証拠調べの期日と場所(欠席・裁判所外・受命裁判官・集中証拠調べ)しょうこしらべのきじつとばしょ
証拠調べの期日と場所とは、証拠調べをいつ・どこで・どの裁判官が行うかについての規律のことです。証拠調べは当事者が欠席しても実施でき(183条)、相当と認めるときは裁判所外で行い受命裁判官・受託裁判官にさせることができ(185条)、証人と当事者本人の尋問は争点整理の後に集中して行います(集中証拠調べ・182条)。
証人を呼んだ日に当事者が来なかったからといって証人を帰してしまうと、証人にも裁判所にも無駄が生じます。また、遠くの病院に入院している証人や、現場でなければ説明できない証人もいます。そこで法律は、当事者が欠席しても証拠調べができること、相当なら裁判所の外でもできることを定めています。他方で、判決をする裁判官が自分で証人の様子を見ることも大切なので、外に出せる場面は限られています。

証拠調べは当事者が期日に出頭しなくても実施でき、当事者双方が欠席しても証人尋問ができます
証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができます(183条)。証拠調べは裁判所が心証を得るための手続であり、当事者には立ち会う機会が保障されていれば足りるからです。適法に呼び出されながら出頭しなかった当事者は、反対尋問の機会を自ら失ったものとして扱われます。交互尋問ができないことも、証人尋問をしない理由にはなりません。当事者双方が欠席した場合でも同じで、「証拠調べは、当事者双方が期日に出頭しない場合においても、することができる」という肢(R4 午後 問4 イ)は正しいです。申出をした当事者自身が欠席しても、採用済みの証人を尋問できます。
裁判所は相当と認めるときは裁判所外で証拠調べができ、合議体の構成員や他の裁判所の裁判官にさせることもできます
裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができ、この場合には合議体の構成員に命じて(受命裁判官)、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して(受託裁判官)、証拠調べをさせることができます(185条1項)。現場の検証や、入院中の証人の尋問などが例です。検証物の所在地の裁判所に嘱託して、受託裁判官に裁判所外で検証させることもできます。裁判所外の証拠調べを受訴裁判所の構成員全員で行う必要はありません。受命裁判官・受託裁判官が証人尋問をするときは、裁判所と裁判長の職務をその裁判官が行います(206条)。相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、裁判所外の証拠調べを映像と音声の送受信による方法で行うこともできます(185条3項)。
受命裁判官や受託裁判官に裁判所外で証人を尋問させられるのは195条の四つの場合に限られ、正当な理由のない不出頭は含まれません
証人尋問は受訴裁判所が法廷で直接行うのが原則なので、受命裁判官・受託裁判官に裁判所外で証人を尋問させられるのは、①証人が受訴裁判所に出頭する義務がないとき又は正当な理由により出頭できないとき、②出頭に不相当な費用又は時間を要するとき、③現場で尋問することが事実の発見に必要なとき、④当事者に異議がないときに限られます(195条)。正当な理由なく出頭しない証人は、過料や勾引で出頭させるべきもので、出向いて尋問する理由にはなりません。さらに、当事者と尋問すべき証人等が著しく多数の大規模訴訟では、当事者に異議がないときは、受命裁判官に裁判所内で証人又は当事者本人の尋問をさせることができます(268条)。この場合は裁判所外である必要がありません。
- 証人に出頭義務がない・正当な理由で出頭できない受命・受託裁判官に裁判所外で尋問させられます(195条1号)
- 出頭に不相当な費用・時間がかかる同じです(195条2号)
- 現場での尋問が事実発見に必要同じです(195条3号)
- 当事者に異議がない同じです(195条4号)
- 正当な理由なく出頭しない含まれません。過料・勾引で出頭させます
- 大規模訴訟で当事者に異議がない受命裁判官に裁判所内で証人・当事者本人を尋問させられます(268条)

証人と当事者本人の尋問は争点整理が終わった後に集中して行い、文書などはそれより前に調べます
証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければなりません(182条)。何をめぐって争っているかが固まってから、関係する人証を一度にまとめて調べた方が、的確な心証を得られるからです。集中証拠調べの対象は人証なので、文書や検証物の取調べは争点整理の段階で先に行うのが原則です。弁論準備手続の期日では文書と電磁的記録の証拠調べはできますが(170条2項)、証人尋問や当事者尋問はできず、その詳細は争点整理の各語で扱います。
裁判官の交代や弁論の併合があったときは、当事者の申出があれば証人をもう一度尋問しなければなりません
単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合に、交代前に尋問した証人について当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所はその尋問をしなければなりません(249条3項)。証言は内容だけでなく証人の態度からも心証を得るものだからです。合議体3人のうち2人が交代した場合も、過半数の交代に当たります。この規定の対象は証人であり、当事者本人は含まれません。また、裁判所は一度尋問を終えた証人についても、申出の立証事項の範囲内で職権により再尋問できるとされています(最判昭和30年7月14日)。当事者を異にする事件の口頭弁論を併合した場合、併合前に尋問した証人について、尋問の機会がなかった当事者が申し出たときはその尋問をしなければならず(152条2項)、申出がなければ尋問する必要はありません。「裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない」という肢(R6 午後 問2 オ)は正しいです。併合前の証拠調べの結果は、併合後の全事件について当初の性質のまま証拠資料となり(最判昭和41年4月12日)、再尋問をしても併合前の証言が資料でなくなるわけではありません。弁論の更新手続そのものは直接主義の語で扱います。
民事訴訟法 第182条(集中証拠調べ)
証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならない。
民事訴訟法 第183条(当事者の不出頭の場合の取扱い)
証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。
民事訴訟法 第249条第3項単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
試験ではこう問われる
- 証拠調べは、当事者双方が期日に出頭しなくてもできる(183条。R4 午後 問4 イ ○)
- 当事者を異にする事件の弁論を併合したときは、併合前に尋問した証人を、尋問の機会がなかった当事者の申出により尋問しなければならない(152条2項。R6 午後 問2 オ ○)
- 少額訴訟では、相当と認めるときは電話会議の方法で証人を尋問できる(372条3項。R6 午後 問5 エ ○)
- 受命・受託裁判官に裁判所外で証人尋問をさせられるのは195条の場合に限られ、正当な理由なく出頭しない場合は含まれない
- 大規模訴訟では、当事者に異議がなければ受命裁判官に裁判所内で尋問させられる(268条)
- 証人と当事者本人の尋問は、できる限り争点整理の後に集中して行う(182条)
- 単独の裁判官の交代・合議体の過半数の交代後に申出があれば証人を再尋問し、当事者本人は対象外である(249条3項)

