文書提出命令の手続と不服申立てぶんしょていしゅつめいれいのてつづきとふふくもうしたて
文書提出命令とは、裁判所が、当事者の申立てに基づき、提出義務を負う文書の所持者に対し、決定でその文書の提出を命ずることです。申立ての記載事項と文書の特定(221条・222条)、審理と命令(223条1項〜6項)、即時抗告(223条7項)の手続が定められています。
相手方や第三者が持っている文書を出させたいとき、当事者は裁判所に文書提出命令を申し立てます。ただ、相手の手元にある文書の正確な名前や内容は、外から見ては分からないことが多いものです。また、提出を命じられる側にも秘密を守る利益があります。そこで法律は、文書の特定を助ける手続、秘密かどうかを裁判官だけが見て判断する手続、命令や却下に不服がある者の即時抗告を用意して、双方の利益を調整しています。

申立ては文書の表示・趣旨・所持者・証明すべき事実・提出義務の原因を明らかにしてし、表示と趣旨の特定が著しく困難なら識別できる事項で足ります
文書提出命令の申立ては、文書の表示、文書の趣旨、文書の所持者、証明すべき事実、文書の提出義務の原因を明らかにしてしなければなりません(221条1項)。220条4号の一般義務を原因とする申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければできません(同条2項)。自分で文書を出せるときや送付の嘱託で足りるときにまで一般義務を使わせない趣旨です。文書の表示又は趣旨を明らかにすることが著しく困難であるときは、申立ての時には、それに代えて文書の所持者がその文書を識別できる事項を明らかにすれば足ります(222条1項前段)。この場合、申立人は、所持者に表示と趣旨を明らかにするよう求めることを裁判所に申し出なければならず(同項後段)、裁判所は、申立てに理由がないことが明らかな場合を除き、所持者にそれを求めることができます(同条2項)。
裁判所は理由があると認めれば決定で提出を命じ、一部を除いた命令もでき、第三者に命じるときはその第三者を審尋します
裁判所は、申立てを理由があると認めるときは、決定で文書の所持者に提出を命じます(223条1項前段)。取り調べる必要がないと認める部分や提出義務を認められない部分があるときは、その部分を除いて提出を命ずることができます(同項後段)。提出義務があっても、証拠調べの必要がない文書は取り調べなくてよいので(181条1項)、必要性を欠くことを理由に申立てを却下することもできます。「挙証者が文書の所持者に対してその閲覧を求めることができる場合において、証拠調べの必要性を欠くときは、文書提出命令の申立てを却下することができる」という肢(R8 午後 問3 ア)は正しいです。第三者に提出を命じようとするときは、その第三者を審尋しなければなりません(223条2項)。第三者は訴訟の当事者ではないので、命令の前に言い分を聴く機会を保障する趣旨です。「裁判所は,第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には,その第三者を審尋しなければならない」という肢(R3 午後 問4 ウ)は正しいです。
公務秘密文書は監督官庁の意見を聴き、国の安全などを理由とする意見は相当の理由があると認めるに足りないときに限り提出を命じられます
公務員の職務上の秘密に関する文書について4号を原因とする申立てがあったときは、裁判所は、申立てに理由がないことが明らかなときを除き、その文書が4号ロに当たるかについて監督官庁の意見を聴かなければなりません(223条3項)。監督官庁が、国の安全が害されるおそれや、犯罪の捜査・公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれを理由に4号ロに当たるという意見を述べたときは、裁判所は、その意見に相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、提出を命ずることができます(同条4項)。高度な公益については監督官庁の判断を尊重し、裁判所の審査を相当性に絞る趣旨です。意見が出れば命令が一切できなくなるわけではありません。
インカメラ手続は4号イからニの該当性を判断するためにでき、4号ホや1号から3号の判断には使えません
裁判所は、文書が4号イからニのいずれかに当たるかを判断するため必要があると認めるときは、所持者に文書を提示させることができ、このとき誰も提示された文書の開示を求めることができません(223条6項)。裁判官だけが文書を見て秘密に当たるかを判断するので、インカメラ手続と呼ばれます。4号ロの公務秘密文書の判断にも使えるので、労働基準監督署の調査報告書について、その判断のために国に提示させることができます。4号ホの刑事事件記録かどうかは記載内容を見なくても外形で判断できるので、対象から外されています。1号から3号の判断にも使えません。インカメラ手続で見た内容は証拠調べの結果ではないので、提出義務なしとして申立てを却下したときは、閲読しなかったものとして心証を形成しなければなりません。

申立てについての決定には即時抗告ができますが、証拠調べの必要性を理由とする不服や、申立人でない本案の当事者の即時抗告は許されません
文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができます(223条7項)。提出義務がないことを理由に申立てを却下した決定にも即時抗告ができます。命令を受けた第三者も、自らの提出義務を争って即時抗告ができるので、「第三者に対して文書提出命令がされた場合には、当該第三者は、即時抗告をすることができない」という肢(R8 午後 問3 エ)は誤りです。他方、判例は、証拠調べの必要性を欠くことを理由に申立てを却下した決定に対しては、必要性があることを理由として独立に不服を申し立てることはできないとしました(最決平成12年3月10日)。必要性の判断は受訴裁判所に委ねられているからです。「証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては,その必要性があることのみを理由として即時抗告をすることができる」という肢(R3 午後 問4 オ)は誤りです。同じ理由で、文書提出命令に対して必要性がないことを理由に即時抗告することもできません。さらに判例は、即時抗告は申立人と所持者との間で提出義務の存否を争う機会を与えたものであるから、第三者に対する文書提出命令に、申立人でない本案訴訟の当事者は即時抗告できないとしました(最決平成12年12月14日)。「第三者に対してされた文書提出命令に対し、当該文書提出命令の申立人ではない本案事件の当事者は、即時抗告をすることができる」という肢(R7 午後 問4 イ)は誤りです。即時抗告があっても、裁判所は本案の訴訟手続を停止しなければならないわけではありません。命令に従わない当事者には真実擬制(224条)、第三者には20万円以下の過料(225条)があり、第三者が従わなくても申立人の主張を真実と認めることはできません。当事者は過料の対象ではないので、「訴訟の当事者が文書提出命令に従わないときは,裁判所は,決定で,過料に処する」という肢(R3 午後 問4 エ)は誤りです。この効果の一覧は、証拠調べに協力しない者への効果の語で扱います。
- 提出義務なしを理由とする却下申立人が即時抗告できます(223条7項)
- 必要性なしを理由とする却下必要性ありとして不服を申し立てられません(最決平成12年3月10日)
- 提出命令所持者が即時抗告できますが、必要性がないことは理由にできません
- 第三者への提出命令申立人でない本案の当事者は即時抗告できません(最決平成12年12月14日)
- 即時抗告の効果本案の訴訟手続は停止しません
民事訴訟法 第221条第1項文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 文書の表示
二 文書の趣旨
三 文書の所持者
四 証明すべき事実
五 文書の提出義務の原因
民事訴訟法 第223条第2項裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。
民事訴訟法 第223条第6項裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
民事訴訟法 第223条第7項文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
試験ではこう問われる
- 第三者に提出を命じようとするときは、その第三者を審尋しなければならない(223条2項。R3 午後 問4 ウ ○)
- 証拠調べの必要性を欠くときは、提出義務があっても申立てを却下できる(181条1項。R8 午後 問3 ア ○)
- 必要性を欠くとした却下決定に、必要性があることのみを理由として即時抗告はできない(最決平成12年3月10日。R3 午後 問4 オ ×)
- 第三者への提出命令に、申立人でない本案の当事者は即時抗告できない(最決平成12年12月14日。R7 午後 問4 イ ×)
- 提出を命じられた第三者は即時抗告ができる(223条7項。R8 午後 問3 エ ×)
- 当事者が命令に従わなければ真実擬制、第三者なら20万円以下の過料で、当事者は過料に処されない(224条・225条。R3 午後 問4 エ ×)
- 国の安全等を理由とする監督官庁の意見があっても、相当の理由があると認めるに足りないときは提出を命じられる(223条4項。H25 午後 問4 イ ×・出題当時)
- インカメラ手続は4号イ〜ニの判断にでき、4号ホや1号〜3号の判断にはできない(223条6項)

