請求の併合(単純・予備的・選択的)せいきゅうのへいごう
請求の併合とは、一人の原告が一人の被告に対して数個の請求を一つの訴えで審判してもらうことです。数個の請求を並べてすべてに判決を求める単純併合、両立しない請求に順位を付けて主位的請求が認められない場合に備える予備的併合、両立する請求のどれか一つの認容を求める選択的併合があります。
貸したお金の返還と、売った品物の代金を、同じ相手に別々の訴えで求めるのは手間がかかります。そこで、数個の請求を一つの訴えにまとめて審理してもらえる仕組みがあり、これを請求の併合といいます。被告はどうせ裁判所に来るので、手続は一つのほうが双方に都合がよいからです。ただ、まとめ方には三つの形があり、どれに当たるかで、裁判所がどの請求に判決をしなければならないか、控訴審で何が審判の対象になるかが変わります。

数個の請求は、同種の訴訟手続によるものであれば、互いに関連がなくても一の訴えで併合できます
数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができます(136条)。要件は、同種の訴訟手続によること、法律上併合が禁止されていないこと、受訴裁判所が各請求について管轄を持つことの三つで、請求の基礎が同一であることは求められていません。請求の基礎の同一性は、訴えの変更の要件です。被告はいずれにせよ出頭しなければならず、審理が煩雑になれば弁論を分離すればよいので、請求どうしに関連は要らず、無関係に成立した貸金債権と売買代金債権も一の訴えで請求できます。管轄は、一つの請求について管轄権を持つ裁判所に、他の請求も併せて訴えを提起できます(7条本文。併合請求の裁判籍)。訴訟の目的の価額は各請求の価額を合算するのが原則ですが、主張する利益が共通なら合算しません(9条1項)。「一の訴えで一人に対して数個の請求をする場合において、その訴えで主張する利益が各請求について共通であるときは、各請求の価額を合算せずに、訴訟の目的の価額を算定する」という肢(R6 午後 問2 ア)は正しいです。手続の種類が違う請求でも、法律が特に併合を認めることがあります。離婚の訴えは人事訴訟の手続によりますが、人事訴訟法17条1項により、離婚原因である事実によって生じた損害の賠償請求を一の訴えで家庭裁判所にすることができます。
単純併合では、裁判所はすべての請求について判決をしなければならず、代償請求の併合も単純併合に当たります
単純併合は、両立する数個の請求を並べて、それぞれに判決を求める形です。裁判所は各請求について判決をしなければなりません。土地の明渡しと、明渡しまでの賃料相当損害金の支払は両立するので単純併合です。物の引渡請求と、その強制執行が功を奏しないときに備えた価格相当額の支払請求(代償請求)を併せる場合も、判例は本来の給付を命じるとともに執行不能のときの賠償を命じる判決ができるとしており(大連判昭和15年3月13日)、現在の給付の訴えと将来の給付の訴え(135条)の単純併合と解されています。判決で両方を認容できるからです。「動産の引渡しを求める訴えは、当該引渡しが執行不能になった場合における履行に代わる損害賠償の請求を併合して提起することができる」という肢(R8 午後 問2 イ)は正しいです。そのため、引渡請求を認容するときでも、代償請求について判決をしなければなりません。代償請求に理由がないと考えるなら、棄却の判決をすることになります。同じ理由で、代償請求を予備的請求の形にしなければならないわけでもありません。単純併合の請求は、原告が申し出ても裁判所は弁論を分離でき、「一の訴えで一人に対して数個の請求がされた場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない」という肢(R6 午後 問2 ウ)は誤りです。
- 単純併合両立する請求を並べ、すべてに判決を求めます。代償請求の併合もこれに当たります
- 予備的併合両立しない請求に順位を付け、主位的請求の認容を予備的請求の申立ての解除条件にします
- 選択的併合両立する請求のうちどれか一つの認容を求め、一つが認容されれば他の申立ては解除条件の成就で効力を失います

予備的併合では、主位的請求を認容すれば予備的請求について判決をせず、弁論の分離も許されません
予備的併合は、売買代金の支払請求に、売買が無効と判断される場合に備えて目的物の返還請求を併せるように、法律上両立しない請求に順位を付ける形です。主位的請求が認容されることを予備的請求の申立ての解除条件と構成するので、裁判所は主位的請求から判断し、主位的請求を認容するときは予備的請求について判決をしません(大判昭和16年5月23日)。売買代金請求を認容するときは、目的物返還請求を棄却する必要もありません。貸金の支払請求と、消費貸借契約が無効なときの不当利得返還請求の組合せも同じです。主位的請求を棄却するときは予備的請求の判断と一緒にしなければならないので、主位的請求だけを棄却する一部判決はできず、順位付けがある以上、弁論の分離(152条1項)も許されません。選択的併合も、数個の請求を統一して審理することが前提なので同じです。
予備的併合の控訴審では、被告だけが控訴したとき、主位的請求の部分が審判の対象になるかどうかが第一審の結論で分かれます
主位的請求を認容した第一審判決に被告が控訴すると、上訴不可分の原則により、判断されていない予備的請求も控訴審に移ります。単純併合でも同じで、「当該判決に対して被告のみが控訴をしたときは、当該訴訟のうち当該売買代金請求に係る部分は控訴審に移審しない」という肢(R8 午後 問5 ア)は誤りです。判例は、この場合に控訴審が主位的請求を排斥したうえで予備的請求について判断できるとしました(最判昭和33年10月14日)。予備的請求の基礎となる事実は主位的請求と密接に関連していて、被告の審級の利益を害さないからで、相手方の同意は要りません。逆に、主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に被告だけが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしない場合について、判例は、主位的請求に対する第一審の判断の当否は控訴審の審判の対象とならないとしました(最判昭和58年3月22日)。原告は主位的請求の棄却に不服を申し立てていないので、控訴人である被告に不利に変更できないという考え方です(不利益変更禁止の原則)。「主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしないときは、予備的請求に対する第一審判決の当否のみが控訴審の審判の対象となる」という肢(R4 午後 問5 ウ)は正しいです。この結果、控訴審が予備的請求も棄却すると原告は両方とも負けることになるので、原告は附帯控訴をしておく必要があります。

選択的併合では、被告だけが控訴しても、控訴審は認容部分を取り消すときに残りの請求を審理判断しなければなりません
選択的併合は、同じ建物の明渡しを所有権と賃貸借の終了の両方に基づいて求めるように、両立する請求のうちどれか一つの認容を求める形です。旧訴訟物理論のもとで、同じ利益について二重に債務名義ができるのを防ぐために使われてきました。一つの請求を認容すれば全部判決となり、他の請求は判断されません。判例は、債務不履行と不法行為の損害賠償請求のように二つの金銭請求を選択的に併合し、第一審が一方の請求を一部認容してその余を棄却した判決に被告だけが控訴した事案で、原告の意思は一つが棄却されれば他の請求について審判を求めるというもので全審級を通じて維持されているから、控訴審は認容部分を取り消すべきときは他の請求の当否を審理判断し、理由があれば第一審の認容額の限度で認容しなければならないとしました(最判昭和58年4月14日)。
民事訴訟法 第136条(請求の併合)
数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。
民事訴訟法 第7条(併合請求における管轄)
一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。
試験ではこう問われる
- 主位的請求棄却・予備的請求認容の判決に被告だけが控訴し原告が附帯控訴もしなければ、予備的請求の当否だけが控訴審の審判対象になる(最判昭和58年3月22日。R4 午後 問5 ウ ○)
- 単純併合の一方を棄却し他方を認容した判決に被告だけが控訴しても、全体が控訴審に移る(R8 午後 問5 ア ×)
- 動産の引渡請求に、執行不能の場合の代償請求を併合できる(大連判昭和15年3月13日。R8 午後 問2 イ ○)
- 一の訴えで数個の請求をしても、主張する利益が共通なら訴額を合算しない(9条1項。R6 午後 問2 ア ○)
- 単純併合の請求は、原告が申し出ても弁論と裁判を分離できる(R6 午後 問2 ウ ×)
- 数個の請求は同種の訴訟手続であれば一の訴えで併合でき、請求どうしの関連は要らない(136条)
- 予備的併合と選択的併合では弁論を分離できず、主位的請求を認容するときは予備的請求に判決をしない

