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不実の登記ふじつのとうき

商業登記 第3章 登記期間と登記の効力 過去問で1肢

実体と合わない事項を故意または過失によって登記した者は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗できないという会社法908条2項のルールです。責任を負うのは誰か、登記官の審査でどこまで防げるか、不実の登記をどう正すかが肢で突かれます。

不実の登記は、実体の権利関係や事実と合わない登記のことです。会社法908条2項により、故意または過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗できません。登記を信じて取引した第三者を守るため、登記した側に不利益を負わせる仕組みです。登記官は商業登記法24条の却下事由の範囲で申請を審査しますが、添付書面が整っていれば実体を調べる権限はないので、不実の登記は起こり得ます。肢で突かれるのは、責任を負う者の範囲、善意の第三者の意味、不実の登記を正す手続です。

会社法 第908条第2項

故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。

登記簿の似顔絵と席に座る人物が食い違い、取引相手が登記簿を信じて握手を求める
故意または過失で不実の事項を登記した者は、その不実を善意の第三者に対抗できません
故意・過失が要件就任の登記を承諾した者も責任登記官は形式的審査更正・抹消・嘱託で正す

責任を負うのは故意または過失で登記した申請人です

会社法908条2項の主語は「不実の事項を登記した者」で、登記を申請した会社がこれに当たります。故意または過失が要件なので、第三者の偽造書類によって無過失で不実の登記がされたときは責任を負いません。退任した取締役の退任の登記を怠って登記が実体と食い違ったときは、会社法908条1項の登記の効力の問題であって、2項の不実の登記ではありません。1項は登記をしなかった場面、2項は登記をしたが内容が違う場面と、条文の守備範囲を分けて読みます。

就任の登記に承諾を与えた者も登記した者と同じ責任を負います

取締役に選任されていないのに、就任の登記をすることを承諾した者がいたとします。判例は、その者は自分が登記の申請人でなくても、不実の登記の出現に加功した者として、会社法908条2項を類推して善意の第三者に取締役でないことを対抗できないとします。登記された取締役として第三者に対する責任を問われ得るということです。退任後に登記を残すことを承諾した取締役についても、同じ考え方で責任を認めた判例があります。

登記官は形式的審査なので、書面がそろえば不実でも登記されます

登記官は商業登記法24条の各号に当たるかどうかを、申請書と添付書面、登記簿の記載から審査します。同条8号は添付書面と申請書や登記簿との不一致、9号は登記すべき事項に無効または取消しの原因があることを却下事由にします。書面の外にある事実を調べて真偽を確かめるのは原則の審査ではありません。例外として、申請人の権限を疑う相当な理由があるときは、商業登記法23条の2により出頭を求めたり質問したりして調査します。株主総会が開かれていないのに議事録だけ作って申請すれば、書面上は整っているので登記される仕組みです。だからこそ、商業登記規則61条3項の株主リストや本人確認証明書のように、書面の裏付けを増やす改正が重ねられています。

不実の登記は更正・抹消・判決による登記で正します

登記に錯誤や遺漏があるときは、商業登記法132条により当事者が更正を申請し、氏名や住所の更正を除いて錯誤や遺漏を証する書面を添えます。登記された事項に無効の原因があるときは、同法134条により当事者が抹消を申請できます。登記官も同法135条により、登記官が定めた1か月を超えない期間内に書面で異議を述べなければ抹消する旨を通知し、異議がなければ同法137条により抹消します。訴えでしか主張できない無効や取消しの原因は職権抹消の対象から外れ、株主総会決議の不存在や無効の確認の判決が確定したときに、裁判所書記官の嘱託で登記されます。選任決議が不存在と確定した取締役の登記は嘱託によって抹消され、辞任などで退任しつつ権利義務を有していた前任者がいればその登記が回復されます。

不正な登記を防ぐ申出の制度があります

代表者の印鑑や書類を盗まれて不実の登記を申請されるおそれがあるときは、登記所に不正登記防止の申出ができます。申出を受けた登記所は、申出に係る登記の申請があったときに申請人に本人確認を求め、商業登記法23条の2により登記官が申請人の権限を調査します。申出の有効期間は3か月で、継続するには再度申出をします。不実の登記は事後の責任だけでなく、事前の申出でも防ぐ仕組みがあると押さえておきます。

商業登記法 第134条

(抹消の申請)
登記が次の各号のいずれかに該当するときは、当事者は、その登記の抹消を申請することができる。
一 第二十四条第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由があること。
二 登記された事項につき無効の原因があること。ただし、訴えをもつてのみその無効を主張することができる場合を除く。
第百三十二条第二項の規定は、前項第二号の場合に準用する。

試験ではこう問われる

  1. 無過失で不実の登記がされた会社は善意の第三者に不実を対抗できるか(できる。故意過失が要件)
  2. 取締役でないのに就任の登記を承諾した者は責任を負うか(負う。判例が類推適用)
  3. 登記官は議事録の記載が真実かを調査できるか(できない。形式的審査)
  4. 登記に錯誤があるときの申請は何か(更正。錯誤を証する書面を添付)
  5. 決議不存在の確認判決が確定したときの登記は誰がするか(裁判所書記官の嘱託)
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