本店移転と印鑑届の省略(令和7年)ほんてんいてんといんかんとどけのしょうりゃく
本店を他の登記所の管轄区域内に移転したときの新所在地における登記の申請を旧所在地の登記所を経由してする仕組みと、令和7年4月の改正で新所在地への印鑑の提出が要らなくなったことです。経由申請の取下げ・却下の扱いと、印鑑の扱いの変化が肢で突かれます。
本店移転で本店を他の登記所の管轄区域内に移すときは、商業登記法51条により、新所在地における登記の申請を旧所在地の登記所を経由して旧所在地の申請と同時にします。旧所在地の登記所は却下事由が無ければ申請書と添付書面を新所在地の登記所に送付し、新所在地で登記をした旨の通知を受けてから登記します。印鑑については、かつては新所在地の登記所に提出する印鑑届書も旧所在地の登記所を経由して出していました。令和7年4月の商業登記規則の改正で、旧所在地の登記所が印鑑記録を新所在地の登記所に移送し、新所在地に提出があったものとみなす形に変わっています。肢で突かれるのは、経由申請の取下げと却下の扱い、添付書面の要否、そして印鑑の扱いが改正の前後で違うことです。
商業登記法 第51条第1項本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。

新所在地への印鑑届は令和7年4月から要りません
令和7年4月の改正の施行前は、新所在地の登記所に対する印鑑の提出は旧所在地の登記所を経由してする扱いでした。「新所在地を管轄する登記所にする印鑑の提出は,旧所在地を管轄する登記所を経由してすることを要しない」という肢は、出題当時の扱いとして誤りです。施行後に申請した本店移転では、旧所在地の登記所が申請人に関する印鑑記録を新所在地の登記所に移送します。新所在地の登記所に印鑑の提出があったものとみなされるので、改めて印鑑届書を出す必要がありません。新所在地の登記所で申請が却下されるべき場合はこのみなしが働きません。
委任状は両方の申請書に添付します
新所在地と旧所在地の申請は別の登記所に対する別の申請なので、代理人によって申請するときは、旧所在地宛ての申請書と新所在地宛ての申請書のいずれにも代理人の権限を証する書面を添付します。「A登記所宛ての申請書及びB登記所宛ての申請書のいずれにも,代理人の権限を証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。新所在地における登記の申請書の登記すべき事項は本店を移転した旨とその年月日で足り、会社成立の年月日などは登記官が新所在地の登記記録に記録します。添付書面は経由申請なので旧所在地の申請書に付けたもので足りるという関係です。
新所在地で却下されると旧所在地の申請も却下とみなされます
旧所在地の登記所は、二つの申請のいずれかに却下事由があるときは両方を共に却下します。送付を受けた新所在地の登記所が新所在地における登記の申請を却下したときは、旧所在地における登記の申請は却下されたものとみなされます。旧所在地の登記官が改めて却下の決定をするのではありません。「新所在地を管轄する登記所の登記官が新所在地における登記の申請を却下したときは,旧所在地における登記の申請は,却下されたものとみなされる」という肢は正しい肢です。旧所在地の登記所は新所在地で登記をした旨の通知を受けるまで登記ができません。
送付後の取下書は新所在地の登記所に2通出します
登記実務では、申請書が新所在地の登記所に送付される前は旧所在地の登記所に、送付された後は新所在地の登記所に、両方の申請の取下書を2通提出すると扱われています。「B登記所に対し,取下書1通(A登記所及びB登記所宛ての申請をともに取り下げる旨の記載のあるもの)を提出すれば足りる」という肢は誤りで、「旧所在地を管轄する登記所に,取下書 2 通を提出しなければなりません」という解答も誤りです。本店移転の無効を原因として本店移転の登記を抹消するときも、新所在地における抹消の申請は旧所在地の登記所を経由してします。
移転の決議と移転の事実の順序は登記の日付を変えます
定款の変更を要しない本店移転で、現実に本店を移転した後に取締役会が承認の決議をしたときは、その決議の日に移転があったものとして登記を申請できます。「現実に本店を移転した後に取締役会で当該本店の移転を承認する決議をしたときは,当該決議の日に本店の移転があったものとみなして本店移転の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。取締役会が移転の時期を一定の期間として概括的に定め、その範囲内の日に移転したときは改めて承認を要せず、承認を要求する肢は誤りです。住居表示の実施で本店の表示が変わった後に新しい表示で本店移転の登記をするときも、移転の登記である以上登録免許税は課されるのが原則です。
商業登記規則 第9条第13項新所在地を管轄する登記所が前項の規定による移送を受けたときは、新所在地を管轄する登記所に同項の印鑑記録に係る印鑑の提出があつたものとみなす。ただし、当該登記所において、法第二十四条の規定により同項の登記の申請を却下すべき場合は、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 管轄外への本店移転で新所在地の申請はどこに出すか(旧所在地の登記所を経由)
- 新所在地への印鑑の提出は要るか(令和7年4月以降は要らない。印鑑記録が移送される)
- 委任状は両方の申請書に要るか(要る)
- 新所在地で却下されたとき旧所在地の申請はどうなるか(却下されたものとみなす)
- 送付後の取下げはどこに出すか(新所在地の登記所に取下書2通)
この用語が問われた肢
他の登記所の管轄区域内への本店移転の登記を申請した場合において、新所在地を管轄する登記所の登記官が新所在地における登記の申請を却下したときは、旧所在地における登記の申請は、却下されたものとみなされる。
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