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登記の効力(消極的公示力・積極的公示力)とうきのこうりょく

商業登記 第3章 登記期間と登記の効力 過去問で1肢

登記すべき事項は登記前は善意の第三者に対抗できず、登記後は正当な事由なく知らなかった第三者にも対抗できるという会社法908条1項の効力です。民法177条の対抗要件とは型が違う公示の効力であること、設立登記のような創設的効力との違いが肢で突かれます。

登記の効力は、会社法908条1項が定める、登記すべき事項を第三者に主張できるかどうかのルールです。登記の前はその事項を善意の第三者に対抗できず、登記の後は正当な事由によって知らなかった第三者を除いて対抗できます。前半を消極的公示力、後半を積極的公示力と呼びます。商業登記は善意の第三者に対抗するための要件として働きますが、民法177条のように権利の優劣を決めるものではなく、取引の相手方に会社の内容を知らせる公示の制度です。肢で突かれるのは、善意と悪意の区別、正当な事由の範囲、そして設立の登記のように登記で初めて効力が生じる場面との違いです。

会社法 第908条第1項

この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。

登記所の掲示板の登記簿を読む取引相手と、帳面を指さす社長
登記の前は善意の第三者に対抗できず、登記の後は正当な事由がない限り対抗できます
消極的公示力と積極的公示力悪意の第三者には登記前でも対抗可正当な事由は客観的事情だけ設立の登記は創設的効力

登記の前は善意の第三者に対抗できず、悪意の第三者には対抗できます

代表取締役が退任したのに退任の登記をしていない間に、その者が会社を代表して契約したとします。会社は退任の事実を知らない相手方に対し、代表権がなかったとは主張できません。相手方が退任を知っていたなら登記がなくても対抗でき、消極的公示力は善意の第三者を守る仕組みで悪意の第三者まで守るものではないからです。相手方が悪意であったことは、対抗しようとする会社の側が立証します。登記すべき事項でない事柄には会社法908条1項は働きません。登記事項かどうかは株式会社なら会社法911条3項、持分会社なら912条から914条まで、支配人なら918条などの定めで決まります。

登記の後は正当な事由がない限り知らなかった第三者にも対抗できます

登記をすれば、第三者が実際に登記を見ていなくても、会社はその事項を対抗できます。例外は第三者が正当な事由によって登記を知らなかったときに限られます。登記実務と判例は交通の途絶や登記簿の滅失のような客観的な事情だけを正当な事由と扱い、忙しくて見られなかったという主観的な事情を含めません。積極的公示力があるから、会社は変更があるたびに原則として2週間以内に登記して、相手方に調べる機会を与える責任を負います。

商人の登記は商法9条で同じ効力を持ちます

会社でない商人の商号や支配人の登記には商法9条1項が同じ内容を定めています。会社の登記は会社法908条、商人の登記は商法9条という条文の違いだけで、善意の第三者に対抗できない点と正当な事由の例外は共通です。会社の支配人や商号の登記は会社の登記なので会社法908条が根拠で、商法9条が根拠になるのは個人商人の登記です。会社の支配人の代理権が消滅したのに登記しないまま元の支配人が取引したときも、会社法908条1項により善意の相手方には消滅を対抗できません。

設立や合併の登記は登記によって効力が生じる創設的効力を持ちます

会社法49条により株式会社は本店の所在地で設立の登記をすることによって成立し、登記が効力発生の要件です。新設合併・新設分割・株式移転による設立も、設立の登記で新会社が成立します。吸収合併は合併契約、吸収分割は分割契約で定めた効力発生日に効力が生じ、登記は公示にすぎません。役員の変更や本店移転の登記も効力発生の後にする報告的な登記です。登記が効力要件の場面と公示の場面を分けるのが、肢を読むときの基準です。

登記に公信力はなく、不実の登記は別の条文で扱います

登記に公信力はなく、登記されているからといって実体のない権利や資格が生まれるわけではありません。退任した者が取締役として登記されたままでも、その者が取締役に戻ることはありません。登記を信じた第三者の保護は、会社法908条2項の不実の登記の責任や、会社法354条の表見代表取締役の責任で図る建付けです。登記の効力の条文は対抗の可否を決めるだけで、権利の存否を決めるものではないと押さえておくと、肢の読み違いが減ります。

会社法 第49条

(株式会社の成立)
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

試験ではこう問われる

  1. 退任の登記前に退任した代表取締役が契約したとき、会社は悪意の相手方に退任を対抗できるか(できる)
  2. 登記後に登記を見ていなかった第三者に対抗できるか(正当な事由がなければ対抗できる)
  3. 正当な事由に忙しくて登記を見られなかった事情は含まれるか(含まれない)
  4. 株式会社の成立に設立の登記は要るか(要る。登記で成立する)
  5. 吸収合併の効力は登記で生じるか(合併契約で定めた効力発生日に生じる)
商業登記を肢別で解く

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