司法書士法人の業務の範囲しほうしょしほうじんのぎょうむのはんい
司法書士法人の業務の範囲は、3条1項1号〜5号の業務に加え、定款で定めるところにより、法務省令で定める財産管理・後見などの業務と、簡裁訴訟代理等関係業務を行えるというものです(29条1項)。試験では、簡裁訴訟代理等関係業務は社員に認定司法書士がいる法人に限られ、使用人にいるだけでは足りないこと(29条2項)が問われています。
司法書士法人の業務の範囲は29条が定めています。登記・供託の代理や裁判書類の作成など3条1項1号から5号までの業務は、定款の定めがなくても行えます。これに加え、定款で定めれば、法務省令で定める業務の全部又は一部(1号)と簡裁訴訟代理等関係業務(2号)を行うことができます。

司法書士法 第29条第1項司法書士法人は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
一 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部
二 簡裁訴訟代理等関係業務
定款で定めれば、管財人や後見人に就いて財産の管理や法律行為の代理をする業務も行えます
29条1項1号の法務省令で定める業務は、施行規則31条に列挙されています。当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人・管理人などに就いて他人の財産の管理・処分を行う業務(1号)、後見人・保佐人・補助人・監督委員などに就いて他人の法律行為について代理・同意・取消しを行う業務(2号)、講演会や出版物の刊行などの教育・普及の業務(3号)などです。1号・2号の業務は、当事者その他関係人の依頼だけでなく、官公署の委嘱による場合も含みます。また、地位に就く業務のほか、これらの業務を行う者を代理し若しくは補助する業務(1号)や、これらの業務を行う者を監督する業務(2号)も含まれます。

司法書士法施行規則31条1号・2号一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務 二 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
簡裁訴訟代理等関係業務は、社員に認定司法書士がいる法人に限られます
29条2項は、簡裁訴訟代理等関係業務を行える法人を、社員のうちに3条2項の司法書士がある法人(司法書士会の会員であるものに限る)に限っています。使用人に認定司法書士がいても、社員にいなければ行えません。「司法書士法人は、その社員に簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けた司法書士がいない場合であっても、その使用人に当該認定を受けた司法書士がいるときは、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる」という肢(R8 午後 問8 エ)は誤りです。条件を満たす法人では、依頼者は法人に事務を委託し、法人は依頼者に社員又は使用人である認定司法書士のうちから代理人を選任させます(30条1項)。特定社員が常駐していない事務所では、この業務を取り扱えません(40条)。
司法書士法 第29条第2項簡裁訴訟代理等関係業務は、社員のうちに第三条第二項に規定する司法書士がある司法書士法人(司法書士会の会員であるものに限る。)に限り、行うことができる。
施行規則31条は、教育・普及の業務や附帯業務なども法人の業務として挙げています
施行規則31条は、1号の財産管理の業務と2号の後見などの業務に加え、司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務(3号)、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律33条の2第1項に規定する特定業務(4号)、3条1項1号から5号までと施行規則31条1号から4号までの業務に附帯し又は密接に関連する業務(5号)を挙げています。これらは29条1項1号の「法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるもの」として定められた業務で、法人が行うには定款で定めることが要ります。
簡裁訴訟代理等関係業務の受任では、法人の責任と特定社員の責任が重なります
法人が3条1項6号の事務の委託を受けたときも、法人は、社員又は使用人である認定司法書士がその業務の執行に関し注意を怠らなかったことを証明しなければ、依頼者に対する損害賠償の責めを免れません(30条2項)。また、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする法人がこの業務に関し依頼者に負った債務を法人の財産で完済できないときは、特定社員(脱退した特定社員を含む)が連帯して弁済の責任を負います(38条4項本文)。脱退した特定社員は、その債務が脱退後の事由により生じたものであることを証明すれば責任を免れます(同項ただし書)。
司法書士法 第30条第2項司法書士法人は、前項に規定する事務についても、社員等がその業務の執行に関し注意を怠らなかつたことを証明しなければ、依頼者に対する損害賠償の責めを免れることはできない。
簡裁訴訟代理等関係業務を行う法人の定款には、社員が認定司法書士かどうかを記載します
定款には、社員の氏名と住所に加え、3条2項の司法書士であるか否かの別を記載しなければなりません(32条3項4号)。29条2項の要件、つまり社員のうちに認定司法書士がいるかどうかは、定款の記載からも確かめられることになります。簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする法人では、この業務について業務を執行し法人を代表するのは特定社員に限られ(36条2項・37条2項)、特定社員が常駐していない事務所ではこの業務を取り扱えません(40条)。
司法書士法 第32条第3項第4号社員の氏名、住所及び第三条第二項に規定する司法書士であるか否かの別
試験ではこう問われる
- 社員に認定司法書士がいない法人は、使用人に認定司法書士がいても簡裁訴訟代理等関係業務を行えない(29条2項。R8 午後 問8 エ ×)
- 同じ場面で、認定司法書士である使用人がその業務を行うこともできない(29条2項。R3 午後 問8 イ ×)
- 法人は、定款の定めにより、管財人などに就いて他人の財産の管理・処分を行う業務ができる(29条1項1号、規則31条1号。H30 午後 問8 オ ○・出題当時)
- 法人は、定款の定めにより、後見人に就任して被後見人の法律行為を代理する業務ができる(29条1項1号、規則31条2号。H26 午後 問8 イ ○・出題当時)
- 法人は、使用人である認定司法書士の業務についても、注意を怠らなかったことを証明しなければ依頼者への損害賠償を免れない(30条2項)
- 特定社員が常駐していない事務所では、簡裁訴訟代理等関係業務を取り扱えない(40条)
この用語が問われた肢
司法書士法人は、その社員に簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けた司法書士がいない場合であっても、その使用人に当該認定を受けた司法書士がいるときは、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる。
簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けた司法書士である社員がいない司法書士法人であっても,当該認定を受けた司法書士である使用人がいれば,当該司法書士である使用人が簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

