検証けんしょう
検証とは、裁判官が五感の作用によって人の身体や物の形状・性質・状態を直接に認識し、その結果を証拠資料とする証拠調べです。
隣の家との境界の塀が傾いているかどうか、工場の騒音がどれほどうるさいかは、話を聞いたり書類を読んだりするより、裁判官が自分の目や耳で確かめるのが一番確実です。このように裁判官が五感で物の形や状態を直接確かめて証拠にするのが検証です。現場に出向くことも多いので、裁判所の外でもでき、物を持っている人には文書と同じように提示を命じることができます。

検証は裁判官が五感で物の形状や状態を直接認識して証拠資料にする証拠調べで、申出は期日前にもできます
検証は、裁判官が視覚・聴覚・触覚などの五感の作用で、人の身体や物の形状・性質・状態を直接に認識し、その結果を証拠資料とする証拠調べです。文書でも、記載された意味内容ではなく紙質・筆跡・印影の形など物としての状態を調べるときは、書証ではなく検証になります。検証も証拠の申出によって始まり、証拠の申出は期日前にもすることができます(180条2項)。弁論準備手続の期日にできる証拠調べは文書(図面・写真など231条の物件を含む)と電磁的記録の取調べに限られ(170条2項)、検証物の証拠調べはできません。これに対し準備的口頭弁論は口頭弁論そのものなので、検証もできます。
検証物の提示や送付には文書提出命令の規定が準用され、当事者が従わなければ真実擬制、第三者なら20万円以下の過料です
検証の目的の提示又は送付には、書証の申出(219条)、文書提出命令(223条)、当事者が従わない場合の効果(224条)、送付の嘱託(226条)、留置(227条1項)の規定が準用されます(232条1項)。そのため、裁判所は検証物の所持者に提示を命ずることができます。証拠保全も証拠調べの一つなので、そこでも同じように提示を命じられます。当事者が提示命令に従わないときは、裁判所は、検証物の性状に関する相手方の主張を真実と認めることができます(232条1項・224条)。第三者が正当な理由なく提示命令に従わないときは、裁判所は、決定で、20万円以下の過料に処し(232条2項)、この決定には即時抗告ができます(同条3項)。過料は提示の「命令」に従わない場合の制裁なので、送付の嘱託に応じないだけでは過料に処されません。「文書の所持者が正当な理由なく文書送付の嘱託に応じなかった場合には、裁判所は、決定で、過料に処することができる」という肢(R7 午後 問4 オ)は誤りです。

検証は裁判所外で受命裁判官や受託裁判官にさせることができ、その結果は検証調書を書証として取り調べなくても証拠資料になります
裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外で証拠調べをすることができ、合議体の構成員に命じ(受命裁判官)、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して(受託裁判官)させることができます(185条1項)。動かせない土地や建物を調べる検証は、その典型です。裁判所外で行った検証は、その実施によって証拠調べが終わっており、結果は調書に記載されて口頭弁論で当事者が援用・陳述すれば足ります。検証調書を改めて書証として取り調べる必要はありません。
検証をするに当たって必要があれば、裁判所は職権で鑑定を命ずることができます
裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができます(233条)。機械の構造や土壌の成分のように、見ただけでは評価できない対象を専門家の知識で補うためです。当事者の申出がなくてもできる職権証拠調べの一つです。職権証拠調べができる場合の一覧は、職権証拠調べの可否の語で扱います。
民事訴訟法 第232条第1項第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条、第二百二十六条及び第二百二十七条第一項の規定は、検証の目的の提示又は送付について準用する。
民事訴訟法 第232条第2項第三者が正当な理由なく前項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
民事訴訟法 第233条(検証の際の鑑定)
裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができる。
民事訴訟法 第185条第1項裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができる。この場合においては、合議体の構成員に命じ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して証拠調べをさせることができる。
試験ではこう問われる
- 弁論準備手続の期日には検証物の証拠調べはできず、準備的口頭弁論の期日ではできる(170条2項。R2 午後 問3 エ ○・出題当時。現行の170条2項では電磁的記録に記録された情報の内容の証拠調べも弁論準備手続でできるので、文書と準文書「しか取り調べることができない」とする部分は現行法では成り立たない)
- 検証物の提示命令に従わない第三者は20万円以下の過料に処され、即時抗告ができる(232条2項・3項)
- 文書送付の嘱託に応じない所持者は過料に処されない(R7 午後 問4 オ ×)
- 当事者が提示命令に従わなければ、検証物の性状に関する相手方の主張を真実と認められる(232条1項・224条)
- 検証の申出は期日前にもでき、受命・受託裁判官に裁判所外で検証させられる(180条2項・185条1項)
- 検証に当たり、職権で鑑定を命じられる(233条。H27 午後 問4 ウ ×・出題当時)

