判決の自己拘束力と更正決定・変更判決はんけつのじここうそくりょくとこうせいけっていへんこうはんけつ
判決の自己拘束力とは、判決を言い渡した裁判所自身も、その判決を撤回したり変更したりできなくなる効力です。例外として、計算違い・誤記などの明白な誤りを正す更正決定(257条)と、法令違反を言渡し後1週間以内に正す変更の判決(256条)があります。
一度言い渡した判決を、裁判所が後から「やはり考え直した」と変えられるなら、当事者はいつまでも結論を信頼できません。そこで判決は、言渡しの時から裁判所自身も縛ります。ただ、金額の計算違いや当事者の名前の書き間違いまで直せないと、強制執行や登記で困ります。法令の適用を誤ったことに裁判所がすぐ気づいたときも、上訴させるより自分で直す方が当事者のためになります。そのための限られた出口が、更正決定と変更の判決です。

判決を言い渡した裁判所は、自らその判決を撤回・変更できず、例外は更正決定と変更の判決の2つです
判決は言渡しによって効力を生じ(250条)、その時から言い渡した裁判所自身もその判決に拘束されます。これを判決の自己拘束力といい、裁判の安定と当事者の信頼を守る趣旨です。訴訟の指揮に関する決定・命令がいつでも取り消せる(120条)のとは対照的です。自己拘束力の例外は、明白な誤りを正す更正決定(257条)と、法令違反を正す変更の判決(256条)の2つで、更正決定だけが例外ではありません。
- 対象更正決定は計算違い・誤記その他これらに類する明白な誤り、変更の判決は法令の違反です
- 時期更正決定はいつでも(判決の確定後も)、変更の判決は言渡し後1週間以内で判決の確定前に限ります
- 手続更正決定は申立てにより又は職権で決定でし、変更の判決は口頭弁論を経ないで判決でします
- 不服申立て更正決定には即時抗告ができますが、判決に適法な控訴があればできません。変更の判決は判決なので上訴で争います
更正決定は表示の明白な誤りを正すものなので、申立てがなくても職権で、判決の確定後でもいつでもできます
判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができます(257条1項)。更正は、裁判所の判断の中身を変えるのではなく、判断と判決の表示の食い違いを正すにすぎないので、自己拘束力にも既判力にも触れません。そのため時期の制限がなく、判決が確定した後でもできます。職権でもできるので、「判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがある場合には、裁判所は、当事者の申立てがないときであっても、更正決定をすることができる」という肢(R7 午後 問5 エ)は正しいです。決定にも判決に関する規定が性質に反しない限り準用されるので(122条)、「決定に計算違い,誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは,裁判所は,申立てにより又は職権で,いつでも更正決定をすることができる」という肢(R3 午後 問5 オ)も正しいです。更正決定に対しては即時抗告ができ(同条2項本文)、更正の申立てを不適法として却下した決定にも即時抗告ができます(同条3項本文)。ただし、判決に適法な控訴があったときは、控訴審で誤りを正せるので即時抗告はできません(同条2項・3項ただし書)。

法令違反は更正決定では正せず、言渡し後1週間以内に限り、口頭弁論を経ないで変更の判決をします
判決の判断の中身に法令の違反があるときは、明白な表示の誤りではないので更正決定の対象になりません。裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後1週間以内に限り、変更の判決をすることができます(256条1項本文)。ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するために事件について更に弁論をする必要があるときはできません(同項ただし書)。法令違反は更正決定の対象にならず、変更の判決には期間の制限があります。変更の判決は、確定した訴訟資料を前提に法令の適用だけを誤ったことが記録上明らかな場合に許されるものなので、口頭弁論を経ないでします(同条2項)。必要的口頭弁論(87条1項本文)の明文の例外です。「裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、口頭弁論を経て、変更の判決をすることができる」という肢(R7 午後 問5 オ)は誤りです。
民事訴訟法 第256条第1項裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後一週間以内に限り、変更の判決をすることができる。ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するため事件につき更に弁論をする必要があるときは、この限りでない。
民事訴訟法 第256条第2項変更の判決は、口頭弁論を経ないでする。
民事訴訟法 第257条第1項判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
試験ではこう問われる
- 判決の明白な誤りは、当事者の申立てがなくても職権で更正決定ができ、判決の確定後もできる(257条1項。R7 午後 問5 エ ○)
- 決定の明白な誤りにも、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定ができる(122条・257条1項。R3 午後 問5 オ ○)
- 変更の判決は口頭弁論を経ないでする(256条2項。R7 午後 問5 オ ×)
- 変更の判決は、法令違反を発見したとき言渡し後1週間以内に限り、確定前で更に弁論を要しない場合にできる(256条1項)
- 言い渡した判決は裁判所自身も撤回・変更できず、例外は更正決定と変更の判決の2つで、法令違反は更正決定の対象にならない
- 更正決定と更正の申立ての却下決定には即時抗告ができるが、判決に適法な控訴があればできない(257条2項・3項)

