司法書士の事務所(二以上の事務所の禁止・事務所の表示)しほうしょしのじむしょ
司法書士の事務所とは、司法書士が法務省令の基準に従って設けなければならない業務の拠点で(20条)、司法書士は二以上の事務所を設けることができません(規則19条)。試験では、連合会への届出や名簿への登録をしても二以上の事務所は設けられないこと、入会したら会則に従って事務所の表示をしなければならないことが問われています。
司法書士の事務所について、法律は「法務省令で定める基準に従い、事務所を設けなければならない」と定めるだけです(20条)。その基準は司法書士法施行規則にあり、19条が二以上の事務所の禁止を、20条が事務所の表示を定めています。

司法書士法 第20条第1項司法書士は、法務省令で定める基準に従い、事務所を設けなければならない。
個人の司法書士は、二以上の事務所を設けることができません
施行規則19条は「司法書士は、二以上の事務所を設けることができない」とだけ定め、届出や登録による例外を置いていません。「司法書士は、日本司法書士会連合会が備える名簿に登録を受けることにより、二以上の事務所を設けることができる」という肢(R6 午後 問8 ア)も、「司法書士は,日本司法書士会連合会にあらかじめ届け出ることにより,二以上の事務所を設けることができる」という肢(R3 午後 問8 オ)も誤りです。これに対し、司法書士法人は主たる事務所のほかに従たる事務所を設けることができ(32条3項3号)、そのかわり各事務所に社員を常駐させなければなりません(39条)。
司法書士法施行規則19条司法書士は、二以上の事務所を設けることができない。
司法書士会に入会したら、会則の定めに従って事務所の表示をしなければなりません
施行規則20条1項は、司法書士は司法書士会に入会したときは、会則の定めるところにより、事務所に司法書士の事務所である旨の表示をしなければならないと定めています。「司法書士は,司法書士会に入会したときは,当該司法書士会の会則の定めるところにより,事務所に司法書士の事務所である旨を表示しなければならない」という肢(R3 午後 問8 ウ)は正しい記述です。反対に、入会していない司法書士は表示やこれに類する表示をしてはならず(同条2項)、業務の停止の処分を受けた司法書士も停止期間中は表示をしてはなりません(同条3項)。司法書士会に入会していない司法書士は3条1項1号から5号までの業務を行えない(73条1項)ので、業務を行えない状態の者に事務所の表示をさせない点で、2項と3項は共通しています。

司法書士法施行規則20条1項司法書士は、司法書士会に入会したときは、その司法書士会の会則(以下「会則」という。)の定めるところにより、事務所に司法書士の事務所である旨の表示をしなければならない。
司法書士法人の名簿には、事務所ごとに常駐する社員の氏名が記録されます
連合会は司法書士法人名簿を備えます(施行規則32条)。名簿には、主たる事務所の所在地とそこに常駐する社員の氏名、従たる事務所を設ける法人ではその所在地と常駐する社員の氏名、簡裁訴訟代理等関係業務を行う法人ではその業務を行う事務所の所在地とそこに常駐する特定社員の氏名が記録されます(施行規則33条2項)。個人の司法書士は事務所が一つに限られます。法人は複数の事務所を持てますが、事務所ごとに39条の常駐社員を置かなければならず、そのことが名簿の記載にも表れています。
事務所の所在地は名簿の登録事項で、移転すれば届出か変更の登録が要ります
事務所の所在地は、所属する司法書士会とともに司法書士名簿の登録事項です(8条1項)。登録の申請も、事務所を設けようとする地の司法書士会を経由してします(9条1項)。事務所を移すときは、同じ法務局又は地方法務局の管轄区域内なら登録事項の変更の届出(14条)で足り、管轄区域を越えるなら所属する司法書士会の変更の登録の申請(13条1項)が要ります。司法書士会が法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに設立される(52条1項)ので、事務所の所在地がどの会に属するかを決めます。
司法書士法 第8条第1項司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する司法書士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならない。
事務所では、会則に従って職印を定め、作成した書類に記名・押印します
司法書士は、会則の定めるところにより業務上使用する職印を定めなければなりません(施行規則21条)。作成した書類には、3条1項6号・7号の業務に関するものを除き、末尾又は欄外に記名し、職印を押さなければなりません(施行規則28条1項)。電磁的記録を作成したときは、職名と氏名を記録し、連合会が発行するものなど法務大臣が指定する電子証明書に係る電子署名を行います(同条2項)。施行規則20条から22条まで、24条から30条までの規定は、司法書士法人にも準用されます(施行規則37条)。
試験ではこう問われる
- 司法書士は、連合会の名簿に登録を受けても二以上の事務所を設けることはできない(規則19条。R6 午後 問8 ア ×)
- 連合会にあらかじめ届け出ても二以上の事務所を設けることはできない(規則19条。R3 午後 問8 オ ×)
- 司法書士会に入会したときは、会則の定めるところにより事務所である旨の表示をしなければならない(規則20条1項。R3 午後 問8 ウ ○)
- 業務の停止の処分を受けた司法書士は、停止期間中は事務所の表示をしてはならない(規則20条3項)
- 司法書士は会則の定めるところにより職印を定め、作成した書類に記名し職印を押す(施行規則21条・28条1項)
- 司法書士法人は従たる事務所を設けられるが、各事務所に社員を常駐させなければならない(32条3項3号・39条)
この用語が問われた肢
司法書士は、日本司法書士会連合会が備える名簿に登録を受けることにより、二以上の事務所を設けることができる。
司法書士は,司法書士会に入会したときは,当該司法書士会の会則の定めるところにより,事務所に司法書士の事務所である旨を表示しなければならない。
司法書士は,日本司法書士会連合会にあらかじめ届け出ることにより,二以上の事務所を設けることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

