書面による準備手続と進行協議期日しょめんによるじゅんびてつづきとしんこうきょうぎきじつ
書面による準備手続とは、当事者の意見を聴いて事件を付し、当事者の出頭なしに準備書面の提出等と電話会議での協議によって争点及び証拠の整理をする手続です。進行協議期日とは、民事訴訟規則に基づき、証拠調べと争点との関係の確認など訴訟の進行に必要な事項を協議する期日です。
当事者が遠方に住んでいて、たびたび裁判所に来るのが難しい事件では、書面のやり取りを中心に争点を整理するほうが合理的です。書面による準備手続は、当事者が出頭しないまま準備書面の提出と電話会議での協議で争点と証拠を整理する手続です。これとは別に、規則には、争点整理ではなく審理の進め方を打ち合わせるための進行協議期日があります。両者は目的が違うので、できることも終わった後の扱いも違います。

書面による準備手続は当事者の意見を聴いて付し、当事者が出頭しないまま準備書面の提出等で争点と証拠を整理します
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続に付することができます(175条)。この手続は、当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続と定義されています。書面のやり取りが中心になるので、裁判長は準備書面の提出等をすべき期間(162条1項)を必ず定めなければなりません(176条1項)。弁論準備手続では、162条の期間を定めるかは裁量です。令和4年改正前は、書面による準備手続は裁判長が行い、高等裁判所に限って受命裁判官に行わせることができましたが、現在は地方裁判所でも受命裁判官に行わせることができます(176条の2第1項)。
電話会議で当事者双方と協議できますが、協議は期日ではないので、証拠調べも口頭での和解もできません
裁判所は、必要があると認めるときは、電話会議の方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について当事者双方と協議をすることができ、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができます(176条2項)。当事者はいずれも裁判所に出頭しなくてよいので、「弁論準備手続においては,当事者の一方が期日に出頭した場合に限り,裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法により,期日における手続を行うことができるが,書面による準備手続においては,この方法により協議をすることができない」という肢(R2 午後 問3 ウ)は、後段の書面による準備手続の点でも誤りです。他方、この協議は期日ではなく、弁論準備手続の170条2項にあたる規定もないので、文書の証拠調べはできません。「文書の証拠調べは、書面による準備手続においてすることができない」という肢(R7 午後 問3 ウ)は正しいです。弁論準備手続の期日では文書の証拠調べができる点と対照的です。協議は和解の期日でもないので、口頭で訴訟上の和解を成立させることはできません。弁論準備手続の電話会議に当事者の一方の出頭を求めた旧規定を前提にした肢は、手続のIT化の語で読み替えています。

終結に当たり要約書面を出させることができ、終結後の口頭弁論で証明すべき事実を確認し、その後の攻撃防御方法には説明を求められます
裁判長は、相当と認めるときは、書面による準備手続を終結するに当たり、当事者に争点及び証拠の整理の結果を要約した書面を提出させることができます(176条3項・165条2項)。書面による準備手続では当事者と顔を合わせていないので、証明すべき事実の確認は終結後の口頭弁論の期日で行います(177条)。要約書面の陳述又はこの確認がされた後に攻撃防御方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、それより前に提出できなかった理由を説明しなければなりません(178条)。準備的口頭弁論(167条)・弁論準備手続(174条)と同じく、三つの争点整理手続のすべてに説明義務があります。
進行協議期日は審理の進め方を打ち合わせる規則上の期日で、争点整理の手続ではないので終了後の説明義務はありません
進行協議期日は、民事訴訟規則95条が定める期日で、口頭弁論における証拠調べと争点との関係の確認その他訴訟の進行に関し必要な事項について協議を行い、口頭弁論の審理を充実させることを目的とします。民事訴訟法には規定がありません。争点及び証拠の整理をする手続ではないので、当事者がここで主張や証拠を提出することは予定されておらず、終了後に攻撃防御方法を出しても167条・174条・178条のような説明義務はありません。進行協議期日でも訴えの取下げや請求の放棄・認諾をすることはできますが、請求の放棄・認諾の書面を出して欠席した当事者について陳述を擬制することはできないとされています。電話会議を利用することもできます。
民事訴訟法 第175条(書面による準備手続の開始)
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
民事訴訟法 第176条第1項裁判長は、書面による準備手続を行う場合には、第百六十二条第一項に規定する期間を定めなければならない。
民事訴訟法 第176条の2第1項裁判所は、受命裁判官に書面による準備手続を行わせることができる。
試験ではこう問われる
- 書面による準備手続は相当と認めるとき当事者の意見を聴いて付す(175条)。裁判長は準備書面の提出等の期間を定めなければならない(176条1項)
- 受命裁判官に行わせられる(176条の2)。地方裁判所でも受命裁判官が主宰できる
- 電話会議で当事者双方と協議でき、双方とも出頭しなくてよい(176条2項、R2 午後 問3 ウ ×)
- 協議は期日ではないので、文書の証拠調べはできず(R7 午後 問3 ウ ○)、口頭での和解もできない
- 終結に当たり裁判長は要約書面を出させられる(176条3項・165条2項)。証明すべき事実の確認は終結後の口頭弁論で行い(177条)、その後の攻撃防御方法には説明義務がある(178条)
- 進行協議期日は規則上の期日で争点整理の手続ではなく、終了後の攻撃防御方法に説明義務はない

