附帯控訴ふたいこうそ
附帯控訴とは、相手方の控訴によって開かれた控訴審で、被控訴人が口頭弁論の終結までに、第一審判決のうち自分に不利な部分の変更を求めて審判の範囲を広げる申立てです。控訴権が消滅した後でもでき、控訴が取り下げられると原則として効力を失います(293条)。
控訴した側は控訴審で不服の範囲を広げられるのに、控訴された側は第一審判決より有利な判決を求められないとしたら不公平です。そこで、控訴された側も、相手の控訴に乗る形で、自分に不利な部分の変更を求められるようにしたのが附帯控訴です。自分の控訴期間が過ぎた後でも、控訴審の口頭弁論が終わるまではできます。相手の控訴に乗る仕組みなので、相手が控訴を取り下げると、原則として一緒に消えます。

被控訴人は、控訴権が消滅した後でも、控訴審の口頭弁論の終結まで附帯控訴ができます
被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができます(293条1項)。控訴審の審判の範囲は控訴人の不服の限度に限られ(304条)、控訴人だけが不服の範囲を広げられるのでは不公平なので、被控訴人にも審判の範囲を広げる手段を与えたものです。1000万円の請求のうち700万円を認めた判決に原告だけが控訴すると、700万円の部分は審判の対象になりませんが、被告が附帯控訴をすれば700万円の部分も審判の対象になります。控訴期間が過ぎた場合だけでなく、控訴権を放棄した場合も控訴権の消滅に当たるので、附帯控訴はできます。「被控訴人は、既に自らの控訴期間が経過しているとき又は既に控訴をする権利を放棄しているときは、控訴審の口頭弁論の終結前であっても、附帯控訴をすることができない」という肢(R4 午後 問5 エ)は誤りです。
附帯控訴には控訴の利益が要らず、全部勝訴した原告も附帯控訴で請求を拡張できます
判例は、第一審で全部勝訴の判決を得た原告も、相手方がその判決に控訴した場合には、附帯控訴の方式で請求を拡張できるとしました(最判昭和32年12月13日)。附帯控訴は相手方の控訴で開かれた審判の範囲を広げるもので、独立の上訴ではないから控訴の利益を要しないと考えるのが判例・通説です。「第一審において原告の請求を全部認容する判決がされた後に、当該判決に対して被告のみが第一審判決を取り消して請求を棄却する旨の判決を求めて控訴をしたときは、被控訴人(第一審原告)は、自らの請求の拡張をするための附帯控訴をすることができない」という肢(R8 午後 問5 ウ)は誤りです。全部勝訴した原告が自ら控訴して拡張することはできないことは、上訴の利益の語で扱います。附帯控訴の性質については、上訴とは異なる特殊な申立てとみる見解が判例・通説で、これに対して附帯控訴も不服申立ての一種で不服の利益を要するとし、請求の拡張は控訴審での訴えの変更の規律によるとする見解もあります。
控訴の取下げ・却下で附帯控訴は効力を失いますが、控訴の要件を備えるものは独立した控訴とみなされます
附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失います(293条2項本文)。控訴に付随して認められる申立てだからです。控訴人は被控訴人の同意なしに控訴を取り下げられるので(292条)、附帯控訴があっても控訴の取下げを止めることはできません。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなされます(293条2項ただし書)。被控訴人が自分の控訴期間内に附帯控訴をした場合のように、それだけで控訴として通用するものまで失効させる理由が無いからです。原告の控訴の後に被告が自分の控訴期間内に附帯控訴をし、原告が控訴を取り下げた場合、その附帯控訴は、控訴期間以外の控訴の要件も備える限り、独立した控訴とみなされます。控訴の取下げそのものは、控訴の取下げの語と、訴えの取下げと控訴の取下げの語で扱います。

附帯控訴状は控訴裁判所にも提出でき、一度取り下げても口頭弁論の終結までは再び申し立てられます
附帯控訴には控訴に関する規定が適用されますが、附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることもできます(293条3項)。附帯控訴は控訴審の審理が進んでから申し立てることが多く、事件の記録はすでに控訴裁判所にあるからです。第一審裁判所に出すこともできますが、それに限られるわけではありません。判例は、附帯控訴は一旦取り下げても、口頭弁論の終結に至るまでは再び申し立てることを妨げないとしました(最判昭和38年12月27日)。終局判決後の訴えの取下げで再訴を禁じる262条2項は、判決を得ながら無にした者の蒸し返しを防ぐ趣旨で、附帯控訴にはその事態が無いからです。
上告審では請求を拡張するための附帯上告はできず、上告受理の申立てと上告の間で附帯の申立てもできません
附帯控訴の規定は上告にも準用されますが、上告審は法律審なので、事実審の控訴審と同じようには使えません。判例は、控訴審で全部勝訴の判決を得た当事者は、上告審が法律審であることに鑑み、第一審で棄却された請求の認容を求める目的であっても附帯上告をすることは許されないとしました(最判昭和54年11月16日)。また判例は、上告受理の申立てに対して附帯上告をし、又は上告に対して附帯上告受理の申立てをすることはできないとしました(最決平成11年4月23日)。上告と上告受理の申立ては理由も手続も別の制度だからです。
民事訴訟法 第293条(附帯控訴)
被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。
附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなす。
附帯控訴については、控訴に関する規定による。ただし、附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることができる。
試験ではこう問われる
- 被控訴人は、自らの控訴期間の経過後や控訴権の放棄後でも、口頭弁論の終結前なら附帯控訴ができる(293条1項。R4 午後 問5 エ ×)
- 全部勝訴した原告も、被告の控訴に附帯控訴して請求を拡張できる(最判昭和32年12月13日。R8 午後 問5 ウ ×)
- 控訴の取下げ・却下で附帯控訴は失効するが、控訴の要件を備えるものは独立した控訴とみなす(293条2項)
- 附帯控訴状は控訴裁判所にも提出でき、一旦取り下げても口頭弁論の終結まで再び申し立てられる(293条3項、最判昭和38年12月27日)
- 控訴審で全部勝訴した当事者は請求拡張のための附帯上告ができない(最判昭和54年11月16日)
- 上告受理申立てへの附帯上告、上告への附帯上告受理申立てはできない(最決平成11年4月23日)

