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司法書士法人に対する懲戒しほうしょしほうじんにたいするちょうかい

司法書士法 第2章 司法書士の義務と懲戒 過去問で3肢

司法書士法人に対する懲戒とは、法人が司法書士法又はこれに基づく命令に違反したときに、法務大臣が戒告・2年以内の業務の全部又は一部の停止・解散の処分をすることです(48条1項)。試験では、業務の一部の停止ができるので簡裁訴訟代理等関係業務だけを停止できること、法人と違反した社員の双方が懲戒されうることが問われています。

司法書士法人に対する懲戒は、48条1項が定めています。処分は戒告、2年以内の業務の全部又は一部の停止、解散の3種類で、個人の司法書士に対する処分(47条)と比べると、業務の禁止の代わりに解散があり、業務の停止を一部に限ることができます。解散の処分を受けると、法人は解散します(44条1項6号)。

司法書士法人の壁の業務の札のうち簡裁代理だけに封がされ、先生が業務停止処分書を差し出す
法務大臣は司法書士法人の業務の一部に限った停止を命じることができ、簡裁訴訟代理等関係業務だけを停止することもできます
一部の停止ができる簡裁代理だけの停止も可戒告・停止・解散懲戒権者は法務大臣
司法書士法 第48条第1項

司法書士法人がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該司法書士法人に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の全部又は一部の停止
三 解散

業務の一部の停止ができるので、簡裁訴訟代理等関係業務だけを停止することもできます

48条1項2号は「業務の全部又は一部の停止」と定めています。法務大臣は、法人の取り扱う業務のうち一部に限って停止を命じることができ、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる法人について、その業務だけを停止の対象とすることもできます。「法務大臣は、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士法人に対する懲戒処分をする場合には、当該司法書士法人の取り扱う業務のうちの簡裁訴訟代理等関係業務のみを対象としてその業務を停止する処分をすることができる」という肢(R8 午後 問8 ウ)は正しく、「法務大臣は、司法書士法人に対する懲戒処分として、当該司法書士法人の取り扱う業務のうちの一部に限って業務を停止する処分をすることはできない」という肢(R5 午後 問8 イ)は誤りです。

改正前は、従たる事務所の地の法務局長もその事務所に限った処分ができました

令和2年7月31日までの48条は、1項で主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に戒告・2年以内の業務の全部又は一部の停止・解散の処分を認め、2項で従たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に、その従たる事務所に関する違反について戒告と、その管轄区域内にある事務所についての2年以内の業務の全部又は一部の停止を認めていました。改正後は懲戒権者が法務大臣に一本化され、この2項は削られて、清算結了後のみなし存続の規定に置き換わりました。法務省は、懲戒権者の変更について、多様な事案について法務大臣の一元的な指揮の下で、より適正・迅速な懲戒を実現すると説明しています。

協会に対する懲戒は、今も法務局又は地方法務局の長が行います

70条は、48条1項・49条・51条を公共嘱託登記司法書士協会に対する懲戒に準用し、「法務大臣」を、協会の主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長と読み替えています。協会に対しても戒告・2年以内の業務の全部又は一部の停止・解散の処分ができますが、処分をするのは法務局又は地方法務局の長です。司法書士法人の懲戒権者が法務大臣に変わった後も、協会についてはこの読替えが残っています。法人に処分をしたときは、法務大臣は戒告・業務の停止なら所属する司法書士会に、解散なら連合会と所属する司法書士会に通知します(施行規則38条)。

司法書士法 第70条第1項

第二十一条の規定は協会の業務について、第四十八条第一項、第四十九条及び第五十一条の規定は協会に対する懲戒について、それぞれ準用する。この場合において、第四十八条第一項、第四十九条第一項から第三項まで及び第五十一条中「法務大臣」とあるのは、「第六十九条の二第一項に規定する法務局又は地方法務局の長」と読み替えるものとする。

法人と違反した社員の双方が懲戒を受けることがあります

社員が法人の業務について違反したときは、法人は48条により、社員本人は47条により、それぞれ懲戒の対象になります。社員だけが処分されて法人は処分されない、あるいはその逆という関係ではありません。懲戒の手続に付された法人は、清算が結了した後も、その手続が結了するまで存続するものとみなされます(48条2項)。これは令和元年改正で設けられた規定で、法務省は「懲戒逃れを防止」するためのものと説明しています。法人は清算の結了の時に所属するすべての司法書士会を退会します(58条2項)が、懲戒の手続との関係では、手続が結了するまで存続するものとみなされるので、清算の結了を理由に手続が打ち切られることはありません。

社員の違反から法人と社員本人の二本の矢印が伸び、両方が懲戒の対象と示す黒板
社員が法人の業務について違反したときは、法人と違反した社員の双方が懲戒を受けることがあります
法人は48条社員は47条清算後も手続中は存続
司法書士法 第48条第2項

前項の規定による処分の手続に付された司法書士法人は、清算が結了した後においても、この章の規定の適用については、当該手続が結了するまで、なお存続するものとみなす。

法人が解散や業務の全部の停止の処分を受けると、社員にも影響が及びます

法人が解散又は業務の全部の停止の処分を受けた場合、処分を受けた日以前30日内にその社員であった者は、処分の日から3年(業務の全部の停止のときはその停止期間)を経過するまで、他の法人の社員となることができません(28条2項2号)。

試験ではこう問われる

  1. 法務大臣は、簡裁訴訟代理等関係業務を行える法人について、その業務だけを対象に業務停止の処分ができる(48条1項2号。R8 午後 問8 ウ ○)
  2. 法人の業務の一部に限って停止する処分もできる(48条1項2号。R5 午後 問8 イ ×)
  3. 法人の業務で違反した社員も、法人とは別に懲戒処分を受けることがある(47条・48条。R5 午後 問8 ウ ×)
  4. 懲戒権者は法務大臣で、解散の処分もできる(48条1項3号)。出題当時は法務局又は地方法務局の長が懲戒権者で、解散の処分ができないとする肢は誤りとされた(H28 午後 問8 エ ×・出題当時)
  5. 協会に対する懲戒は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長が行う(70条による48条1項の読替え)
  6. 業務の全部の停止を受けた法人の処分日の社員は、停止期間を経過するまで他の法人の社員となれない(28条2項2号。H28 午後 問8 オ ○・出題当時)

この用語が問われた肢

R8 問8 ウ正しい

法務大臣は、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士法人に対する懲戒処分をする場合には、当該司法書士法人の取り扱う業務のうちの簡裁訴訟代理等関係業務のみを対象としてその業務を停止する処分をすることができる。

R5 問8 イ誤り

法務大臣は、司法書士法人に対する懲戒処分として、当該司法書士法人の取り扱う業務のうちの一部に限って業務を停止する処分をすることはできない。

R5 問8 ウ誤り

司法書士法人の社員である司法書士が当該司法書士法人の業務について司法書士法又は同法に基づく命令に違反する行為を行った場合には、当該行為について、当該司法書士法人が懲戒処分を受けることはあるが、当該行為を行った当該司法書士法人の社員である司法書士が重ねて懲戒処分を受けることはない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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