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登記懈怠の過料とうきけたいのかりょう

商業登記 第3章 登記期間と登記の効力

登記期間内に登記をしなかったときに、会社法976条1号により取締役などの個人に科される100万円以下の過料です。会社ではなく代表者が払うこと、裁判所が科すこと、登記の申請自体は受理されることが肢で突かれます。

登記懈怠の過料は、会社法976条1号により、会社法の規定による登記をすることを怠ったときに科される100万円以下の過料です。過料を科される主体は同条の柱書に列挙された発起人・取締役・監査役・執行役・清算人などの個人で、会社そのものではありません。過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰なので、刑を科すべきときはそちらが優先されます。登記期間を過ぎた登記の申請は受理され、過料は別の手続で裁判所が科します。肢で突かれるのは、誰が払うのか、誰が科すのか、登記の申請との関係です。

会社法 第976条

(過料に処すべき行為)
発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、社債管理補助者、事務を承継する社債管理補助者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
二 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
三 この法律の規定による開示をすることを怠ったとき。
四 この法律の規定に違反して、正当な理由がないのに、書類若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写又は書類の謄本若しくは抄本の交付、電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供すること若しくはその事項を記載した書面の交付を拒んだとき。
五 この法律の規定による調査を妨げたとき。
六 官庁、株主総会若しくは種類株主総会、創立総会若しくは種類創立総会、社債権者集会又は債権者集会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠蔽したとき。
七 定款、株主名簿、株券喪失登録簿、新株予約権原簿、社債原簿、議事録、財産目録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書、事業報告、事務報告、第四百三十五条第二項若しくは第四百九十四条第一項の附属明細書、会計参与報告、監査報告、会計監査報告、決算報告又は第百二十二条第一項、第百四十九条第一項、第百七十一条の二第一項、第百七十三条の二第一項、第百七十九条の五第一項、第百七十九条の十第一項、第百八十二条の二第一項、第百八十二条の六第一項、第二百五十条第一項、第二百七十条第一項、第六百八十二条第一項、第六百九十五条第一項、第七百八十二条第一項、第七百九十一条第一項、第七百九十四条第一項、第八百一条第一項若しくは第二項、第八百三条第一項、第八百十一条第一項、第八百十五条第一項若しくは第二項、第八百十六条の二第一項若しくは第八百十六条の十第一項の書面若しくは電磁的記録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
八 第三十一条第一項の規定、第七十四条第六項、第七十五条第三項、第七十六条第四項、第八十一条第二項若しくは第八十二条第二項(これらの規定を第八十六条において準用する場合を含む。)、第百二十五条第一項、第百七十一条の二第一項、第百七十三条の二第二項、第百七十九条の五第一項、第百七十九条の十第二項、第百八十二条の二第一項、第百八十二条の六第二項、第二百三十一条第一項若しくは第二百五十二条第一項、第三百十条第六項、第三百十一条第三項、第三百十二条第四項、第三百十八条第二項若しくは第三項若しくは第三百十九条第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。)、第三百七十一条第一項(第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)、第三百七十八条第一項、第三百九十四条第一項、第三百九十九条の十一第一項、第四百十三条第一項、第四百四十二条第一項若しくは第二項、第四百九十六条第一項、第六百八十四条第一項、第七百三十一条第二項、第七百八十二条第一項、第七百九十一条第二項、第七百九十四条第一項、第八百一条第三項、第八百三条第一項、第八百十一条第二項、第八百十五条第三項、第八百十六条の二第一項又は第八百十六条の十第二項の規定に違反して、帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき。
九 正当な理由がないのに、株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会において、株主又は設立時株主の求めた事項について説明をしなかったとき。
十 第百三十五条第一項の規定に違反して株式を取得したとき、又は同条第三項の規定に違反して株式の処分をすることを怠ったとき。
十一 第百七十八条第一項又は第二項の規定に違反して、株式の消却をしたとき。
十二 第百九十七条第一項又は第二項の規定に違反して、株式の競売又は売却をしたとき。
十三 株式、新株予約権又は社債の発行の日前に株券、新株予約権証券又は社債券を発行したとき。
十四 第二百十五条第一項、第二百八十八条第一項又は第六百九十六条の規定に違反して、遅滞なく、株券、新株予約権証券又は社債券を発行しなかったとき。
十五 株券、新株予約権証券又は社債券に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
十六 第二百二十五条第四項、第二百二十六条第二項、第二百二十七条又は第二百二十九条第二項の規定に違反して、株券喪失登録を抹消しなかったとき。
十七 第二百三十条第一項の規定に違反して、株主名簿に記載し、又は記録したとき。
十八 第二百九十六条第一項の規定又は第三百七条第一項第一号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)若しくは第三百五十九条第一項第一号の規定による裁判所の命令に違反して、株主総会を招集しなかったとき。
十八 第三百三条第一項又は第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による請求があった場合において、その請求に係る事項を株主総会又は種類株主総会の目的としなかったとき。
十九 第三百二十五条の三第一項(第三百二十五条の七において準用する場合を含む。)の規定に違反して、電子提供措置をとらなかったとき。
十九 第三百二十七条の二の規定に違反して、社外取締役を選任しなかったとき。
十九 第三百三十一条第六項の規定に違反して、社外取締役を監査等委員である取締役の過半数に選任しなかったとき。
二十 第三百三十五条第三項の規定に違反して、社外監査役を監査役の半数以上に選任しなかったとき。
二十一 第三百四十三条第二項(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第三百四十四条の二第二項(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による請求があった場合において、その請求に係る事項を株主総会若しくは種類株主総会の目的とせず、又はその請求に係る議案を株主総会若しくは種類株主総会に提出しなかったとき。
二十二 取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人がこの法律又は定款で定めたその員数を欠くこととなった場合において、その選任(一時会計監査人の職務を行うべき者の選任を含む。)の手続をすることを怠ったとき。
二十三 第三百六十五条第二項(第四百十九条第二項及び第四百八十九条第八項において準用する場合を含む。)又は第四百三十条の二第四項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、取締役会又は清算人会に報告せず、又は虚偽の報告をしたとき。
二十四 第三百九十条第三項の規定に違反して、常勤の監査役を選定しなかったとき。
二十五 第四百四十五条第三項若しくは第四項の規定に違反して資本準備金若しくは準備金を計上せず、又は第四百四十八条の規定に違反して準備金の額の減少をしたとき。
二十六 第四百四十九条第二項若しくは第五項、第六百二十七条第二項若しくは第五項、第六百三十五条第二項若しくは第五項、第六百七十条第二項若しくは第五項、第七百七十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。)、第七百八十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)、第七百九十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第八百二条第二項において準用する場合を含む。)、第八百十条第二項若しくは第五項(これらの規定を第八百十三条第二項において準用する場合を含む。)、第八百十六条の八第二項若しくは第五項又は第八百二十条第一項若しくは第二項の規定に違反して、資本金若しくは準備金の額の減少、持分の払戻し、持分会社の財産の処分、組織変更、吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転、株式交付又は外国会社の日本における代表者の全員の退任をしたとき。
二十七 第四百八十四条第一項若しくは第六百五十六条第一項の規定に違反して破産手続開始の申立てを怠ったとき、又は第五百十一条第二項の規定に違反して特別清算開始の申立てをすることを怠ったとき。
二十八 清算の結了を遅延させる目的で、第四百九十九条第一項、第六百六十条第一項又は第六百七十条第二項の期間を不当に定めたとき。
二十九 第五百条第一項、第五百三十七条第一項又は第六百六十一条第一項の規定に違反して、債務の弁済をしたとき。
三十 第五百二条又は第六百六十四条の規定に違反して、清算株式会社又は清算持分会社の財産を分配したとき。
三十一 第五百三十五条第一項又は第五百三十六条第一項の規定に違反したとき。
三十二 第五百四十条第一項若しくは第二項又は第五百四十二条第一項若しくは第二項の規定による保全処分に違反したとき。
三十三 第七百二条の規定に違反して社債を発行し、又は第七百十四条第一項(第七百十四条の七において準用する場合を含む。)の規定に違反して事務を承継する社債管理者若しくは社債管理補助者を定めなかったとき。
三十四 第八百二十七条第一項の規定による裁判所の命令に違反したとき。
三十五 第九百四十一条の規定に違反して、電子公告調査を求めなかったとき。

埃をかぶった申請書と日付の過ぎたカレンダー、裁判所からの封筒を開けて青ざめる社長
登記を怠ると代表者などの個人に100万円以下の過料が裁判所から科されます
会社ではなく個人100万円以下裁判所が科し登記官は通知申請自体は受理される

過料を科されるのは会社ではなく代表者などの個人です

会社法976条の柱書は、過料に処される者として取締役・監査役・執行役・清算人・持分会社の業務執行社員などを挙げ、会社を挙げていません。登記を申請する義務を負うのは会社ですが、申請を怠った責任は代表者個人が負う設計です。過料の額は100万円を上限に、裁判所が懈怠の期間や事情を考慮して決めます。実務では登記期間から遅れた日数が長いほど高額になる傾向があり、数か月の遅れなら数万円程度の例が多いようです。

過料は裁判所が非訟事件として科し、登記官は通知するだけです

過料は、非訟事件手続法119条により過料を受ける者の普通裁判籍の所在地(通常は代表者の住所地)を管轄する地方裁判所が、過料事件として決定します。登記官は商業登記規則118条により、過料に処されるべき者があることを職務上知ったときは遅滞なく管轄地方裁判所に通知します。登記官自身が過料の額を決めたり、申請の受付時に過料を徴収したりすることはありません。裁判所は原則として当事者の陳述を聴き、検察官の意見を求めたうえで過料の裁判をします。裁判所からは代表者宛てに過料決定の通知が届き、略式手続の裁判には1週間以内の異議の申立て、通常の手続の裁判には即時抗告ができます。

登記期間を過ぎた申請も受理され、過料は申請の条件ではありません

登記期間の経過は商業登記法24条の却下事由ではないので、2週間を過ぎた申請も登記されます。「役員に変更が生じた場合において、変更の日から2週間の登記期間を経過したときは、その登記を申請することができない」という肢は誤りです。過料の納付が登記の申請や完了の前提になることもなく、登録免許税の納付とは別の話です。過料の額は裁判所が個別に決めるので、懈怠の期間を延ばさないよう期間を過ぎても早く申請するのが実務の対応です。

役員の員数を欠いたまま選任を怠ることも過料の対象です

会社法976条22号は、取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人が法律や定款の員数を欠いたのに、選任の手続を怠ったときも過料の対象にします。登記を怠る1号とは別の号で、退任した役員を権利義務役員のまま放置する場面がこれに当たります。同条2号は公告や通知を怠った場合、19号の2は社外取締役を選任しなかった場合で、登記以外の懈怠にも過料が及びます。登記と選任のどちらの懈怠かを分けて答える肢に備えておきます。

12年間登記がないと休眠会社としてみなし解散の対象になります

株式会社の役員の任期は最長10年なので、12年間登記がないことは、役員変更の登記か選任そのものを怠っていることを意味します。会社法472条1項により、最後の登記から12年を経過した休眠会社は、法務大臣の公告から2か月以内に事業を廃止していない旨の届出も登記もしなければ、解散したものとみなされます。過料で間接的に登記を促すだけでなく、長期の懈怠は登記記録そのものを解散の状態に進める仕組みです。みなし解散の後3年以内なら、会社法473条により株主総会の決議で会社を継続できます。役員に法定の任期がない特例有限会社には、休眠会社のみなし解散の制度は適用されません。

商業登記規則 第118条

(過料事件の通知)
登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知つたときは、遅滞なくその事件を管轄地方裁判所に通知しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 登記懈怠の過料は会社と代表者のどちらに科されるか(代表者などの個人)
  2. 過料の上限はいくらか(100万円以下)
  3. 過料を決めるのは登記官か裁判所か(裁判所。登記官は通知する)
  4. 登記期間を過ぎた申請は却下されるか(されない)
  5. 12年間登記がない株式会社はどうなるか(休眠会社として解散したものとみなされ得る)
商業登記を肢別で解く

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