懲戒の手続(通知・聴聞・除斥期間・公告)ちょうかいのてつづき
懲戒の手続とは、何人も違反事実を法務大臣に通知して措置を求めることができ(49条1項)、法務大臣が調査し、戒告と業務の停止をしようとするときも聴聞を行い(同条3項)、懲戒の事由から7年を経過すると手続を開始できない(50条の2)という一連の手続です。試験では、通知できるのが「何人も」であること、戒告にも聴聞が要ることが問われています。
懲戒の手続は、49条から51条までに定められています。端緒は誰からの通知でもよく、通知を受けた法務大臣は必要な調査をしなければなりません(49条1項・2項)。司法書士会も、所属の会員が違反すると思料するときは法務大臣に報告する義務を負います(60条)。

司法書士法 第49条第1項何人も、司法書士又は司法書士法人にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる。
違反事実の通知は、何人も法務大臣にすることができます
49条1項は、通知できる者を「何人も」と定め、依頼者や利害関係人に限っていません。通知先は法務大臣です。「何人も、司法書士又は司法書士法人に司法書士法又は同法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる」という肢(R5 午後 問8 ア)は正しい記述です。令和2年7月31日までは、通知先は司法書士又は司法書士法人の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長でした。
戒告と業務の停止をしようとするときは、聴聞を行わなければなりません
行政手続法13条1項は、許認可等を取り消す処分や資格・地位を直接はく奪する処分などには聴聞を、それ以外の不利益処分には弁明の機会の付与を求めています。49条3項は、47条1号・2号(戒告・業務の停止)、48条1項1号・2号(戒告・業務の全部又は一部の停止)の処分をしようとするときは、行政手続法の意見陳述の手続の区分にかかわらず聴聞を行うと定めています。戒告や業務の停止は、行政手続法の区分だけなら弁明の機会の付与で足りる処分になりうるので、49条3項がこれを聴聞に引き上げています。これらの処分と業務の禁止・解散の処分について、聴聞の通知は期日の1週間前までにしなければならず(49条4項)、本人の請求があれば審理は公開で行います(同条5項)。「法務大臣は、司法書士に対し、戒告の処分をしようとする場合には、当該司法書士の聴聞を行わなければならない」という肢(R5 午後 問8 エ)は正しい記述です。戒告に聴聞が要るとされたのは令和元年改正からで、それまでは業務の停止だけが聴聞の対象でした。

司法書士法 第49条第3項法務大臣は、第四十七条第一号若しくは第二号又は前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる処分をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
通知を受けた法務大臣は、調査をしなければならず、司法書士会に調査を委嘱することもできます
49条2項は、通知があったときは、法務大臣は通知された事実について必要な調査をしなければならないと定めています。この調査の権限は法務局又は地方法務局の長に委任されています(施行規則37条の7第2号。法務大臣が自ら行うことも妨げられません)。法務大臣は、懲戒処分に関し必要があるときは、司法書士・司法書士法人が保存する事件簿その他の関係資料や執務状況を調査でき(施行規則42条1項)、この調査を司法書士会に委嘱できます(同条2項)。法務局又は地方法務局の長は、違反事実の有無について、法務局が保有する登記申請書その他の関係資料の調査を管轄区域内の司法書士会に委嘱することもできます(施行規則41条の2第1項)。司法書士と司法書士法人は、正当の理由なく42条の調査を拒めません(施行規則42条4項)。
司法書士法 第49条第2項前項の規定による通知があつたときは、法務大臣は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。
聴聞の通知は期日の1週間前までにし、本人が請求すれば審理は公開されます
49条4項は、戒告・業務の停止と、業務の禁止・解散の処分について、行政手続法15条1項の通知を聴聞の期日の1週間前までにしなければならないと定めています。49条5項は、聴聞の期日における審理を、当該司法書士又は司法書士法人から請求があったときは公開により行わなければならないとしています。行政手続法20条6項は、聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き公開しないと定めています。懲戒の聴聞は、本人の請求があれば公開しなければならない点で、この原則と違います。法務大臣は、聴聞の通知を発送するなどした後、直ちに連合会に通告します(50条1項)。
司法書士法 第49条第5項前項の聴聞の期日における審理は、当該司法書士又は当該司法書士法人から請求があつたときは、公開により行わなければならない。
懲戒の事由から7年を経過すると、懲戒の手続を開始できません
50条の2は、懲戒の事由があったときから7年を経過したときは、47条又は48条1項の処分の手続を開始できないと定めています。令和元年改正で新設された除斥期間です。法務省の説明によれば、施行の際に懲戒手続が開始されていない場合には、施行前の事案にも新しい除斥期間が適用されます。処分をしたときは、法務大臣は遅滞なく官報で公告します(51条)。
司法書士法 第50条の2第1項懲戒の事由があつたときから七年を経過したときは、第四十七条又は第四十八条第一項の規定による処分の手続を開始することができない。
試験ではこう問われる
- 何人も、司法書士・司法書士法人の違反事実を法務大臣に通知し、適当な措置を求めることができる(49条1項。R5 午後 問8 ア ○)
- 法務大臣は、司法書士に戒告の処分をしようとするときも聴聞を行わなければならない(49条3項。R5 午後 問8 エ ○)
- 懲戒の事由があったときから7年を経過すると、懲戒の手続を開始できない(50条の2)
- 通知を受けた法務大臣は必要な調査をしなければならない(49条2項)
- 聴聞の審理は、本人の請求があれば公開しなければならない(49条5項)
- 懲戒処分をしたときは、法務大臣は遅滞なく官報で公告する(51条)
この用語が問われた肢
何人も、司法書士又は司法書士法人に司法書士法又は同法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる。
法務大臣は、司法書士に対し、戒告の処分をしようとする場合には、当該司法書士の聴聞を行わなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

