保全命令の申立てを却下する裁判に対する即時抗告ほぜんめいれいのもうしたてをきゃっかするさいばんにたいするそくじこうこく
保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に即時抗告をすることができ、この即時抗告を却下する裁判に対しては更に抗告をすることができません(19条1項・2項)。
却下の裁判に対する即時抗告は、保全命令を出してもらえなかった債権者のための不服申立てです。保全命令を受けた債務者の不服申立てが保全異議と保全取消しであるのに対し、債権者は上級の裁判所に即時抗告をします。

民事保全法 第19条第1項保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に即時抗告をすることができます
19条1項は、保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は告知を受けた日から2週間の不変期間内に即時抗告をすることができるとしています。仮の地位を定める仮処分命令の申立てを却下する裁判についてこのとおりに述べた肢(R1 午後 問6 エ)は正しい記述でした。民事訴訟法の即時抗告の期間は裁判の告知を受けた日から1週間なので(民事訴訟法332条)、民事保全では期間が長く定められています。保全抗告の期間も2週間ですが、起算点は決定の送達を受けた日です(41条1項)。
即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができません
19条2項は、即時抗告を却下する裁判に対しては更に抗告をすることができないとしています。保全の手続を長引かせないためで、保全抗告についての裁判に更に抗告できない点(41条3項)と同じ考え方です。即時抗告についての決定には理由を付します(19条3項・16条本文)。抗告裁判所が即時抗告を認めて保全命令を発したときは、債務者はその保全命令に保全異議を申し立てることになります。
民事保全法 第19条第2項前項の即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができない。
却下の決定は、期日の呼出しがされた場合を除き、債務者に告知しません
保全命令の申立てを却下する決定と、これに対する即時抗告を却下する決定は、債務者に対し口頭弁論又は審尋の期日の呼出しがされた場合を除き、債務者に告知することを要しません(民事保全規則16条1項)。債務者に知られないまま申立てがされた事件では、却下されたことを知らせる必要がなく、知らせると財産の隠匿を招くおそれもあるからです。「仮差押命令の申立てを却下する決定は,債務者に告知しなければならない」という肢(R3 午後 問6 エ)は誤りです。

抗告裁判所が保全命令を発したときは、債務者はその抗告裁判所に保全異議を申し立てます
即時抗告に理由があるときは、抗告裁判所が自ら保全命令を発することがあります。この保全命令に対する債務者の不服申立ては、命令を発した裁判所である抗告裁判所への保全異議です(26条)。事件の記録が原裁判所に存するときは、原裁判所も保全執行の停止の裁判ができます(27条2項)。抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判には、保全抗告ができません(41条1項ただし書)。即時抗告は書面でしなければなりません(民事保全規則1条2号)。
民事訴訟法では、抗告裁判所の決定に対しても、憲法違反や決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反を理由とするときは再抗告ができます(民事訴訟法330条)。19条2項は、保全命令の申立てを却下する裁判に対する即時抗告を却下する裁判について、この再抗告を認めていません。
試験ではこう問われる
- 保全命令の申立てを却下する裁判に対し、債権者は告知を受けた日から2週間の不変期間内に即時抗告ができる(19条1項)
- 仮の地位を定める仮処分の申立てを却下する裁判も同じく2週間の即時抗告で争う(19条1項。R1 午後 問6 エ ○・出題当時)
- 即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告できない(19条2項)
- 仮差押命令の申立てを却下する決定は、期日の呼出しがない限り債務者に告知しなくてよい(民事保全規則16条1項。R3 午後 問6 エ ×)
- 保全命令に対して債務者がする不服申立ては即時抗告ではなく保全異議である(26条。R6 午後 問6 イ ×)
この用語が問われた肢
仮差押命令の申立てを却下する決定は,債務者に告知しなければならない。
保全命令に対しては、その命令につき不服のある債務者は、即時抗告をすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

