釈明処分(151条)しゃくめいしょぶん
釈明処分とは、裁判所が訴訟関係を明瞭にするため、当事者本人の出頭、当事者のため事務を処理する者の陳述、文書の提出・留置き、検証・鑑定、調査の嘱託を命じることができる処分のことです(151条1項)。弁論準備手続にも準用されます。
代理人の弁護士に事情を尋ねても、細かい取引の経緯までは分からないことがあります。そんなとき、裁判所が本人や会社の担当者を呼んで直接話を聞いたり、関係する書類を出させたりできれば、何が争いになっているのかが早くはっきりします。そこで151条は、裁判所が訴訟関係を明瞭にするために、本人の出頭や書類の提出などを命じられる「釈明処分」を定めています。問いを発するだけの釈明権より一歩進んだ、裁判所の具体的な処分です。

裁判所は訴訟関係を明瞭にするため、本人の出頭、事務担当者の陳述、文書の提出、検証・鑑定、調査の嘱託などを命じることができます
151条1項は、裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次の処分をすることができると定めます。当事者本人又はその法定代理人に口頭弁論の期日への出頭を命じること(1号)、口頭弁論の期日に当事者のため事務を処理し又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること(2号)、訴訟書類や訴訟で引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提出させること(3号)、提出された文書等を裁判所に留め置くこと(4号)、検証をし又は鑑定を命じること(5号)、調査を嘱託すること(6号)です。調査の嘱託も、6号に挙がっているので釈明処分としてできます。令和4年改正で3号には、訴訟でその記録された情報の内容を引用した電磁的記録で当事者が利用する権限を有するものも加わり、その提出は記録媒体を出す方法か電子情報処理組織を使う方法によります(同条2項)。釈明処分として提出された文書や電磁的記録は、書記官がファイルに記録する132条の13の規定の対象から外されています(同条3項)。4号の留置きは、当事者だけでなく第三者が提出した文書その他の物件にも及びます。
- 1号当事者本人又は法定代理人に口頭弁論の期日への出頭を命じます
- 2号当事者のため事務を処理し又は補助する者(会社の担当者など)に口頭弁論の期日で陳述させます
- 3号訴訟書類・引用した文書その他の物件で当事者が所持するもの、引用した電磁的記録を提出させます
- 4号提出された文書その他の物件を裁判所に留め置きます
- 5号検証をし、又は鑑定を命じます
- 6号調査を嘱託します
釈明処分は弁論準備手続の期日でもでき、口頭弁論である準備的口頭弁論の期日ではもちろんできます
170条5項は、148条から151条までを弁論準備手続に準用しているので、弁論準備手続の期日でも釈明処分ができます。争点整理の中心となる弁論準備手続でこそ、事情に通じた者から説明を受ける必要が高いからです。準備的口頭弁論は法律上口頭弁論そのものなので、151条がそのまま適用されます。釈明権(149条)との違いは、主体と中身にあります。釈明権は、裁判長(陪席裁判官は裁判長に告げて)が当事者に問いを発し又は立証を促すものです。釈明処分は、裁判所が出頭・陳述・提出・留置き・検証・鑑定・調査の嘱託という具体的な処分を命じるものです。どちらも弁論準備手続に準用されます(170条5項)。

釈明処分は訴訟関係を明瞭にするための処分で証拠調べではなく、その結果は弁論の全趣旨として考慮されます
釈明処分は、当事者の主張の趣旨や争点を明らかにするための訴訟指揮上の処分であり、事実を認定するための証拠調べとは目的が違います。そのため、釈明処分として出頭した本人や事務担当者の陳述は証言や当事者尋問の結果ではなく、釈明処分としてした検証・鑑定・調査の嘱託の結果も、弁論の全趣旨(247条)として考慮されるにとどまると説明されています。ただし、151条1項の検証・鑑定・調査の嘱託には、手続の面で証拠調べに関する規定が準用されます(同条4項)。調査の嘱託は、証拠調べとして186条1項でもでき、釈明処分として151条1項6号でもできます。いずれも当事者の申立てを要しないので、「裁判所は,職権で,必要な調査を官庁・公署その他の団体に嘱託することができる」という肢(R2 午後 問2 オ)は正しいです。当事者本人を証拠方法として調べたいときは、釈明処分の出頭命令ではなく当事者尋問によります。当事者尋問は申立てにより又は職権ででき、宣誓をさせることもできます(207条1項)が、151条1項1号の出頭命令には宣誓の定めがありません。鑑定も、証拠調べとして命じるほか、検証に当たって必要があれば命じることができ(233条)、官庁・公署や相当の設備を有する法人に嘱託することもできます(218条1項)。
民事訴訟法 第151条第1項裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
二 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
三 訴訟書類若しくは訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するもの又は訴訟においてその記録された情報の内容を引用した電磁的記録で当事者が利用する権限を有するものを提出させること。
四 当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
五 検証をし、又は鑑定を命ずること。
六 調査を嘱託すること。
民事訴訟法 第151条第4項第一項に規定する検証、鑑定及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。
試験ではこう問われる
- 釈明処分として当事者本人・法定代理人に口頭弁論期日への出頭を命じられる(151条1項1号)
- 当事者のため事務を処理・補助する者に陳述させられる(2号)。弁論準備手続の期日でもできる(170条5項)
- 訴訟関係を明瞭にするため、検証をし鑑定を命じられ(5号)、調査の嘱託もできる(6号)
- 当事者が利用する権限を有する電磁的記録も提出させられ、提出は記録媒体か電子情報処理組織による(151条1項3号・2項)
- 調査の嘱託は証拠調べとして186条でもでき、いずれも当事者の申立てを要しない(R2 午後 問2 オ ○)
- 釈明処分は証拠調べではなく、その結果は弁論の全趣旨として考慮される。検証・鑑定・調査の嘱託には証拠調べの規定が準用される(151条4項)
- 当事者本人を証拠として調べるなら当事者尋問による。当事者尋問では宣誓をさせられる(207条1項)

