の登記を抹消する場合も、実質は所有権が戻る法律行為なので許可が要り、「当該売買の合意解除による当該所有権の移転の登記の抹消を申請するときは,農地法所定の許可があったことを証する情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。他方で、錯誤による抹消は初めから移転が無かったことを表すだけなので許可は要りません。

農地を現に使う権利には要り、不作為の地役権には要りません

地上権や賃借権のほか、質権者が使用収益できる不動産質権の設定にも許可が要ります。「「質権者は質物を使用収益できない」旨の定めがない不動産質権の設定の登記を申請する場合には,農地法所定の許可があったことを証する情報の提供を要する」という肢は正しい肢です。農地の地下に水道管を設置するような、承役地を現に使う地役権にも許可が要り、「乙土地の地下に水道管を設置することを目的とする地役権の設定の登記を申請するときは,農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しない」という肢は誤りです。逆に、電線路の障害となる工作物を設置しないという不作為だけを内容とする地役権は、農地の利用を妨げないので許可が要らず、「電線路の障害となる工作物を設置しない」ことを目的とする地役権の設定に許可書を要求する肢は誤りです。

条件付き判決には執行文が要り、許可書では代えられません

農地法の許可を条件として登記手続を命じた判決で単独申請するには、条件成就の執行文の付与を受ける必要があります。「当該条件が成就したときは,Bは,当該条件の成就に係る執行文の付与を受けた当該確定判決の判決書の正本を登記原因証明情報として提供して,単独で所有権の移転の登記の申請をすることができる」という肢は正しい肢で、許可書を提供すれば執行文が要らないとする肢は誤りです。逆に、判決の理由中で既に許可があったことが認定されていれば、別に許可書を添える必要はなく、「確定判決の理由中に農地法所定の許可がされている旨の認定がされている場合であっても,…農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要する」という肢は誤りです。時効取得を原因とする移転を命じた判決で申請したときは、許可書がないことだけで却下されるのではなく、登記官が関係農業委員会に申請があった旨を通知します。

許可前の売主の死亡と地目変更は登記の形を変えます

売買契約の後、許可の前に売主が死亡すると、許可が到達した時点の所有者は相続人なので、相続登記を経てから買主への移転登記をします。「同年 12 月 1 日にAが死亡し,同月 14 日に農地法所定の許可があった場合において,Bへの所有権の移転の登記を申請するときは,その前提としてAの相続人への所有権の移転の登記を申請しなければならない」という肢は正しい肢です。他方で、許可を停止条件とする所有権の移転の仮登記が既にあるときは、仮登記の登記名義人と相続人とが本登記を申請でき、相続登記を前置させる肢は誤りです。売買より前に既に宅地へ変わっていたことが地目の変更の登記で分かるときは、農地法の許可を条件とする仮登記のままでは本登記ができません。買戻しの意思表示が期間内でも許可が期間後に届いたときは、許可到達日を原因日付として買戻しの登記ができます。

不動産登記法 第63条第1項

第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。

試験ではこう問われる

  1. 相続人への特定遺贈・包括遺贈・時効取得・遺産分割に農地法の許可書は要るか(要らない)
  2. 共有物分割・買戻し・合意解除による抹消に許可書は要るか(要る)
  3. 承役地を現に使う地役権と、工作物を設置しないだけの地役権で許可の要否は分かれるか(分かれる)
  4. 許可を条件とする判決で単独申請するとき、許可書の提供で執行文の付与に代えられるか(代えられない)
  5. 許可前に売主が死亡したとき、相続登記の前置は要るか(要る。条件付き仮登記があれば要らない)

この用語が問われた肢

R8 問16 オ誤り

Aを所有権の登記名義人とする農地である甲土地の所有権をBが時効により取得した場合において、AからBへの時効取得を原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供しなければならない。

R7 問18 ア誤り

法定相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記がされ、A及びBが所有権の登記名義人となった甲土地について、遺産分割を原因とするAからBへのA持分全部の移転の登記を申請する場合には、農地法所定の許可があったことを証する情報の提供を要する。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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