司法書士に対する懲戒しほうしょしにたいするちょうかい
司法書士に対する懲戒とは、司法書士が司法書士法又はこれに基づく命令に違反したときに、法務大臣が戒告・2年以内の業務の停止・業務の禁止の処分をすることです(47条)。試験では、司法書士法人の社員が法人の業務で違反した場合に、法人と社員本人の双方が懲戒を受けうることが問われています。
司法書士に対する懲戒は、47条が定めています。懲戒権者は法務大臣で、処分は戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止の3種類です。懲戒の事由は「この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき」で、会則の遵守義務(23条)を通じて会則違反も対象になります。業務に関係しない行為でも、司法書士の品位を害するものは、品位の保持を求める2条の違反として懲戒の対象になります。令和2年7月31日までは、事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長が懲戒権者でした。

司法書士法 第47条第1項司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該司法書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 業務の禁止
法人の業務での違反には、法人と社員本人の双方が懲戒を受けることがあります
47条は司法書士個人を、48条1項は司法書士法人を、それぞれ懲戒の対象としています。社員である司法書士が法人の業務について違反行為をしたときも、その行為は司法書士としての違反でもあるので、法人が懲戒を受けるかどうかにかかわらず、社員本人も47条の懲戒を受けることがあります。「司法書士法人の社員である司法書士が当該司法書士法人の業務について司法書士法又は同法に基づく命令に違反する行為を行った場合には、当該行為について、当該司法書士法人が懲戒処分を受けることはあるが、当該行為を行った当該司法書士法人の社員である司法書士が重ねて懲戒処分を受けることはない」という肢(R5 午後 問8 ウ)は誤りです。また、「司法書士又は司法書士法人がその所属する司法書士会又は日本司法書士会連合会の会則に違反する行為を行った場合には、これらの会則の遵守義務を定めた司法書士法違反を理由に懲戒処分を受けることがある」という肢(R5 午後 問8 オ)は正しい記述です。
戒告は戒める処分で、業務の停止は2年以内、業務の禁止は登録の取消しにつながります
法務省の改正の概要は、戒告処分を「再びあやまちのないよう戒める処分」で、業務停止等の効果はないものと説明しています。業務の停止は2年以内の期間を定めてする処分で、停止の期間中は事務所の表示又はこれに類する表示をしてはならず(施行規則20条3項)、司法書士法人の社員となることもできません(28条2項1号)。業務の禁止を受けると、処分の日から3年を経過しない者として5条5号の欠格事由に当たるので、連合会は15条1項4号により登録を取り消さなければなりません。三つの処分は、効果の重さがはっきり違います。

司法書士法 第47条第1項第2号二年以内の業務の停止
処分の結果は、所属する司法書士会と連合会に通知され、官報で公告されます
法務大臣は、戒告又は業務の停止の処分をしたときはその旨を所属する司法書士会に、業務の禁止の処分をしたときはその旨を連合会と所属する司法書士会に通知します(施行規則38条)。業務の禁止は登録の取消しにつながる処分なので、登録事務を行う連合会にも通知が届きます。処分をしたときは、遅滞なく官報で公告します(51条)。懲戒の手続に入ると、法務大臣は聴聞の通知などをした後直ちに連合会に通告し、連合会は手続が結了するまで業務の廃止などによる登録の取消しができなくなります(50条)。懲戒の事由があったときから7年を経過すると、手続を開始できません(50条の2)。
司法書士法 第50条第2項日本司法書士会連合会は、司法書士について前項の通告を受けた場合においては、法務大臣から第四十七条各号に掲げる処分の手続が結了した旨の通知を受けるまでは、当該司法書士について第十五条第一項第一号又は第十六条第一項各号の規定による登録の取消しをすることができない。
処分をするのは法務大臣ですが、調査などの権限は法務局又は地方法務局の長に委任されています
71条の2は、法務大臣の権限を法務省令で定めるところにより法務局又は地方法務局の長に委任できると定めています。施行規則37条の7は、49条1項の通知の受理、49条2項の調査、50条1項の通告、60条の報告の受理を法務局又は地方法務局の長に委任しています。ただし、調査と通告については法務大臣が自ら行うことを妨げません。法務大臣は、49条3項の聴聞を行おうとするときは、調査を行った法務局又は地方法務局の長の意見を聴き、必要があれば聴聞の権限をその長に委任できます(施行規則37条の8)。処分そのものを決めるのは法務大臣で、現地の法務局は事実の調査を担います。
司法書士法 第71条の2第1項この法律に規定する法務大臣の権限は、法務省令で定めるところにより、法務局又は地方法務局の長に委任することができる。
試験ではこう問われる
- 法人の業務について違反行為をした社員は、法人とは別に重ねて懲戒処分を受けることがある(47条・48条。R5 午後 問8 ウ ×)
- 会則に違反した司法書士は、23条違反を理由に懲戒処分を受けることがある(R5 午後 問8 オ ○)
- 業務の停止の処分を受けた者が法人の社員となれないのは停止期間中だけで、期間経過後3年ではない(28条2項1号。R4 午後 問8 イ ×)
- 業務の禁止の処分を受けた者は、処分の日から3年を経過しないと司法書士となる資格を有しない(5条5号)
- 業務の停止の期間中は、事務所の表示又はこれに類する表示をしてはならない(施行規則20条3項)
- 懲戒権者は法務大臣(令和2年8月1日施行の改正前は法務局又は地方法務局の長)
この用語が問われた肢
司法書士法人の社員である司法書士が当該司法書士法人の業務について司法書士法又は同法に基づく命令に違反する行為を行った場合には、当該行為について、当該司法書士法人が懲戒処分を受けることはあるが、当該行為を行った当該司法書士法人の社員である司法書士が重ねて懲戒処分を受けることはない。
司法書士又は司法書士法人がその所属する司法書士会又は日本司法書士会連合会の会則に違反する行為を行った場合には、これらの会則の遵守義務を定めた司法書士法違反を理由に懲戒処分を受けることがある。
司法書士法に基づく業務の停止の処分を受けた司法書士は、当該業務の停止の期間が経過した日から 3 年を経過するまでの間、司法書士法人の社員となることができない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

