争点整理三手続の比較(準備的口頭弁論・弁論準備手続・書面による準備手続の対照表)そうてんせいりさんてつづきのひかく
争点整理三手続とは、争点及び証拠の整理のために用意された準備的口頭弁論・弁論準備手続・書面による準備手続のことです。準備的口頭弁論だけが口頭弁論であることから、公開の有無、意見聴取の要否、主宰する者、できる証拠調べ、結果の陳述の要否に違いが生じます。
争点整理の手続には、準備的口頭弁論・弁論準備手続・書面による準備手続の三つがあります。どれも集中証拠調べの前に争点と証拠を絞り込むための手続ですが、公開の法廷で行うか、非公開の部屋で行うか、書面と電話で行うかが違うため、意見聴取の要否、受命裁判官、できる証拠調べ、結果の陳述の要否が手続ごとに変わります。違いはすべて、その手続が口頭弁論かどうかから説明できます。

準備的口頭弁論だけが口頭弁論なので、公開で、意見聴取が要らず、何でもでき、結果の陳述も要りません
三つの手続の違いは、準備的口頭弁論が口頭弁論そのものであり、弁論準備手続と書面による準備手続は口頭弁論ではないという点から出てきます。準備的口頭弁論は口頭弁論の期日を開くだけなので当事者の意見を聴く必要はありませんが(164条)、弁論準備手続(168条)と書面による準備手続(175条)は口頭弁論の外で整理をするので、当事者の意見を聴いて付します。どれも同意は要らないので、「裁判所は,当事者の同意がない場合であっても,準備的口頭弁論を行うことができるが,当事者の同意がない場合には,事件を弁論準備手続に付することができない」という肢(R2 午後 問3 ア)は誤りです。準備的口頭弁論で出た資料はそのまま訴訟資料になるのに対し、弁論準備手続の資料は口頭弁論で結果を陳述して初めて訴訟資料になります(173条)。「当事者は、準備的口頭弁論終了後の口頭弁論の期日において、準備的口頭弁論の結果を陳述しなければならない」という肢(R7 午後 問3 エ)は誤りです。弁論準備手続の期日は公開しないので、「準備的口頭弁論の期日は,裁判所の許可を受けた者でなくても傍聴することができるが,弁論準備手続の期日は,裁判所の許可を受けた者でなければ傍聴することができない」という肢(R2 午後 問3 イ)は正しいです。
- 公開準備的口頭弁論は公開。弁論準備手続は非公開で、相当と認める者の傍聴を許せる(169条2項)。書面による準備手続は期日自体がない
- 付すときの当事者の関与準備的口頭弁論は不要(164条)。弁論準備手続(168条)・書面による準備手続(175条)は意見聴取。同意はどれも要らない
- 主宰する者準備的口頭弁論は受訴裁判所(受命裁判官は不可)。弁論準備手続は受命裁判官も可(171条1項)。書面による準備手続は受訴裁判所が行い(期間の指定は裁判長。176条1項)、受命裁判官も可(176条の2。旧規定は裁判長が行い、高裁のみ受命裁判官)
- 当事者の立会い準備的口頭弁論・弁論準備手続は当事者双方を呼び出し、双方が立ち会える期日で行う(169条1項)。書面による準備手続は当事者の出頭なしに行う
- できる証拠調べ準備的口頭弁論は全部(証人尋問・当事者尋問・検証も可)。弁論準備手続は文書・電磁的記録などに限る(170条2項)。書面による準備手続はできない
- 電話会議準備的口頭弁論は不可(口頭弁論としてウェブ会議は可。87条の2)。弁論準備手続は可(170条3項。旧規定は一方の出頭が要件)。書面による準備手続は協議に使える(176条2項)
- 結果の陳述弁論準備手続だけ必要(173条)
- 終了・終結後の説明義務三つとも相手方の求めで説明(167条・174条・178条)。進行協議期日にはない
- 付する裁判の取消し弁論準備手続は双方の申立てがあれば取り消さなければならない(172条ただし書)
主宰する者と立会いは、準備的口頭弁論は受訴裁判所が双方を呼び出して行い、弁論準備手続は受命裁判官にも行わせられます
準備的口頭弁論を受命裁判官に行わせる規定はなく、受訴裁判所の構成員全員が関与します。どちらも当事者双方に立会いの機会を与えなければなりません。書面による準備手続は、令和4年改正で地方裁判所でも受命裁判官に行わせられるようになりました(176条の2)。書面による準備手続では裁判長が準備書面の提出期間を必ず定めますが(176条1項)、弁論準備手続では任意です。
できる証拠調べは、準備的口頭弁論は全部、弁論準備手続は文書など、書面による準備手続はなしと段階的に狭くなります
準備的口頭弁論では証人尋問・当事者尋問も検証もできますが、弁論準備手続では文書・電磁的記録の証拠調べと期日外にできる裁判に限られます(170条2項)。弁論準備手続の期日では、証人尋問・当事者尋問も検証物の証拠調べもできません。弁論準備手続でも文書は調べられますが、書面による準備手続では調べられず、「文書の証拠調べは、書面による準備手続においてすることができない」という肢(R7 午後 問3 ウ)は正しいです。弁論準備手続では、証人の採否の決定はできても証人尋問はできません。釈明処分は口頭弁論で行え、弁論準備手続にも準用される(170条5項・151条)ので、両手続で当事者本人の出頭を命ずることができます。

電話会議は準備的口頭弁論では使えず、弁論準備手続は双方不出頭でも使え、書面による準備手続は協議に使えます
音声だけの電話会議で行えるのは、審尋の期日(87条の2第2項)、弁論準備手続の期日(170条3項)、書面による準備手続の協議(176条2項)です。準備的口頭弁論は口頭弁論なので電話会議では行えず、ウェブ会議によります。書面による準備手続の協議には電話会議を使えるので、「弁論準備手続においては,当事者の一方が期日に出頭した場合に限り,裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法により,期日における手続を行うことができるが,書面による準備手続においては,この方法により協議をすることができない」という肢(R2 午後 問3 ウ)は誤りです。現在は弁論準備手続にも一方の出頭は要りません。弁論準備手続の期日では電話会議で関与した当事者が和解をすることができますが、書面による準備手続の協議は期日ではないので、口頭で和解をすることはできません。弁論準備手続に一方の出頭を求めていた旧規定を前提に、書面による準備手続と比べる肢の読み替えは手続のIT化の語で扱っています。
終了・終結の場面では、準備的口頭弁論は当事者の不出頭で終了でき、弁論準備手続は双方の申立てで取り消さなければなりません
準備的口頭弁論は、当事者が期日に出頭しないときや準備書面を期間内に出さないときは終了できます(166条)。弁論準備手続に付する裁判は、相当と認めるとき申立てにより又は職権で取り消せ、双方の申立てがあれば取り消さなければなりません(172条)。三つの手続とも、終了・終結後に攻撃防御方法を出した当事者は、相手方の求めがあれば理由を説明しなければなりません(167条・174条・178条)。「準備的口頭弁論終了後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない」という肢(R7 午後 問3 オ)は正しいです。進行協議期日は争点整理の手続ではないので、協議後の攻撃防御方法に説明義務はありません。
民事訴訟法 第173条(弁論準備手続の結果の陳述)
当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
民事訴訟法 第171条第1項裁判所は、受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる。
試験ではこう問われる
- 準備的口頭弁論は同意も意見聴取も要らず、弁論準備手続(168条)と書面による準備手続(175条)も同意は要らず意見聴取で足りる(R2 午後 問3 ア ×)。付する裁判に即時抗告はできない(R7 午後 問3 ア ×)
- 準備的口頭弁論は公開で傍聴に許可が要らず、弁論準備手続は許可を受けた者が傍聴できる(R2 午後 問3 イ ○)。当事者が申し出た者は支障のおそれがない限り傍聴を許す(169条2項、R7 午後 問3 イ ○)
- 受命裁判官は弁論準備手続(171条1項)と書面による準備手続(176条の2)で可、準備的口頭弁論は不可である
- 証拠調べは準備的口頭弁論で全部、弁論準備手続は文書など(170条2項)、書面による準備手続では文書の証拠調べもできない(R7 午後 問3 ウ ○)
- 電話会議は準備的口頭弁論で不可、弁論準備手続で可(一方の出頭不要)、書面による準備手続の協議で可である(R2 午後 問3 ウ ×)
- 結果の陳述は弁論準備手続だけ必要で(173条)、準備的口頭弁論は不要である(R7 午後 問3 エ ×)
- 三手続とも終了・終結後も攻撃防御方法を出せ(R2 午後 問3 オ ×)、相手方の求めがあれば理由を説明する(167条・174条・178条、R7 午後 問3 オ ○)。進行協議期日には説明義務がない

